北方中佐クミタ・グロリア✖️軍部特別顧問カオノルド・セバスチャン【A4シネマ スピンオフ】
A4シネマのその後…エーデルシュタイン軍幹部、反省会
こちらは、桜吹雪さんによる音声ドラマシリーズ「A4シネマ」のスピンオフ台本です。2つのお話をもとにした番外編となります。
第24話「北方の中佐×北方の大佐」(2024年7月7日公開)
第58話「薫風の仲人×北方の大佐」(2026年4月26日公開)
登場人物
クミタ・グロリア(北方の中佐) cv. Cumin
推定身長:173cm前後 / 推定年齢:40代半ば 人望厚き女騎士。
北方の大佐レオを支える姉御肌。健康的な肌と赤い目、ナイスバディ。バツ〇の恋多き女性だが今は独身。面白い男が好きらしい。常に体がうずうずしている。
*一口メモ:年頃の女子を見つけるとすぐにレオに紹介するのがもはや趣味。甘える部下達を踏むのも、元気な男を笑顔で引っぱたくのも趣味。タダで縛ってはやらない。カオノルド・セバスチャン(軍部特別顧問) cv. かおるん
推定身長:175cm前後 / 推定年齢:40代後半〜50代前半 元は最前線に立っていた女騎士。早い段階で一線から退き、後進育成に力を注ぐ軍の重鎮。軍幹部のメンタルケアと私生活への監視(お節介)が趣味。
*一口メモ:強い男の弱音は酒の肴らしい。可愛い女の悲鳴も酒の肴らしい。残念ながらドSの自覚がない。
設定
場所:北方の宿、カオノルドの部屋(夜)
カオノルド・セバスチャンはこの日、北方に出向きレオ・ハスラーの執務室にてレオと会談。その後宿に戻ったところに、クミタ・グロリアが訪ねてくる。
テキスト版
宿の部屋。カオノルド、椅子にどっかりと座り靴を脱ぎながら独り言——
カオノ:「ふぅ…。まあ、今日のところはこんなもんか。しかし、あの男は本当に手強いな」(杯に酒を注ぎながら)
カオノ:「縁談書類を渡してやったが…『不要だ』の一言で終わるとはな。まったく」(くっと飲み干す)
カオノ:「あれほどの器の男が…『愛』だけは受け取れんか。不器用にもほどがある」
トントン、と扉を叩く音(クミタ)
クミタ:「カオノルド、私だ。起きてるか?」
カオノ:「おっ、クミタか。開いてる、入れ」
クミタ:「悪いな。…ずいぶんくつろいでいるじゃないか」
カオノ:「北の酒は辛口で良いね。お前も飲むか?」
クミタ:「いただこう。…おぉ、食べものもあるのか」
カオノ:「北方の宿は、飯もボリュームがあって良い、一人じゃ食いきれなかった。ちょうど良かった。酒の肴だ」
クミタ:「そうだな。…で、どうだった。レオ・ハスラー大佐は」
カオノ:「やはり、手強い。執務室に入り込んでレオの会議が終わるのを待っていたのだがな…。あいつ帰ってきてドアを開けた瞬間に、踵を返して廊下に逃げおった。いやぁ、反応が早い。さすが大佐だ」
クミタ:「ったく。それで?」
カオノ:「縁談書類を渡した。お前と一緒に厳選したやつ」
クミタ:「反応は」
カオノ:「『グロリア中佐と酒でも飲みながら悪ノリで決めたのだろう』だと」
クミタ:「…バレてた?」
カオノ:「バレバレだった」
クミタ:「あいつが勘が良すぎるんだ…」
カオノ:「で、『俺の隣に嫁がいる想像がつかん』と来た。『誰かを置いたとして、そこに待つのは相手の不幸しか見えない』とも」
クミタ:「…また、そのセリフか。何度も聞いたよ。あの男はそこだけは一切ぶれない。お!それは最後の一切れ《氷魚(こおりうお)の塩辛》~!」
カオノ:「ああ?これがあるから北方出張は嫌いじゃない」(ぱくっと食べてしまう)
クミタ:「あ、あ~…(半分くやしそうに)名物だしね。氷の下でしか獲れない魚で、こちらでもなかなか手に入らないのよ」
カオノ:「つくづく美味しいわねえ」
クミタ:「そういえば、あの純粋培養の能天気姫!その後レオとの進展はないのか?」
