次世代文学【毎日文学】「モテたことある話」
代々美形の家系だったため、当然のように玉のような赤子として生まれた。一方で、美しいということは多少の内的欠点があっても遺伝子を遺せる可能性が上がるということでもある。血族全員奇人である。少なくとも普通の家庭ではなかった。
わたしはセルフネグレクトを挟んで一時期醜くなったが、今は予定調和のように美的に成功している。
「誑かす」という言葉がある。
思春期ごろのわたしはセルフネグレクトをしたが、もしそうでなく、それなりの造形で分別のない清潔な子供だったなら。
わたしはとっくにこの世にいないかもしれない。
そしてそれも踏まえて、血族全員奇人なのかもしれない。
わたしは誰も誑かさないよう、生得的な世間ズレを意図的に膨らませ、「美人だけど頭がおかしい」キャラとして振る舞った。
それでも「会話をしたことがない男」から連絡先を渡されたり、スカート内を盗撮されたり、夜に突然背後から抱きつかれたりすることは日常茶飯事だった。幸い、わたしは非常時にアドレナリンが滾りクソほどデカい声が出る体質だったためクソな思いをしただけで済んだ。キツい顔立ちでモードな服が似合ったので、強い女を意識した服ばかりを着て、ただでさえ上がった眦をさらに鋭角にして歩いた。
しかし二十歳を過ぎた途端、被害は突然激減した。体型も顔の配置も変わっていないが、一年、また一年と歳を取る毎に脅かされることがなくなった。
今ここに、ただ世間ズレを増幅させただけの女がいる。もうアバズレにもなれないその女は、言葉で人を狂わせ、人を「誑かす」奇人になり、作品を遺そうと画策している。
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