賞もらってもなんもならんかった
「すごいですね、たくさん賞を取られてて」
初対面の方との打ち合わせの際に言われることがある。
そのたびに私は、「へへ…」とか、「ありがたいことで…」とかごにょごにょ言って、何とかやり過ごす。
「すごいですね、たくさん賞を取られてて」
と言われるたびにその裏で、
「こんなに賞を取ってるのに売れてないんだね」と言われているような気がしてしまう。
実際、賞をもらっても何もならなかった。
それは今、私が食えてなかったり、バイトしないとだったり、お金がないって言う状況が全部示してる。
賞をもらえば何とかなると思った。
賞をもらえば売れっ子になれるんだと思ってた。
でもダメだった。
賞をもらっても、お仕事に繋がるにはコミュニケーション能力とか瞬発力とか情報量の引き出しの多さとか、本当にいろんないろんな力が必要で、私はそのいろんなものが足りてなかった。
欠点ばっかりだった。
くによし組を始めて10年、私は売れっ子になれなかった。
この先も変わらないんだろうか。
真っ暗で、すごく怖い。
続けることと同じくらい、辞める勇気も大事と言うけれど、その辞め時は、どうやったらわかるのだろう。
楽しくて辞められないまま演劇を続けて、ずっとお金は苦しくて。
周りからもどんどん人が減っていく。
昔は人がいたのかと言うと、そういうことでもないけれど。
賞というと、ときどき思い出すことがある。
まだ演劇を始めたての頃、私のことを好きだと言ってくれる人がいた。
そんな稀有な人間は滅多にいないので、物珍しさでそばにいたときがあった。
その人は、「結婚しよう」とよく言う人だった。
私が「演劇ってお金になんないなぁ」と言えば、
「じゃあ結婚しよう。俺稼ぐから」
と言ったり、
「バイトしないで演劇やりたい」
と言えば
「じゃあ結婚しよう。クニは演劇ずっとやってていいから」
と、励ましてんだかプロポーズなんだか、よくわからないことを言った。
私の演劇も何本か見に来てくれた。
でも感想をくれるわけじゃなくて、感想の代わりに送られてくるのは、「次いつ会えそう?」というものだった。
だから途中で、この人は私が作る演劇じゃなくて、私が演劇で苦しんでいるのが好きなんだろうなぁと気づいた。
段々と演劇が忙しくなってきて、演劇が1番楽しくて、その人からの連絡に返事できなかったり、電話を無視したり、その人との時間より演劇を優先するようになっていた。
久しぶりに電話したとき、
「クニって俺のこと好きじゃないでしょ」と言われた。
そんなことないよって言えなくて、「なんでー」と答えた。
「なんでー。え、なんでなんでー」
なんも言葉が見つからなかった。
その人のことよりも演劇の方が好きだった。
その人は最後に、
「演劇大変?」
と聞いた。
私は「楽しいよ」と答えた。
「・・へえ。よかったね」
私が大変と言うのを待ってたんだろうなと思った。
だから大変ではあったけど、楽しいよと答えた。
この人に大変って言いたくなかった。
ある時私は賞をもらった。
何日か後に、その人から電話が来た。
喜んでくれると思った。
またいつものように、
「演劇大変?」と聞かれ、「賞もらったんだよ」と答えた。
喜んでくれると思った。
すごいじゃん、て褒めてくれると思った。
「いいな。俺も趣味見つけようかな」
やっぱりあの人は、大変そうな私のことが好きだった。
その後は、連絡を取ることが面倒になって、だんだんと連絡を無視するようになって、そのまま数年経ったある日、急に連絡が来た。
電話口で、あの人はあの頃と同じ口調で
「演劇大変?」
と聞いてきた。
その頃には、私は映像の仕事もさせてもらってたので、「楽しいよ。最近は映像の脚本も書いてるよ。調べたら出てくるよ」と伝えると、少しの沈黙の後、
「よかったね」
と言われた。
その日以降、その人からの連絡は来てない。
別にその人のことがとても好きだったわけではないけれど、
私のことを好きだと言ってくれた気持ちとかフワフワした時間とか、
俺が稼ぐから好きなことやっていいよって言ってくれたときとか、
うれしかったから。
ちゃんと嬉しかったから、私のことを応援してるわけじゃないんだってわかったときに、ちゃんと悲しかった。
好きなことをやろうとしていくと、だんだん周りから人が減っていく。
私はどんどん何もできなくなっている気がする。
賞を取られてすごいですねと言われても、「すごいですね」に見合うだけの知名度も実力もなくて、私は一体どこに立っているんだろう、とわからなくなる。
どこで間違えた。
どこから違ったんだろうか。
どこで何をしたら正解だったんだろうか。
賞に見合うだけの大活躍をしてる人も、賞なんてなくても大活躍してる人もたくさんいる中で、私は燻りすぎてもうすぐ灰になってしまいそうだ。
うまく生きたいな。
うまくなりたい。
全部がうまくなって、苦しくない日が来てほしい。
大変じゃない日を送りたい。
じゃないとあの人が喜んじゃうから。
あの人が悔しがるほど楽しくて大変じゃなくて幸せな人生にしたい。
でもどうしたって、私はもがきながらでしか、演劇ができないのだろうけれど。
あの人は今、私の代わりの大変そうな人を見つけて幸せに暮らしているんだろうか。
別に幸せに暮らしてりゃいいと思う。
でも、大変に暮らしてて欲しいとも思う。
楽しい楽しい演劇をやります!!!
がんばりますので元気があったら観に来てください。元気がなかったら休んで自分を甘やかしてください。
ここまで読んでくださりありがとうです。ラブです。
演劇は6/18-21 スタジオHIKARIでやります。


ご予約
くによし組
「塔の上の」
作・演出 國吉咲貴
◼️あらすじ
高い塔の上に、長い間ひとりで暮らす住人のことを、街の人は誰も知らない。
性別もわからない住人の窓から垂れ下がった白髪はとんでもなく長く、もうすぐ地面に着きそう。
村人たちは、塔の住人に「髪を切った方がいい」と伝えるかどうか相談するが、あの人には「よくない噂」がたくさんあるらしい・・。
◼️出演
荒波タテオ(popchicfactory)、加藤睦望(やみ・あがりシアター)、Q本かよ、小嶋直子、佐藤有里子、藤家矢麻刀、山本琴美(演劇集団円)
◼️日時
6/18(木)14:30/19:30
19(金)14:30/19:30
20(土)14:30/19:30
21(日)14:30
開場は開演30分前
上演時間は約80分
◼️チケット
一般3500円
(当日券+500円)
応援チケット4000円~(上限ありません)
◼️会場
神奈川県立青少年センター スタジオ HIKARI
(横浜市西区紅葉ケ丘9番地の1)
JR根岸線「桜木町駅」北改札西口から徒歩約8分
横浜市営地下鉄ブルーライン「桜木町駅」から徒歩約10分
京浜急行「日ノ出町駅」から徒歩約13分
みなとみらい線「みなとみらい駅」から徒歩約20分
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