散文『祭事、おぼろ渡り』
花巻かおり
☆本作は「第59回はままつ演劇・人形劇フェスティバル」にて寄稿させていただいた作品(散文)を一部修正したものです。
ー まつりの夜。「わたし」は影を追い続ける ー
独特な世界観をご堪能いただければ幸いです。
『祭事、おぼろ渡り』
陽の落ちた参道に、ひときわ賑わう露店があって、飴細工が滑らかにねじ曲げられ、兎に変わるのを見た。
大きな耳には穴がなかった。頼りない紅が二本引かれてゆく。
見とれているうち、影はわたしのそばを離れて、少し先の、灰色の地面を這っている。
小走りに駆け寄って、そっと影に乗るけれど、すぐわたしの先へ行きたがる。わたしはいっそう足を速めて、影に追いすがる。
気がつけば、綿あめの匂いも、水あめの匂いも、もうずっと遠いところで、きっと今ごろ、どこかの子どもらに、わずかな媚を売っている。
わたしにあるのは、彼方の記憶に見つけるような、か細い、匂いの残像だけだ。
影はひんやりしたよく滑る闇の広間で、小さなわたしなどすっかり覆い隠してしまう。ここにいると、不安なのに、安全なのだ。

そういえば、祭り囃子がさっきから、ずっと人を吸い込みながら連れていく。
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