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【お題企画】激重感情仄暗不穏ブロマンス小説書こうぜ!

えー、このたびは私の「激重感情仄暗不穏ブロマンス小説流行らないかなぁ!」という戯言のために、皆さん力作を執筆してくださり誠にありがとうございます……!
まだ皆さんの作品読んでないですけど、楽しみにしております✨

企画の詳細はこちらをご覧ください。

仄暗、良いですよね……!

仄暗さの中にある微かな煌めきやら希望やらを求めても良し、薄闇から更なる漆黒の闇に落とされても良し、曖昧だからこそどっちに転ぶのかわからない、読者の想像を掻き立ててくれるのが仄暗作品の素晴らしさです。
多分。

いや、救いようがなくてめっちゃ暗い話だとズーンってなっちゃうから、私には仄暗い程度がちょうどいいってだけです!

というわけで私も「激重感情仄暗不穏ブロマンス〜BLでも可」小説を書きました!

・文字数は1万文字まで
・お題は楓莉さん考案の「視線」
・なみさんが考えてボツにしたという「小指」と「髪の毛」も個人的に入れたくて文中に忍ばせました

大前提の説明

登場人物は今までnoteでBL企画で投稿した小説とは何のつながりもなく、ストーリーも関係ないのですが、一部エブリスタに掲載している作品のキャラを使い回しております。

特にこれ🔽

時代もキャラクターの年齢も違うんですけどね!
「同じ役者さんが演じてるんだなぁ」くらいに考えて頂ければ😊

さて、意気揚々と書いた激重感情仄暗不穏小説。ブロマンスではなくほぼBLになりました。
ブロマンスって言った本人がBLを書くという。
でも、まだくっついてないからいいよね。永遠にくっつかないかもしれないけど。

あと、自分の趣味に走りまくっちゃいました。
同じ性癖の持ち主の読者様に刺さることを信じて……!

本編は7300文字程度ですが、いつもの5000文字より多いのでボリュームあるかも😊
若干のグロ要素があるので苦手な方はご注意ください。
(本当に若干)

前置きが長くなりましたがどうぞ!

🔽

🔽


バレンタインと言えば、恋人や意中の相手がいなくても色めき立つ生徒は多い。
音羽詠おとは えいもその一人だった。
今日は朝からソワソワしている。

ただし、悲しいことに本日手にしたチョコの数はゼロだ。
義理でも良いから欲しい。
小学生や中学生の頃はそれなりの数がもらえた気がしたのに、高校生になってからはさっぱりだ。一年の時はもらえなかったので二年になった今年こそは。

なんて願いも空しく、あっという間に放課後になってしまった。
クラスメイトたちは部活動に行ったり帰ったりと、さっさと教室を出て行った。今や教室にいるのは詠一人。
淡い期待を込めて机の奥とロッカーをもう一度確認してみるが、やはり何も入っていない。期待は一瞬で崩れた。
このまま教室にいても何のイベントも起きないということを察した詠は、無慈悲な現実から逃亡するかのように部室に足を向けるのであった。

詠は文芸部に所属している。
大して本を読まない詠が入部している理由と言えば、美人のクラスメイトとお近づきになりたかったからだ。
こんな不埒な理由で部活動に勤しんでいるからバレンタインに何ももらえないのかもしれない。

そんなことを考えつつ部室の戸を開けると、先客がいた。
一年の久我光くが みつるだ。
文芸部は廃部寸前の弱小部過ぎて、全員で六名しかいない。その内二名は三年生で受験真っただ中。今日も久我以外の部員は来るのか来ないのかわからないくらいだ。
部室も普通の教室の半分くらいの広さで、設備も机と椅子がいくつかあるだけ。一応小さい黒板はあるが、少し板書しただけで書ききれなくなってしまう。
部員数といい部室といい、こじんまりとした部なのである。

「先輩、今日は来るの遅いですね」

彼の特徴である猫のように大きなアーモンドアイが細められる。
こちらを探っているかのような目に鼓動が跳ねた。
誰かがチョコを渡しに来るのではないか、なんて考えてギリギリの時間まで教室で待っていたなんて言えなかった。

「ちょっとね……」

詠の曖昧な返事に対し、久我は特に追究しなかった。
聡い子なので何となく理由を察しているのかもしれない。そのうえで何も言わずにいてくれる気遣いが有難いやら悲しいやら。
そんな彼の隣には物が無理やり詰め込まれ、歪な形になった紙袋が置かれていた。
見ただけでわかる。
これはバレンタインの贈り物であると。

