ショートエッセイ:罪のないウソ
「おれはなんでも食べるんだぁ」
義父の口癖だ。
でも、結構好き嫌いがある。
「おれは食べものを残すのが大きらいだぁ」
でも、結構残す。
愚痴ではない。
不満もない。
ただ、静かに観察しているだけだ。
義父はウソをついているのではない。
本当にそう思っているのだ。
ウソとホントの境界はあいまいだ。
虚偽と真実。
大人は子どもたちに言い続けてきた。
「ウソをついちゃだめだよ。警察に捕まるよ」
でも、人に迷惑をかけないウソは見逃してもらえることを、
大人になる過程で知ることになる。
義父が、料理を残すとき、
残さない自分と、残す自分は競合しない。
矛盾しない。
それは、別々のストーリーで彼の中に宿っているものだからだ。
もっと自分に寛容になっていい。
義父のちいさなウソは、
いつも私の心を穏やかにしてくれる。
おわり
