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基本無料|『草むしぬ』との出会い/加瀬伊助|エッセイ|2025年6月(1,700字)

割引あり

※おまけ以外は無料で読めます。

令和7年の1月26日、はじめはそんなに乗り気ではなかったが、ガダルカナル島とインパール作戦に参加した父の話を聞かせてくれるというので、その方のお宅にお邪魔することになった。もう70も後半のその一人暮らしのお爺さんのお宅は物寂しく、玄関を上がってすぐの右の暖房のきいた仏間に通してくれたので、仏前にお参りしてから低い椅子に腰かけてその後3時間ほど話した。
最近知り合った仲なので、お互いの自己紹介も兼ねて雑多な話も多かったが、お父様の戦中の話はやはり大変面白かった。地獄の戦場ではあったが、ただただ悲惨な毎日を送ったわけではない、戦地の中でも笑いあり、バカ騒ぎ有り、終戦後には演芸有りと、そこには将兵たちの実生活があったことを大変興味深く聞いた。ただし、『息子の私にあまり多くは語らなかった』と、少し寂しげにも、亡き父の辿った戦史の軌跡をそのままに伝えていただいた。
家を出るときに沢山の資料をお貸し頂いた中に、一際分厚いこの『草むしぬ』があった。まさに運命の出会いである。寒い自室に戻り、500ページもあるこの本を"よいしょ"と開き、読み進めた。「これは、、」と思うところがいくつもあり、溢れる涙が本にこぼれないように気を付けつつも、これをただ読むだけにはできないなと強く思い立って出来たのがこの「記憶語り」である。この貴重なる資料をなんとしてでも世に伝えなければと思い、様々構想し、えっほえっほと動画を作り続けた。これは本当にこれまでの人生の中の最大の快挙であると自負しているところである。
今日は6月27日。丸々5か月の時間を掛けてじっくり調べてこの記憶語りを制作したことになる。これにより、1940年前後の歴史の流れや、その後続く戦後の日本の史実を再認識、再構築することができたことは実に充実した学びであった。そして、あまりにも空しいと忌避していた大東亜戦争の実態の、そのほんの一握りの情報ではあろうが、その中でも最も重要な核の部分について深く考察することができたと思うのである。その核とは、いわば「命の燃やし方」である。我々は命をなんとするかを考えない人生を送らされ続けていると思う。それでは何のための人生であるか。我々のために闘って命を落とした戦死者たちは、このような浅はかな者たちのために命を使ったわけではないぞ。そう思って私はこの5か月の生命を必至に燃やし続けたのであった。そのための運命の出会いであった。
その答えはここにあり、そして多くの人々の胸の中にあることを信じたい。

加瀬伊助

おまけ

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