「大量だね」

「ああ……でも、もらっても食べられないので」

久我はどこかうんざりした様子で答えた。
潔癖症の後輩は手作りのものが食べられないのだと以前話してくれた。
これほどの大収穫、詠なら舞い上がってしまいそうだが久我は素直に喜べないのだろう。
そう考えると無造作に紙袋に入れられたチョコたちが憐れに思えてきた。

「それに、手作りなんて何が入ってるかわかりませんし」

「光くん、アレルギーあったの?」

確かに、ナッツやドライフルーツなんかが入ったお菓子を作る人もいる。
既製品なら成分表示があるが手作りでは何が入ってるかわからない。
アレルギーがあるのなら、そこを気にするのは当然だろう。

「いえ、そうじゃなくて」

短い否定の言葉に詠は疑問符を浮かべた。
では、何が?

「髪の毛とか血とか……混ざってるかもしれないでしょう」

「うげ」

久我の指先が紙袋の端をつついた。まるで中身そのものが汚らわしいものでもあるかのような触れ方だ。
もし、彼の言う通りのものがチョコの中に混ぜられていたら?
想像すると気味が悪い。
思わず変な声を出してしまった詠に久我がからかうような視線をよこした。

「まるで御門先輩の小説みたいですね」

「思い出させないで……俺、あの小説トラウマなんだよ」

詠の頭に蘇ってしまったその小説は、三年の御門玲みかど あきらが書いたサスペンス小説だ。
彼の高校生活最後の作品ということで気合を入れて書かれたものらしいが、力を入れる場所が間違っているとしか言いようのないものであった。

主人公は美食の頂点を極めたシェフ。彼がさらなる高みを目指して至高の食材を求めるところから物語は始まる。
最終的にそのシェフが見つけた最高の食材は人間だった。

血はワインの代わりに。一部はスープの隠し味。肉はステーキに。もちろん焼き加減はレアで。髪は食べやすいように細かく刻み、他の食材と混ぜてサラダに。眼球はその美しさを堪能するため、芸術品のようなデザートに。

シェフの脳内では独創的かつ刺激的なレシピのアイデアが次から次へと溢れ出てくる。

新しいメニューを作るため、夜な夜な新鮮かつ上質な食材を求めて街に駆り出す。
そしてついに彼が満足するフルコースが完成し、狂気に満ちた饗宴が始まるという結末だ。

なまじ御門の文章力が突出しているだけに、人を解体する場面や人肉を調理する場面の凄惨さが際立っていた。
最悪な相乗効果だった。

詠は読まなきゃ良かったと後悔したくらいである。
読んでからしばらくの間は肉料理やトマトを使った赤い料理に対する食欲が激減した。
結局、御門の力作は「高校の部誌に載せるのはちょっと」という理由でボツになったことは言うまでもない。
自分のような被害者が増えることが阻止されて安堵したくらいだ。

小説の内容を想像して辟易している詠に、久我は「ふふ、知ってます」といたずらっぽく笑う。その顔は少女めいた美貌も相まって文句なしに可愛くて、「モテるのも無理ないよな」としみじみと思うのであった。

詠はこの手の顔に弱い。

タレ目よりツリ目、さらに言えば丸い目よりも切れ長の目に魅力を感じる。茶髪や金髪より黒髪、サラサラで何も加工されていない髪が好きだ。元気があって気さくな子よりも落ち着いた物腰で神秘的な子に惹かれる。
イメージで言えば犬っぽい子より猫っぽい子、太陽より月。

顔だけで言えば久我もほぼ当てはまるが、それ以上に理想そのままの美少女がいる。
クラスメイトであり同じ文芸部の部員で、今まさに部室の戸を開けた三条静夜さんじょう しずよがまさにそうだった。

「ああ、音羽くん。部室にいたのね。探したのよ」

「え」

探した、と言われて心臓がどくりと鳴った。
妙な期待をしてしまう。もしかして、バレンタインのチョコを?

