短歌でBLチャレンジ!【noteでBL第8弾】その2
すでに1作投稿していますが、実はもう1作書いてました!
というわけでその2も公開します✨
4349文字!
何だかんだでこっちも字数制限危なかった💦
ではでは、再び概要記事をご紹介。
必須お題は「ゴールデンウィーク」。
そして「セーラー服」がお題のこちらの短歌からイメージして小説を書きました。
セーラー服の襟なびかせて歌いおる「水兵、リーベ、僕の…」 君の、
信夫と久我先生のアホ小説と比べて、こっちは少しシリアスめ。
いつも登場する割には謎が多かった少年こと音無くんの話です。
~登場人物紹介~
■俺
本文でうっかり名乗らせるのを忘れた。
「お前誰だよ」って読者が思うやつ。
今回は市媛 遥夏(いちひめ はるか)視点。
その1に登場する飛鳥と信夫の弟。
面倒見が良い男子高校生。
■音無 響(おとなし ひびき)
遥夏のクラスメイト。
顔も声も可愛くて女の子みたいだけど、人の話を聞かない。
家庭環境が複雑。
■千影(ちかげ)
遥夏の担任。英語教諭。
顔も声もかっこよくて背も高いイケメンだけど、笑顔の圧が怖い。
響以外には公平。
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「ちーちゃんのストーカーが手首切る辺り血まみれ掃除が大変」
音無の詠んだ短歌に、今年から教師になったばかりの純朴そうな青年の顔がひきつった。
現代文の授業では「ゴールデンウィーク中の出来事を短歌に詠む」という宿題が出されており、今日はその発表の日だった。
クラスメイト達は「家族で行った植物園の花が綺麗だった」とか「田舎の夜空は星が良く見える」といった自然に関しての短歌が多い。無難である。
俺はというと、友人たちと遊んだくらいで特に思い出に残るような出来事はなかった。
しかたなく、父が知り合いからもらったスイカについて詠んだ。「スイカをもらって夏を先取り」みたいなやつだ。
下手くそな詩を書いたという兄貴のことを笑えないかもしれない。
だが、俺の短歌よりも音無のはひどい。
何がひどいって内容が。
「……ちーちゃんって?」
「英語の千影先生です! 担任です!」
この学校に来て数か月の教師は千影先生のあだ名を知らないらしい。
「その時、千影先生はどうしたのかな?」
「ちーちゃんは無視してました! 靴が汚れちゃうからってボクを抱っこしてくれました」
千影先生をよく知る人間からすると、その状況が目に浮かぶ。
あの人、基本的には人当たりが良くて優しいんだけど、たまに冷たいところあるんだよな。
「警察とか……」
「フロントの人がやってくれたと思います!」
教師からの質問に元気にハキハキと答える音無。
それは偉い。
偉いんだが、回答がおかしい。
短歌もひどいが千影先生もひどかった。音無自身もな。
そして困惑しているのは新人の教師だけで、クラスメイト達は「ああ……」と納得した顔をしている。
この手の話は初めてではない。
俺たちの担任は「モテる男はつらい」を地でいく男だ。
それが原因で女性が苦手になり、男性に興味がうつるわけでもなく、結果として恋人ができたことがないという風の噂だが、何で教師になっちゃったかなぁ!?
先生の「モテる男はつらい」伝説は日々更新されてるようだ。
本人は多くを語らないが、音無がよく巻き込まれている。
「昔は知らない男の人に声掛けられたり誘拐されそうになることが多かったけど、最近は女の人も増えた」
と「最近太った」くらいの温度感で言われた時は戦慄した。
そりゃあ千影先生も過保護になるわ。原因、先生だけどな。
そんな音無が今日は千影先生とは関係ない面倒事に巻き込まれた。
巻き込まれたというか、面倒なことが起きたというか。
午後の体育の後に暑いからと皆で水道で遊んで水浸しになり、制服に着替えた後に掃除中の用務員さんにホースの水をかけられたのだ。
俺たちは無傷だったのに、音無だけ綺麗に水を被った。
そんなことある?
かろうじてセーフだった体操着のハーフパンツ以外に何も着るものがない音無。
体育直後の汗臭い体操着を貸すわけにもいかず、保健室に予備の制服を借りに行った。
「ごめんねぇ、今日、制服借りに来る子が多かったから貸せるものがないのよ」
不運は続くらしい。
「どうしよう」という目で見つめられたが、俺にもどうしようもない。
とりあえず頭なでておいてやるか。
沈黙の中、何か思い出したのか養護教諭が奥の棚から服を持ってきた。
見たことのある色。
これはもしや。
「音無くんならこれ着れるかも」
「「……」」
予想通り、女子用の制服の黒いセーラー服だった。
似合うかもしれないが男子生徒の音無に貸すな!