カオノ:「ん~。最近は聞かないわね。あの、ラヴィ姫官能小説朗読事件が、あまりにも衝撃的だったからねえ。それを上回る話は未だに、ないわ~」
クミタ:「ラヴィちゃんも、北方に遊びに来ちゃえばいいのに…」
カオノ:「あの姫の護衛は…面白いのだが、苦労も尽きないだろうな」
クミタ:「…まったく、あのお姫様は底が知れない」(笑いながら肴を口に放り込む)
カオノ:「レオは結構ラヴィ姫に出くわすよなあ。あいつ、嫌ならとっくに距離を置いているはずだぞ」(ふと、真剣に)
クミタ:「………そうね~」
カオノ:「無自覚なんだろうね、お互いに」
── 少し間。杯を飲み干して ──
クミタ:「そういえば……あんたの旦那は今回ついてこなかったのか?」
カオノ:「来たがっていたがな。…断った」
クミタ:「なぜだ。あの人、北方には一度来てみたいと言っていたではないか」
カオノ:「仕事についてきて、ついでにのろけられてみろ!私の立場がないではないか!」
クミタ:「…また始まるのか、例の…『彼女は本当に美しい、強い!そしてセクシーだ、ああ俺は幸せ者だ…』(笑)」(既に笑いをこらえている)
カオノ:「真似るな」
クミタ:「また聞きたいな」
カオノ:「ついこの間の軍のパーティでは、それだけでは済まなかった。…私に、この私に、プリンを食べさせようとしたのだぞ!」
クミタ:「プリン?」
カオノ:「プリン。」
クミタ:「それって…あの…あーん!ってやつか?」(笑いをこらえながら)
カオノ:「そうだ」(静かに、しかし確かに)
クミタ:「あははははははは!!!」(完全に笑い崩れる)
カオノ:「笑うな!!あの場にいた全員が凍り付いたさ!!しかもそのあとで皆、ひきつった笑いを浮かべた!!」
クミタ:「そりゃあ笑う!!カオノルド特別顧問があーん!!」(涙を拭いながら)
カオノ:「だから連れてこなかったんだ!!北方の軍幹部にそれをやられてみろ!!レオの前でそれをやられてみろ!!二度と顔を見せられん!!」
クミタ:「……いや、でも」(笑いを収めながら)
カオノ:「なんだ」
クミタ:「あーんをされた時、お前はどうした」(にやにやしながら)
カオノ:「あ………」(沈黙)
クミタ:「ん?………」(待つ)
カオノ:「………食べた」(蚊の鳴くような声で)
クミタ:「はははははははは!!!!」(再び爆笑)
カオノ:「うるさい!!誰だって食べるだろう!!その場の流れというものがある!!」(顔が真っ赤)
クミタ:「流れで食べるか、あーんを!!」(笑いが止まらない)
カオノ:「食べるんだよ!!あの男が満面の笑みで差し出してくるんだぞ!断れるか!!」
クミタ:「……幸せそうだな、お前」(笑いながら、でも少し優しく)
カオノ:「………うるさい」
クミタ:「いまだにそうなのか」
カオノ:「実は……幸せだぞ、クミタ。本当に」(観念したように、静かに)
クミタ:「……お前がそれを言うか」(苦笑い)
カオノ:「私が言うから価値があるんだ。……ところでクミタ、お前は今どうなんだ。今年はお前の番のはずだが」(急に鋭い目になって)
クミタ:「番(ばん)、とはなんだ、番、とは」
カオノ:「とぼけるな。誰かいるのか?」
クミタ:「……いない」
カオノ:「ほう」(じっと見る)
クミタ:「……今は、いない」(視線を逸らす)
カオノ:「今は、ね。そうなんだ、なるほど~」(にやにやが止まらない)
クミタ:「やめろ、その顔を」
カオノ:「手を出してはいない、が……誰かにアプローチされているのか」
クミタ:「……なぜわかる」
カオノ:「わかるわかる。お前の顔に書いてある。どんな男だ」(完全に前のめり)
クミタ:「…変な男だ」
カオノ:「変な男?」
クミタ:「毎日来る。用もないのに来て、私に踏まれて帰る」
カオノ:「………踏まれて?」
クミタ:「そうだ。最初は邪魔だから踏んでやったんだ。そしたら翌日また来た」
カオノ:「ほう」
クミタ:「また踏んだ。また来た」
