ちょこっと作品講座その①(Wifi推奨)
ボンジュー!
ここ最近フランスでは猛暑が続き、エアコンのない室内は下手すると気付かぬうちに熱中症になってしまう…!特にびっくりなのが、日の長いサマータイム、本格的に暑くなるのが17~20時くらいということ!身体がおかしくなっちゃうよ〜。
こちらでは、風が涼しくなる夜間にできるだけ換気をして冷たい空気を取り入れておいて、日が出てきたら窓を閉めきって遮光・遮熱する、というのがライフハックのひとつだそう。これを意識するだけでだいぶ部屋の暑さが和らいだけれど、しばらく経口補水液を錬成しつづける日々は続きそう、、、。
(7/3あたりからとっても涼しくなりました)
そんなこんなで、専門科目の口頭試験も無事終わり、いったんはすべてのカリキュラムが終了!!おつかれさまー、わたし!
授業を受けながらつねづね構想していたのだけれど、講義や実習で出会った作品たちのほんの一部、個人的にお気に入りのものたちを紹介したいと思います。自分の復習も兼ねて、すこし詳しめに!
17世紀
絵画
16世紀後半にはやっていたものといえば、マニエリスム。描画技術の進歩(遠近法の発展とか)や人体研究がいきすぎて、より理想的な模範的な美を!と求めた結果、なんだか逆にキモチワルイ感じになっちゃったやつです。

マニエリスムでよく例に挙がる、ミケランジェロの”最後の審判”。筋肉ボコボコだし、横幅デカイし、身体をねじれさせないと気が済まない。
17世紀に入ると、カラヴァッジョ(Caravage)やカラッチ(Carrache)といったローマの画家が、「ちょっといったん、ちゃんとモデルを観察しようよ」とより自然な表現に立ち返っていきます。

こう見るとだいぶ自然な感じになったね。
ちなみにカラヴァッジョは、聖書を題材に描くときでも人物を当世ふう(17世紀の服とか風俗とか)にしがち。彼の特徴である「Clair-obscur」(キアロスクーロ、明暗対比)もばっちり。

Juan Sànchez COTÁN, "マルメロの実、キャベツ、メロン、胡瓜", 1602-03, Musée d'art de San Diego
さて本題。わたしがお気に入りのジャンル、静物画。
先述の文脈で、「自然界に注目する」のもじわじわと流行ってきて、マイナーなジャンルながら色々な表現が試されるようになったきた。
静物画と聞くと「テーブル・お皿・コップ・食べ物」みたいな食卓セットを思い浮かべていたわたし、この絵にギュンと惹かれる。
放物線とか、それを作り出すために吊られたものたち、全部違う種類なのかと思いきや被るメロン、不思議なスペースからこちら側にはみ出す胡瓜、それによってむしろ強調される奥行き。
フランス語だと静物画は「nature morte」= 生きていないもの、と言うのだけれど、なんと動きのあることか。
でも、そもそも静物画ってとても面白いジャンルで、それぞれのアイテムに意味があったり、なにかを暗示していたり、知れば知るほどたのしい。
(あとね、地味に「あっ当時もメロンってやっぱり実と皮の間に切り込み入れて食べてたんだ」って分かる感じ、すき。笑)

次はこちら、17世紀オランダの画家:ピーテル・デ・ホーホによる風俗画。
風俗画、というジャンルは17世紀に発展したもので、それまで絵画の注文をするのは誰か、といえば、やっぱり王様とか教会とか大きな機関であったところ、裕福な市民=ブルジョワジーが自宅を飾るために好んで注文したのがこういった絵たち。
つまり、美術館に並んでみると「ちっちゃ!」と拍子抜けする絵が多かったりする。
このジャンルで日本人に馴染みがある画家といえば、フェルメール。
実はホーホ氏、フェルメールと同じデルフトで活躍していたし彼に大きな影響を与えている。フェルメールのより細部にこだわった表現も好きなのだけど、ホーホ氏の絵にはどれにもなんともいえないあたたかみがあってよき。
この絵はフランス語で「Mère peignant les cheveux de sa fille」(娘の髪の毛をとかす母)というタイトルも付いているけれど、日本語だと「母の膝にあたまを預ける子供」(Wikipedia参照)になるらしい。ちなみにオランダ語だと「子供のしらみを駆除する女性」になる。
訳し方によって微妙に「母親のつとめ」の雰囲気が変わる気がする(笑)

