好きな人がいた。告白しなかったことを彼に、後悔してほしかった。
はじめに
大学時代、私には好きな人がいた。
その人も私のことが好きだった。
「私のこと好きでしょ?」
と聞いたら、
彼はあっさり「うん」と答えた。
答えが聞けて満足した。
そして私は、
彼と付き合わなかった。
第1章 一目惚れ
厚いドアをノックし、扉を開く。中には何人かの男女がいた。私は全員の顔を見て、ハッとなる。キラキラした目に、優しそうな顔。男の子なのに、どこか可愛らしい顔立ちの人がいた。
私は一瞬で彼に惹かれた。
彼に会うために、サークルに通った。先輩たちがいろいろなゲームに誘ってくれたので、彼と話す機会も多かった。一緒に帰る日だってあった。
この時の思い出と言えば「人狼ゲームで狂人をひいたとき」のことだ。私は大学で初めて人狼ゲームをしたので、どんな立ち回りをすればいいのかわからなかった。狂人として何をすべきかわからず、一生黙っていた。
ゲームが終わった後、彼に「疑われるとだまちゃうよね^^」と声をかけられた。私は「あっ、うん」と戸惑いながら話した。人狼ゲームで何をしたらいいかわからなかったとか、そんなことは言えない。それに一目ぼれした彼に声をかけられて緊張していた。
第2章 好きな人とは別の男
大好きな人とは別に、いつも一緒にいる男友達がいた。男友達と男女の友情が成立していればよかったが、そんなことはない。きっかけはふたりでオールしたことだった。
理由は忘れたがふたりでカラオケでオールをした。その日は歌ったりトランプして遊んで夜を明かした。そこからふたりでいる日が増えたのだ。
私も私で、男友達のことをからかい続けていたら 、最終的にはそういう関係になった。「あなたはそういうことしないでしょ」とか言っていたし。
気がつけば、好きな人がいながら別の男と深い関係になっていた。付き合っているわけじゃない。彼氏でもない。
それなのに、まるで恋人のようだった。彼が病めば私が病み、私が病めば彼が病む。あの頃の私たちは、二人だけの世界で生きていた。
第3章 告白してくれない男
好きだった彼は、男友達の絶妙な関係に気が付いていた。しかし、私は「彼氏はいない」「付き合ってない」と言い続けていたので、まだチャンスはあると思っていたのだろう。お互い両想いの確信を持ちながら何もしない日々が続いた。
好きだった彼と出会って1年。彼がにおわせツイートを始めた。
私はすぐに私のことだと気づいた。なぜなら両想いの確信があったから。ただ、におわせツイートは香っていても、実行されることはなかった。両想いだと分かっているのに実らない恋。
早く告白してほしかった。大好きな人と楽しいひと時を過ごしたかった。でもそれを実行するほどの勇気は彼にはなかった。私も「好きなら早く告白しろよ」と思っていた。
今思えばとても横暴だったと思う。だって私が彼に告白すればいいのだ。臆病で勇気のない私も彼と同類だった。
第4章 嫉妬してほしかった
1年も経つと好きな人への愛情も歪んでいた。私は彼を泣かせたかった。
顔をゆがませて、「なんでもっと早く言わなかったんだろう」と後悔してくれたら、きっと私は幸せの絶頂を感じられるだろう。その一瞬だけでも、私のことで頭をいっぱいにしてくれたら、私の顔はほころんでしまうだろう。
俺の好きな女が、別の男に抱かれている。
そんな事実を知ったら、彼はどんな顔をするのだろう。
もちろん綺麗な感情ではない。
でも当時の私は、本気でそう思っていた。
好きだった。
だからこそ、傷つけたかった。
第5章 「私のこと好きでしょ?」
大学2年生の春、私と大好きな彼と友人と、3人で電話する夜があった。その日は彼と友人がお泊りしていた。最初は3人で楽しく話していたがサークルの友人が先に寝て、二人きりとなった。
静かな夜。誰もいない、二人きりの世界。
彼について聞くには最高の舞台だった。
私は彼のことをあれこれ聞いた。そしてにおわせツイートのことも。
私のこと好きでしょ??と確認もした。
彼は静かにうんと答えた。
そのとき私の顔は緩んだ。私が確信していた両想いは事実になった。
そして私は、悪女ムーブを始めた。
もう遅かった。
ずっと求めていたあの二文字は欲しい言葉ではなくなった。彼と付き合う未来は私の中から消えていた。彼への好意は薄れ、もう恋愛とは呼べないものになっていた。
私は「あなたとは付き合わない。でも友達でいようね」
そう答えた。
好きだった。
本当に好きだった。
だからこそ、遅すぎた。
その後、彼とのコミュニケーションはうまくいかなかった。彼の愛情に耐えられず、私はLINEの返信をやめた。私たちの愛情は釣り合わなくなり、話すことさえ不可能な状態となった。
第6章 答え合わせの先で気づいたこと
私は何を求めていたんだろう
なにが欲しかったのだろう。
「好き」という言葉? もちろんそうだ
嫉妬してほしかった? それもある
早く告白してほしかった? それも間違いない
彼の持っている愛情が全部ほしかった 。好きだ。付き合ってくれ。どうして俺と一緒にいてくれないんだ。私が原因で生まれる感情の全部をぶつけられたかった。 愛されていることを全身で感じたかった。でも無理だった。
私から告白する勇気なんてなかったし、やっぱり告白は男の人からして欲しかった。好きだと自ら伝えるという選択肢を、最初から持っていなかった。
おわりに
今でも思う。
大学1年の春、彼が「付き合おう」と言ってくれていたら、人生は違っていたかもしれない。
好きな人から愛されるということを知って、今とは別の幸せを手にしていたかもしれない。
でも私は、あの時の選択を後悔していない。
あの恋があったからこそ、いまだに本当の愛を探し求めている。
好きな人を振って、別の男と共依存になって、人を泣かせて、泣かされて。
決して綺麗な恋ではなかった。
それでも間違いなく、あれは私の大学生活だった。
あの遠回りも含めて、あの経験が今の私をつくっている。
