たけしH₂O

朝、久しぶりにお弁当を作っていた。
ごはんを詰めて、卵焼きを入れて、
なんとなく今日も「それっぽい形」にはなった。
そういえば、2日前。
ソファの上に、そっと置かれていた一枚の紙があった。
「かあちゃんへ
木曜日はおべんとうが必ようなの作ってください。お願いします。」
2日前の報告。
ホッとした。
前日だったら、きっと焦っていたと思う。
マイペースな息子にしては、
奇跡の余裕をもった報告だった。
そのときは深く気にしていなかった。
でも今朝、その紙をあらためて見て、
私は違和感に気づいた。
とっくり。
おにぎり。
魚っぽいもの。
そして、そのとっくりには——「CO₂」と書かれている。
え、ちょっと待って。
とっくりにCO₂って、どういうこと?
ちなみに、息子の名前はたけしではない。
右上には「たけし」と書かれていて、
その下には「H₂O」。
さらに左下には「1+12O」。
もう意味がわからない。
急に理科の授業、始まってる。
あとから息子に聞いたら、
「あれ牛乳ね」と、さらっと言われた。
とっくり=牛乳らしい。
しかもCO₂と書いてある牛乳。
H₂Oもあるし、1+12Oもあるし、
世界観が独特すぎる。
しかも魚だと思っていたものは、
「たこさんウィンナー」。
そしてよく見ると、
ちゃんとピックまで刺さっている。
細かいところは妙にリアルなのに、
全体の設定が追いつかない。
2日前の自分は、
なぜこの違和感に気づかなかったんだろう。
朝から軽く混乱しながら、
私はその紙を見て、ひとりで笑ってしまった。
たぶん、こういう瞬間があるから
お弁当を作るのも悪くないなと思う。
今日もきっと、
中身よりも“ネタ”が濃いお弁当になった。

