【S6|外伝】立ち位置の話
立ち位置が違えば、
意見も、思考も、見える像も変わる。
「カオルちゃん、それは違うよ」
友人のデザイナーが、飲み会の席でそう言った。
これを書いたばかりのころだった。
葛飾北斎について、
私が口にした一言への、即座の反論。
「彫師が上手かったんじゃない」
「北斎自身が、相当うまいんだから」
「晩年の肉筆を見れば、わかるでしょ」
彼は、広告のデザインを三十年以上やっている。
プロデューサーやディレクターの下で、
ずっと“作る側”に立ってきた、生粋のデザイナーだ。
学生時代からの付き合いで、
言いたいことを言い合える仲でもある。
だから、腹が立ったわけではない。
けれど、
その場では言葉にできない違和感が、
胸の奥に残った。
しばらく、そのままにしていた。
さっき、新しい外伝を書きながら、ふと腑に落ちた。
※後日公開します。
彼は、北斎を
自分と同じ「作るひと」として見ている。
一方で私は、
もう少し引いた位置から、その構造を見ている。
どちらが正しい、という話ではない。
彼のような視点がなければ、
ものは深くならない。
けれど、
すべての人がその場所に立つ必要もない。
誰かが深く潜り、
誰かが少し離れた場所から全体を見る。
その間に立つことで、
言葉がつながることもある。
突き詰めなかったことが、
あとから役割になることもある。
それに、ようやく名前がついた気がした。
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