社会の縮図としての『さよなら炒飯!』の、味わい

炒飯は自宅で作るのも美味しいですが、中華屋さんで餃子と炒飯が美味しいと、そのお店の他のお料理も美味しいことがあるから、自分とお店の味という価値観を確認するのに、便利です。

重たい中華鍋で業務用の大火力で、プロがテキパキ作られるから、美味しいですよね。余談ですが、親戚のマンションの近くに私好みの炒飯がある、中華屋さんがありました。

ミステリは炒飯と似ています。
我孫子武丸とチュンソフトの『かまいたちの夜』のようにゲームのジャンルにもあります。メディアを越境する力があります。

北村薫の『円紫さんと私シリーズ』のように、日常の謎というジャンルも花開きました。具とお米を炒めるお料理も、奥が深いですよね。炭水化物を油で炒めるので、罪深くもあります。

そのお店の「謎」と、自分が求めるミステリが、合うかどうかの目安。そして、小説という物語の乗り物の、乗り心地も含めて。

  • 高校時代の友人関係は、28歳の現在でより複雑になります

  • 主人公たちの成長と変化、過去のトラウマや挫折からの回復も鍵です

  • 日常生活の描写から始まり、徐々に株取引や企業の裏側など、より複雑な話題へと展開します

三つ目があることで——

つまり、村上春樹が『「システム」と僕』として探求したことを、踏まえて執筆されています。

  • 高校時代の経験(ミクロ)が、10年後の社会での立ち位置(マクロ)に影響を与える

  • 個人の小さな決断(ミクロ)が、予期せぬ形で大きな社会的影響(マクロ)を及ぼす

  • 大きな経済の流れ(マクロ)が、主人公たちの日常生活や人間関係(ミクロ)を変える

ね?

だから、この物語は単なる個人の成長譚を超えて、現代社会の縮図としての側面を持ちます。複雑な社会を、理解できるアナロジーとして物語化なさっています。僕らは主人公達の個人的な物語に共感して、ハラハラしながら炒飯食べます。同時に、大人になることや社会の複雑さを垣間見るヒントもそっと置いてあります。だから、望むなら、重層的な読書体験が得られます。

年齢を重ねることだけで大人になれるでしょうか? 複雑な社会の中で責任を負うこと、価値観を育てて変化すること、そうして、選択と行動と責任を理解して、「システム」との距離感を覚えます。


『さよなら炒飯!』は、アイデアを持っても生み出すのは困難でしょう。ミクロもマクロもリアリティとバランスを意識する必要があります。そして、重たい鉄鍋と業務用の火力で、著者さんの腕で炒め上げるのだから。

美味しさには理由があるし、理由を知っても、なかなか真似できません。

本作の謎は真相だけじゃない、多層的な仕組みだから、初読の方も既読の方も、楽しまれて下さい! そして、「おかわり下さい」と祈りませんか?


#創作大賞感想

いいなと思ったら応援しよう!

三澤直己 | カラストラガラ / Trgr | フォロバ100% ここまでお読み下さり感謝。各種SNSでのシェアも励みになります。非営利の取り組みが多いため、チップのご検討、助かります。