右: Johannes Vermeer, 天秤を持つ女, 1662頃, Washington National Gallery of Art
フェルメールのほうが画角が近め、色合いはっきりめ。ホーホ氏は登場人物の多い絵もあって、「理想の母親像」とか「不埒なことはよくない」といった道徳的教え、みたいな暗示を込めがち。
室内が奥行きをもって描かれることも多いから、お部屋の装飾を楽しんだり、当時のデルフトの(よい)暮らしってなんだか穏やかそうでいいなぁ、、とほっこりしたりできる。

いっぽう農民たちの暮らしはこんな感じ。
酔っ払ってテーブルにだらんと体重をのせる感じ、今も昔も変わらないね。電灯なんてないからこんなに飲みふける頃は室内もうす暗くって、そこらに置いてある長椅子もほら、蹴っ飛ばしてらぁ。
こちらの画家はフランドル地方ハールレム出身で、ルーヴルには割とこんな雰囲気の小さな絵が展示されている。なんだかちょっと日本の浮世絵の北斎や広重が描く人物に通ずるような、なんでもない日常のあくせく働く男たちふうがあって、これはこれで和むから好き。
教会建築
さて、ガラリと雰囲気が変わって、17世紀といえばバロック、イエズス会(ザビエル!)、教会建築!
16世紀に宗教改革が起きて、教会側もなんとか体制を整えて信者が離れないようにしなくちゃと、より感情に訴えるように・パッと見てすぐ感動できるように発展していったのが、バロック美術。
2年前ローマに旅行したときひたすら教会めぐりをしたのだけれど、確かになんにも知識がなくたって心をぐわしっと掴まれるほどの迫力と造形だったなぁ。

見た目からしてエキセントリックなこちらの教会、こうして凹凸を駆使して教会の顔であるファサードに印象を与える、という初期バロックのとても凝った例!
上の方にくっついている"楕円"=いびつな(Baroque)円、はバロック美術の特徴だったりするのだけど、これは外側だけじゃなくて教会の形そのものにも関係している。
この教会は上からみると「ラテン十字」、すなわちキリストの磔刑で思い浮かべる、横よりも縦が長めの十字の形をしていて、これは宗教改革に対抗して新たに建築されたカトリック教会の特徴のひとつ。
したがって中の造りも必然的に楕円に寄っていくのだけれど、これがまたすごいんだぁ。

メインのドームの内側はこんなふうになっていて↑、十字、六角形、八角形+円のモチーフがこれでもかと敷き詰められている。集合体恐怖症のわたしにとってはギリギリのライン(笑)
ひとつひとつの装飾も、じっくり見れば見るほどいろーんなものを発見できて、とっても楽しいんだよ〜。ローマに行く機会のあるかた、ぜひ候補に入れてみてくださいな!

続いては「ジェズ教会」=イエズス会の本拠地だった教会。
名前を冠しているのもあって、イエズス会関連の教会はこのボディビルダーポーズ、、、?のようなくるくる模様を模倣していることがあるよ。
ここで紹介したいのはなんといっても、天井のフレスコ画。

これ、どこまでが絵でどれが彫刻か、わかりますか…?
だまし絵(trompe-l'œil)の技法をつかって、信者たちを実在の教会から天上の世界へといざなってゆく。画像では見えづらいのだけど、光の中心には「IHS」(=救世主イエス)というイエズス会のシンボルが描いてある。
この作品に出会ってからtrompe-l'œilにすっかり魅了されて、いたるところで天井を凝視するようになってしまった。。。ちなみに技法そのものは、教会の天井画だけでなく壁画や絵画、いろんなところにあるよ。

同様の天井画でもうひとつ紹介したいのが、聖イグナティウス教会!
先ほどのものよりもさらに精巧に、建築の続きまで描かれて、天上界への入り口を本当に目の当たりにしているかのような気持ちにさせられる。
中心には十字架を担いだイエスがいて、それを取り囲む4本の柱には「EVROPA」「AMERICA」「ASIA」「AFRICA」の文字が。そう、イエズス会といえば航海技術を駆使して世界中で布教した功績があって、4大陸を統べるイエス、というのを表現しているんだね。
実は隣のまるいドームも trompe-l'œil なんだけれど、イメージを創り出し・喚起させる力とその意気込みに圧倒させられるね、、、!
さてさて、紹介したい作品はまだまだあるのだけど、画像たくさんで重くなっちゃうので今日はこのへんで。
またすぐ第2弾を描きまーす!(決意)

