「“愛”なんて知らない県」
愛という字がついているけれど、ここにあるのは排気音とメロンクリームソーダのやさしさ 。
私の地元は東京の人が聞いたって全く分からないが、丁度いい田舎に住んでいると思う 。愛知の知名度なんてTOYOTAと名古屋だけであろう 。生まれてから20数年間愛知には住み続けているが、三大都市圏に愛知が含まれる理由は未だ分からずというところだ 。観光地もおまけにそんなにない 。愛知の人間は十中八九、口を揃えて「愛知なんて何も無いよ」と言うだろう 。
名古屋?少し回れば一度で飽きてしまう 。名古屋港、レゴランド、ジブリパークでも回って日帰りで帰ることをご提案する 。私の地元はもっとも、名古屋行きの電車の途中で通り過ぎるだけのつまらない場所である 。
この前、気分転換に地元の駅近くを散歩していた 。手持ちのイヤホンから「きのこ帝国」を流してエモーショナルな気分に浸るのも束の間、何の商品の宣伝か分からないが、「ゆっくりしていってな〜」という機械音に近いナレーションが大音量で流れた 。あっという間にきのこ帝国の音楽はかき消され、私の気分もざわざわと落ち着かなくなった 。
家の前も常に暴走族のプゥンプゥンというダサいエンジン音でうるさいし、道の前はガソリン臭い 。「金木犀の匂い」ならぬ、バイクの排気口のガソリン臭い匂いで、私どこかに行けそう 。
愛知は車の運転マナーも悪い 。他県からくる客人には「生き急ぐなよ」とだけ伝えている 。横断歩道を渡っていても、勿論歩行者優先のルール違反は無視である 。これがアグレッシブ愛知 。車は猛スピードで右折、わたしは気絶 。愛知のみ自動車優先の法が適用されているかもしれない 。まるで修羅の街、愛知 。
諸君にはまだ呆れずに聞いて欲しいが、良い所も少しはある 。 人気が無くなり、車も走らなくなる瞬間、風がさぁっと吹き、緑が揺れる 。静寂を感じる 。綿あめみたいな空の雲を眺めながら、目を瞑る 。
東京は人が多すぎて落ち着かない 。愛知は忙しないが、ふとした時、おセンチに浸れる余裕もある 。東京は何でもある 。選択肢も情報も、人も多すぎて、落ち着かない 。でも愛知には何もないけれど、だからこそ何かを見つけたときに嬉しくなる 。空が広く、雲がよく見える 。道がだだっ広くて、車だけがやたら走っている 。そんな愛知の空気はガソリンのにおい 。東京の情報の渦に疲れた時、こちらのガソリン臭の方がまだマシに感じることもある 。
ついでにレトロでお安い喫茶店もある 。安い値段で食べられるモーニング 。シュワシュワと弾ける炭酸、太陽光にあたって煌めくメロンクリームソーダが600円、安い!ドリンク代で分厚いトースト付き 。これは都会では難しいだろうと内心ドヤ顔だ 。
愛知は何もない 。景色も、空気も、人も 。だからこそ居心地がいい 。これ以上、人が来ないで欲しいというのが本音である 。