「今日、うちに来るんでしょう? 兄さんから聞いたわよ」

「あ、ああ!」

予想していなかった言葉に詠は一瞬言葉を詰まらせ、「そうなんだ」とだけ返した。
バレンタインが脳内の大部分を占めていたが、今日は部活動の後に三条家に寄る予定があったのだ。
それを静夜が知っているのは当然のことなのに、バレンタインの方を想像してしまうとは。
自分自身が情けなくなった。

詠は静夜の兄である朔夜さくやと親しくしている。
大学生の朔夜は、この学校の卒業生だ。文芸部の部長を務めたこともあったらしい。その縁で文章執筆が苦手な詠に色々とアドバイスをしてくれるのだ。
今日も本を借りる約束をしており、三条家まで取りに行くことになっていた。

静夜と近づきたくて入部した詠だが、気づけば妹よりも兄との距離の方が近くなっている。
本末転倒と周囲から笑われていたが、これはこれで良いと考えていた。
知的で優しい朔夜と過ごすのは心地よく、充実した時間となっているからだ。

何よりも妹によく似た朔夜の美しい顔に逆らえない。
誘われたら断るという選択肢は詠の中になかった。
それに、柔らかい話し方と落ち着いた低めの声は妙に心地よい。
一緒にいると酔わされるように時間を忘れてしまう。
まるで麻薬のような人だ。

「もしかして、期待させちゃったかしら」

静夜が申し訳なさそうな顔でこちらを見てきた。
固有名詞を出されなくてもバレンタインのチョコのことを言っているのだとわかってしまう。
詠は慌てて否定した。

「いや、そんなことは!」

バレンタインのことばかり考えていると思われたくなかった。
詠の中でこのイベントは終わったのだ。
確かに収穫がなくガッカリした気持ちがあるのは事実だが、それ以上に朔夜と会うのは楽しみである。気持ちを切り替えるべきだ。

「そんなに慌てなくても、ちゃんと用意してあるわよ。家にあるから後で渡そうと思って。それを伝えたかったの」

前言撤回。
静夜の「用意してある」という一言に詠の心は舞い上がるような心地になった。
バレンタイン最高。
嬉しさが表情に出そうなのを抑え、平静を装って「ありがとう」と返した。
若干声が上擦ってしまったかもしれない。

「私は用があるから今日は帰るわ。また後でね」

静夜は軽く手を振り、すぐに背を向けて部屋を出た。
その姿を見送ると急に部室は静かになった。
この時間になっても他の部員が訪れる様子はなく、今日はこれ以上人は来ないかもしれない。

「……朔夜さんに会いに行くんですか?」

「うん、本を返しに」

詠の返事に、久我が気遣わし気な表情を見せる。

「気を付けてくださいね。先輩、隙が多いんだから。食べられちゃいますよ」

冗談とも言える内容だ。だが、声はいつもより低く表情は硬い。
異質なものを感じたが、気のせいだろうと詠は笑って答えた。

「食べないよ、朔夜さんグルメだし。御門先輩の小説みたいなこと起きないって」

朔夜は食にうるさいと静夜がうんざりした様子で話していたことを覚えている。
確かに詠が遊びに行くたびに出されるお茶菓子はどれも美味しいし、高級そうだった。
どう考えても人肉のようなゲテモノ喰いに走るようなことはなさそうだ。

「そっちの意味じゃないです」

では、どんな意味だろう? 
意図を考えていると久我がふっと視線を逸らす。
それ以上は言わないつもりらしい。
疑問だけが詠の頭に残った。

「あの人の先輩を見る目、怖いんですよ」

後輩がぽつりと呟く。
朔夜は気難しいともっぱらの評判だ。詠にとっては「優しいお兄さん」なのだが、他の人はそうは思えないらしい。
久我もそうなのだろう。

「僕、心配なんです。本当に気を付けてくださいね。肝に銘じておいてください。約束ですよ」

「う、うん」

何を気を付ければいいのかわからないが、真剣そのものな相手の勢いに押され、頷くことしかできなかった。

結局その後も部員は来ず、十六時前には解散になった。
顧問がゆるいので部活動もゆるくなってしまうのである。
帰り際に「気を付けてください」と再度久我に念を押され、詠は三条家へ向かった。

目的地へはバスで二十分もかからない。
高級住宅街の一角に三条家はそびえ立っている。
一目で「金持ちの家だな」と思わせる、風格のあるお屋敷だ。

いつものようにチャイムを鳴らすと、インターホン越しにいつものお手伝いさんの声がした。
門をくぐって広い庭を通り抜け、ようやく家に辿り着く。玄関では制服から私服に着替えた静夜と和装の朔夜が迎えてくれた。

案内されたリビングにはチョコの甘い香りが充満している。
外観は和風の趣のある家だが一部は改装されており、このリビングも一般的な家庭と同じ洋室の空間だ。
ソファに座らされ紅茶を出されると、期待で胸が高鳴った。

