本当にあった奇妙な話|転職の⾯接に現れたモノ
「ある」はずのないモノが、そこに「ある」。
「アポーツ」(物品移動現象)と呼ばれる怪奇現象があります。
これは霊がエクトプラズムを⽤いて物体を移動させる現象です。
今回の主⼈公は20代後半の事務職、新垣(あらがき)さん。
彼⼥は転職の⾯接という場で、この現象に遭遇しました。
その場に居合わせた⾯接官も同じ体験をしています。
これは、私が彼女から直接聞いた話です。
新垣さんは転職を考えていました。
商業誌の会社で5年ほど働いていたけれど、異動先の先輩との折り合いが悪く、新天地を求めることにしたのです。
転職では、⾃分をいかにアピールするかがポイントになります。
そこで彼⼥は、⽇頃から⾃分の仕事内容を職務経歴書に添えるためにメモを書きとめることにしました。例えば、Excelでマクロを使えるようになったら、「Excelのマクロを習得」とメモに書くのです。
メモのページが増えるごとに、彼⼥の⾃信も増していきました。
やがて資料が10ページにも及ぶ⼤作となる頃、彼⼥は希望する会社の⼈事部⾨に応募しました。
書類審査は問題なく通って、いよいよ⾯接の⽇がやってきました。
⾯接を受けるのは不安だったけれど、これまでに作った何ページもの資料は彼⼥の⾃信の源となっていたし、ネットや書籍で面接の心得も学んでいます。
採用面接に行くと、既に何⼈かの応募者が並んでおり、緊張した空気が流れています。彼⼥は⾃分の番が回ってくると、深呼吸をひとつして⾯接官が待つ部屋のドアを開けました。
⾯接官が待つ部屋は、壁も床も淡い⾊で統⼀された綺麗な応接室でした。
中央の⽩いテーブルを挟んで、⼆⼈の⾯接官が座っています。
配属を希望している部署の部⻑と⼈事担当者です。
彼⼥は勧められるままに、⼿前のソファに座りました。
緊張しながら、ひとつひとつ⾯接官の質問に答えていきます。
部長が、職務経歴書に添付した大作の資料を感⼼しながらめくっています。
もうひとりの⾯接官も、その資料をのぞき込んでいます。
資料は、応接の低いテーブルの上に置かれていたから、
どのページを⾒ているのかは彼⼥からもよく⾒えました。
次は、彼⼥がもっともアピールしたい資格のことを書いたページです。
⾯接官がページをめくると、何かが挟まっていました。
⽷くず︖ でも、⿊くて縮れている…
脇⽑︖ そんなことがあるはずがない。
だって、完璧な脇⽑処理を心掛けている。
新垣さんは確信しました…
これ陰⽑だ。
でも、どうして、こんなところに…
⼆⼈の⾯接官は、陰⽑が乗ったページを黙って⾒つめています。
⼀瞬、時間が⽌まったように思えました。
⼆⼈とも気づいているくせに、そのことには何も触れません。
さっきまであんなに⾒て欲しかった資格のページ。
でも今は、⾯接官が⼀刻も早くページをめくってくれることを願うばかりでした。まさかこんなことが…。
彼⼥は恥ずかしさのあまり⼼の中で叫んでいました。
「お願いです︕ 早くページをめくってください︕」
⼆⼈の⾯接官は、⾔葉を発することもなくページをめくりました。
よかった…。
しかし陰⽑は、ページをめくった⾵にあおられて、テーブルの上にポトリと落ちました。彼⼥と⼆⼈の⾯接官の間にある真っ⽩なテーブルの上に。
⾯接に際しては、様々な想定問答を考えていました。
でも面接官と、⾃分の陰⽑が乗ったテーブルを挟んで⾯接を受けることまでは想定していませんでした。これまで勉強した⾯接のFAQにも、そんな想定は出ていません。
まるで、陰⽑に⾯接を受けているような気がしました。
「このままじゃ⾯接なんて続けられない︕」
頭が真っ⽩になった彼⼥は、さっと⾝を乗り出すとテーブルの上の陰⽑を⼿で払い落としました。
勢いよく払われた陰⽑は、今度は⼀⼈の⾯接官の⾜下へと落ちていきました。
⾯接は続いたけれど、その後のことを彼⼥は殆ど覚えていません。
ただ、⼀⼈の⾯接官が、ときどき⾃分の⾜下を気にするかのようにチラチラと視線を落とすことだけが気になっていました。
⾯接は、いつの間にか終わっていました。
⾯接が終わってから⼀週間後、彼⼥の元に「合格」の連絡がありました。
でも彼⼥は迷っています。⾃分の陰⽑を⾒られた部⻑の下で働くのはどうかと…。
新垣さんが⾯接のテーブルで⾒たもの。
それは、そこには決して「ある」はずのないモノでした。
しかし、それは間違いなく存在していたのです。
今回の話は、「アポーツ」(物品移動現象)と呼ばれる怪奇現象に、3人の人物が同時に遭遇したという貴重な事例です。
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