17歳、高校二年の夏。
猫を家族に迎えることになった。初めての猫。東京で獣医をしている母の友人の家に、子猫を迎えに行く。生後45日。ミルクではなく、キャットフードをふやかしてやれば食べることができるが、青く澄んだ瞳、ふわふわした毛、まだ飛んだり跳ねたり出来るほど発達していない体、赤ちゃんである。
帰りの車で、キャリーバックは広すぎて落ち着かないだろうから、段ボール箱に清潔なタオルを敷いて子猫を入れた。段ボール箱はもちろん、蓋を閉めない。私の膝の上で、子猫はダンボール箱の中を探検する。じきに段ボール箱の中を探検してしまうと、今度は箱の壁をよじ登ろうとする。子猫が段ボール箱から出てしまうと、車の中で怪我をしてもいけない。箱を少し傾ける。子猫がスーッと不思議そうに壁から離れて箱の中を滑っていく。
子猫はまた壁を登ろうとする。私が傾ける。子猫が箱の中を滑っていく。
段ボール箱が面白かったのかもしれない。親猫や飼い主である母の友人の獣医と離れて不安だったのかもしれない。何か変化が起きているから抗おうとしたのかもしれない。子猫からすれば、私は「運命」の側にいることを感じた。この子猫を家族として幸せにしようと、17歳なりの決意が浮かんだ。
人と同じで、幼い頃のことは覚えていないのかもしれない。大人になった、この子猫は、「この家は僕の家だから、いても良いけど、必ず返してね」と言いたそうな顔をする猫に育った。心身ともに強くなった。
もう、段ボール箱を傾ける必要はない。
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