「はい。私からはこれ」

静夜から可愛くラッピングされた小箱を渡される。
高校生活で初めてのバレンタインの贈り物に詠が感動したのは言うまでもない。

「これは僕から」

朔夜がトレーに載せたケーキを持って来た。
つやつやとしたチョコレートでコーティングされたケーキは高級そうだ。
きっと有名店で購入したものだろう。

まさか同性の朔夜からもらえるとは思ってもいなかったが、自分のために用意してくれたという事実が純粋に嬉しかった。

「僕が作ったから味は保証できないけど」

照れたような笑顔で言われた言葉に、詠は目を丸くした。

「手作りですか!?」

洋菓子店で購入したと思っていたケーキが手作りだったとは。
完成度の高さに驚嘆する。

「静ちゃんに手伝ってもらったけどね」

「ほとんど手出し無用だったじゃない。私はすぐキッチンから追い出されたわよ」

仲の良さそうな兄妹の会話が微笑ましい。

良く見ると、朔夜の指には絆創膏が巻かれていた。
人差し指だけではなく小指にまで。
白魚のような手が傷だらけになるくらい頑張って作ってくれたのかと思うと、感謝の他にも心の中に込み上げてくるものがあった。

「それじゃあ、ごゆっくり」

部屋を出ようとする静夜に慌てて声をかける。

「え? 三条も一緒に食べようよ。美味しそうだよ」

小ぶりなホールケーキだが、三人で分けても十分足りそうだ。

「わ、私は大丈夫! 二人で食べて」

静夜は手を軽く振りながら、一歩、また一歩と後ずさる。戸口までたどり着くと、まるで追われるように出て行ってしまった。
その背中を見送りながら、詠は首をかしげる。

「いいのかな」

「いいんだよ。詠くんのために作ったんだから」

そんな妹の様子に朔夜は興味がないらしい。詠の目の前でケーキを切り分けてくれた。
その上にジャムのような赤いソースをかける。ますます本格的だ。

「いただきます」

「はい、召し上がれ」

詠の隣に座った朔夜の視線にどぎまぎしながらも、ケーキを口に運ぶ。口内に甘さと共にビターな味わいが広がった。濃厚なカカオの風味が素材の上質さを物語っている。
なめらかな口あたりは洋菓子店で出されるものと比べて遜色がない。
ケーキに添えられた甘酸っぱいソースはラズベリーだろうか。食べ慣れない味だがほどよい酸味がケーキと合う。

「美味しい」という感想を伝えようと顔を上げると、詠の口元に指が触れた。

「ついてるよ」

拭われた赤色のソースはそのまま朔夜の舌へ。
まるで親が食事中の幼いわが子に接する時のような動作だ。

子どもみたいな自分が恥ずかしくなり、照れ隠しに紅茶を一気に飲み干した。それでもまだ変な気持ちは落ち着かない。
何か場の空気を変えるような話題はないだろうか。

学校であったこと、ここへ来る前にクラスメイトや久我と話していたことで、話のネタになりそうなものは。

「あ、あの、朔夜さんが部長だった頃、御門先輩って一年でしたよね」

「そうだね。急にどうしたの?」

朔夜に怪訝な目で見られる。
自分でも「何でこの話題にしたんだろう」と思ったが後の祭りだ。
パッと頭に思い浮かんだものを話してしまったのが良くない。
食事中にする話としては不適切そのものだが、仕方なく詠は話を続けた。

「御門先輩の書いた小説がすごくって。昔から気味の悪いっていうか変わった作風だったんですか?」

「最近の作品は読んでないからわからないけど、変わってないと思うよ。昔からグロテスクな話が好きだった。それで医者志望とか怖いよね」

小説の内容よりも恐ろしい話だが本当のことである。人格と頭の良さは比例しないのだから仕方がない。
ちなみに「滑り止めは合格した」とのことで、すでに医大への入学は確定している。怖い。

「それで、玲の書いた小説はどんな話だったの」

ティーポットから紅茶を注ぎながら朔夜に尋ねられた。そんなよくある動作でさえ絵になる。
優雅な動きは、まるで映画の一場面のように美しい。
見惚れてしまいそうになるが、彼が続きを促しているのは人肉を食す小説についての話だ。

「えっと……カニバリズムっていうんでしょうか。有名なシェフが至高の食材として人肉を選んで、それを使ったフルコースを作って客に提供するっていう話なんです。とにかくグロくて!」