カオノ:「ほうほう」
クミタ:「引っぱたいても来た」
カオノ:「で、その男、強いのか?」(笑いを収めながら)
クミタ:「……かなりのものだ。踏まれても動じない」
カオノ:「で、面白い男か?」
クミタ:「………かなり。踏まれながら平然と世間話をしてくる。『今日は天気が良いですね、中佐』とか」
カオノ:「はははははは!!どんな神経だ!!」
クミタ:「笑い事じゃない。私もどんな顔をすれば良いのかわからなくて…気づいたら世間話に答えていた」
カオノ:「お前が!!踏みながら!!世間話を!!」
クミタ:「うるさい!!気づいたらそうなっていたんだ!!」
カオノ:「まんざらでもないようだな」(笑いを収めて)
クミタ:「それが、この間突然に…」
カオノ:「どうした~?」
クミタ:「……踏まれながら、いつものように世間話をしていたと思ったら……『貴方にプロポーズしたいのだが。何か条件はあるのか?』と」
カオノ:「……踏まれながら言ったのか」
クミタ:「踏まれながら言った。しかも顔色ひとつ変えずに」
カオノ:「…………、それは強い」(真顔で)
クミタ:「強い!!あまりに堂々としていて、私が……」
カオノ:「お前が?」
クミタ:「………思わず踏む足を止めてしまった」(悔しそうに)
カオノ:「はははははははは!!!!」(再び爆笑)
クミタ:「笑うな!!不覚だった!!まさかあの状況であんな言葉が出てくるとは思わなかった!!」
カオノ:「で、お前はなんと答えた」(笑いながら)
クミタ:「………返事は保留にした」
カオノ:「保留か!!」
クミタ:「他にどう答えろというんだ!!あんな状況で!!」
カオノ:「…………クミタ」
クミタ:「なんだ」
カオノ:「お前、もう落とされてるぞ」
クミタ:「………黙れ」
カオノ:「足を止めた時点でもう終わりだ」
クミタ:「………わかってる」
── 少し間。二人、しみじみと杯を傾ける ──
カオノ:「……ところでレオ・ハスラー大佐だがな」
クミタ:「ああ」
カオノ:「種は蒔いた。あとはゆっくりと、な」
クミタ:「……ゆっくりと。……しかしあの男、本当に鈍いな」
カオノ:「鈍い。あれだけの男が、愛のことになると途端に石になる」
クミタ:「石どころか岩だ。北方山脈の絶壁より硬い」
カオノ:「ははは。……今宵も一人で酒を飲んでるのかね~」
クミタ:「全くだ。誰かと二人で飲むという発想がそもそもないんでしょ」
カオノ:「二人で酒を飲む幸せを、あいつはまだ知らない」(しみじみと)
クミタ:「……教えてやりたいものだな」
カオノ:「ああ、寒がりのくせに、北方に配置されてしまったレオになぁ」
クミタ:「そうだ。冬場は執務室に火鉢を三つ並べている」(急にリアルになって)
カオノ:「三つ!!」
クミタ:「それでも寒いと言う」
カオノ:「……誰かに温めてもらえば解決するんだがな」
クミタ:「本人にその発想は死んでもない」
カオノ:「はははは!!まったく!!」
クミタ:「全く!!」
── 二人で笑いつつ、杯を傾ける ──
カオノ:「……良い夜だ、クミタ」
クミタ:「ああ。……良い夜だ」
カオノ:「また飲もう。次はレオも連れてこい」
クミタ:「あいつが来るわけがないだろう!!」
カオノ:「しもべのくせに…」
クミタ:「みょうがの酢漬けで釣れるかもしれん」
カオノ:「…………釣れるかな」
クミタ:「釣れなかったら、お前の旦那を連れてこい。プリンを持参でな」
カオノ:「お前という奴は!!」(笑いながら杯を投げつけるふり)
クミタ:「はははは!!」
── エンディング曲開始。それに重ねて、くだらない雑談をする二人 ──
(終わり)
音声版
stand.fm:https://stand.fm/episodes/69f8152463d1f65806b94539
18:00から
スピンオフ脚本:奥村薫
A4シネマ原作:桜吹雪(にわか両声類)