つたない語彙力で、どれだけ気味が悪かったかを伝える。
文芸部の部員は御門の作品に慣れてしまっているせいか共感してくれる人は皆無なのだ。詠はここぞとばかりに自分のトラウマを吐き出した。

朔夜はその話を根気強く聞いてくれた。そして詠の前にティーカップを置き、面白くなさそうに答えた。

「ああ、あの子が書きそうな話だね。題材は良いけれど情緒がないな」

「情緒、ですか」

「そう。相手の血肉を摂取するというのはね……性行為なんかよりも官能的なものなんだよ。体を繋げるだけじゃない、もっと深いところで一緒になるんだ。それを玲は単純に食欲として書いてしまっている。そういうところが、より読者に残酷な印象を与えてしまっているんだろうね」

朔夜の言っていることは難しい。
だが、不思議と「そうなのかもしれない」と納得できる気持ちになる。

「相手の体の一部を自分の血肉の糧としたいというのは、ごく当たり前の欲求だよ。人間の体は食べたもので作られているからね。相手とひとつになりたいという純粋な気持ちだ。好きな人に食べてもらいたい、っていうのも同じこと。自分の体の一部が相手に吸収される。ずっと一緒だ」

そこで朔夜は一旦言葉を止める。
変な話をしているせいか、カップの中の紅茶が酸化した血の色みたいに見えてきた。

「わかるかな?」

詠はこくこくと頷いた。
実際には半分くらいしか理解できていないが、朔夜の言わんとしていることはわかる。
要は、そこに愛があるかどうかなのだ。多分。

朔夜は愛について語っている。
だから御門の書いた小説と違って崇高なもののように感じられるのだ。
人の肉を食べるという行為は同じだけど、食欲みたいな本能的な欲求とは違う。もっと深いものがある。
これが情緒というものなのだろうか。
きっとそうだろう。
一人納得している詠の様子を見て、朔夜は満足そうに微笑んだ。

「わかってくれて嬉しいよ」

ふいに朔夜の手が詠の頬を撫で、親指が唇をなぞる。
自然と距離が近くなり、相手の匂いが強く感じられるくらいになった。
着物に焚きしめられた白檀の香りが間近に迫る。

「ねぇ、ケーキ美味しかった?」

真っ黒な瞳と目が合った。
細められた目は熱を帯びており、見つめられると自分まで体が熱くなりそうだ。
そのせいか自分の心臓の音がうるさくなってきた。
胸が苦しくて何も言えなくて、「美味しかった」の意思表示にひたすら頷く。

ふいに後輩の言葉が頭に浮かんだ。

「髪の毛とか血とか……混ざってるかもしれないでしょう」
「先輩を見る目が怖いんですよ」

お菓子の中に異物が混ぜられているなんて嫌悪感しか抱かなかったが、今はそんな気持ちはない。
詠が食べたケーキは一切れ。まだ大皿の上には切り分けられていないケーキと赤色のソースが残っている。

「……最後までちゃんと味わってね」

朔夜の恍惚とした表情から目が離せない。
その指に巻かれた絆創膏が視界の隅に映るのを認識しつつも、眼前の美しい顔を見るともう何も考えられないのであった。


【あとがき】
えへへ……好きな要素をたくさん入れちゃった🥰
以下、盛り込んだ性癖たち。

・BLだけど百合っぽい(またはおねショタ)
・若干のカニバリズム要素
・攻めがヤンデレ

ここで書かなかった設定としては

・朔夜は別に料理苦手じゃない。
・本人自覚ないけど、詠は年下よりも年上好き。
(なので本当の意味で詠の好みを全部備えているのは静夜じゃなくて朔夜の方)
・御門先輩は「顔も頭も良いのに性格残念」って感じの人。
朔夜と正反対の雰囲気なので容姿に関しては全く詠の趣味じゃない。
・御門先輩は唯我独尊な人だけど、この世の何よりも朔夜が苦手。
・朔夜のことを「怖い」って言ってる光くんですが、この子も大概。
・光くんは自分の容姿が可愛いのを自覚している。

ドン引きされる方もいらっしゃると思いますが、こういうの好きっていう方に届きますように😌

お好きな方はこっそり教えてください。握手しましょ!!!

私は好きなもの書けて大満足です~!

個人的な趣味を全面に押し出した企画を受け入れてくださった皆さん、ありがとうございました🙇‍♀️
次の企画も参戦するぞ~(フライング参加表明)!

#noteでBL


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