俺たちは絶句した。
「これで我慢してくれる? ホームルーム終わる頃には乾くと思うから」
悪気はないらしく、申し訳なさそうに言われて音無も無下にできないようだった。
これを手に取るのは躊躇するだろうが、上半身水浸しの音無に選択肢は少ない。
半裸で過ごすかセーラー服を着るか。
苦渋の末にセーラー服を着用した音無は、体操着の黒いハーフパンツと合わさって、絵本とかで見る外国の子どもみたいな姿だった。
今は「人に見られたくない」と、教室の隅っこの席でうずくまっている。
そこ、俺の席なんだけどな。
でも授業をサボるという考えに至らないのは音無の良いところだ。
俺は仕方なく音無の席に座った。
クラスメイトは誰も何も言わない。スルースキルが高いのだ。
ここはツッコんで欲しかった。
今日の最後の授業は日本史だ。
久我先生を見ると兄貴たちの影がちらつくのが本当に嫌だ。
状況を把握したらしい日本史教諭は何も言わず、いつも通りに授業が進んで終わる。
あとはホームルームのみ。
もう音無の制服も乾いていることだろう。
それで何事もなかったかのように帰るのだ。
俺が音無の席に座っているのを怪訝な目で見た担任は、ホームルームを秒で終わらせてすぐに音無のいる俺の席に向かっていた。
平常運転だ。
先生は音無が1年の時から何かと気にかけていた。
音無の家庭環境が複雑っていうのは会話から何となく感じてたから、そうなるのもわかる。
それがエスカレートして、今では親子みたいになっているのだが。
俯く音無に目線を合わせるように机の前にしゃがむ先生。
いつもの光景過ぎて、クラスメイトたちは何も言わないし気にしてもいない。
「体冷えてない? 風邪ひかないようにね」
「うん……」
「その格好も似合ってるよ。水兵さんみたいで」
「水兵リーベ、ぼくのふね?」
似合ってる、と言われて音無は少しだけ機嫌を直したようだ。
俯いていた顔をあげた。
「そう、その水兵さん。可愛いから写真撮る?」
「やだ、撮らない」
「どうして? 船に乗せてあげるよ」
「恥ずかしいからやだ」
「じゃあ、音無くん用の船買う? 乗客は先生と音無くんだけだよ」
「いらないよぉ、持ってても困るもん」
どんな会話だよ、と思ったが俺はツッコまないことにした。
先生は本気っぽいのが恐ろしい。
口では否定の言葉を言いつつも、音無は嬉しそうな顔をしている。
いつもニコニコしているが、それとは違う笑みだ。
千影先生の聞き心地の良いテノールの声も、音無の声変わりを知らないような声も、どちらもいつにも増して甘かった。
ありえないくらい大量の砂糖を入れて煮込んだジャムみたいだ。
見てはいけないものを見ているようで、俺は顔を逸らした。
何となく気付いてはいた。
音無はいつも放課後は英語教諭室にいるし、駅や街中で見かけた時に大抵千影先生と一緒にいる。
音無の家には母親がいなくて、父親が海外に行ったきりだから先生の家に住んでると聞いたことがある。
それだって、おかしいだろう。
先生の家じゃなくても、祖父母の家だとか、一人暮らしするとか。
赤の他人の教師の家に住むのは何でだ?
それに居候だとしても、四六時中一緒にいなきゃいけない理由なんてない。
音無はおっとりしているし優しいけど、かなり我が強いし、嫌なものは嫌だとハッキリ意思表示するタイプだ。
先生と一緒にいるということは、音無自身がそれを望んでいるのだ。
そしてそれを先生も受け入れている。
むしろ、先生が音無を囲っているように見える時さえある。
何が2人をつなげているのかわからない。
2人の関係が何なのかもわからない。
ただ、そこに2人だけの世界があることは確かだった。
「音無、帰らねぇの」
「まだ制服乾いてなかったから、もうちょっと待つ」
俺たちしかいない教室で、音無は窓の外を眺めていた。
その横顔はやけに大人びていて、いつもの彼とは別人のようだ。
視線の先には予想通り千影先生がいた。
美人だと評判の音楽教師と一緒にいる。
美男美女が並んでいて普通なら「お似合いだ」という感想を持つのだろが、俺には歪に見えた。
おそらく、千影先生は荷物運びを手伝っているのだろう。
優し気な表情はいつも見ているものと変わらないが、音無と一緒にいる時の甘さはない。
張りついたような笑顔だ。
反対に音楽教師の方は照れたような嬉しそうな顔をしている。
隣にいる男に好意を持っているのが丸わかりだ。
「ボクたち、大人になれたらいいのにね」
聞こえてきた声が、心なしかいつもと違う気がする。
舌ったらずな発音は変わらないが、いつもの甘ったるい声ではなく、どこか寂しさを含んだ声音だ。
「もしもボクが大人で、学校の生徒じゃなかったらさ」
音無はそこで言葉を止めた。
言われなくてもその続きは何となくわかる。
男同士の恋愛というものは厄介だ。
男だけじゃなくて同性同士なら発生する問題。
もし相手が異性愛者だったら、と考えると己の好意を伝えることを躊躇してしまうというやつだ。
俺は海里が好きだが告白はしない。
海里の恋愛対象が女性なのか男性なのか、どっちでもいいのかわからないからだ。
もし、海里が男でも大丈夫だとなったら、それ以外に障害はない。
兄貴と久我先生だって障害といえば本人たちの性格くらいで、何も問題はないはずだ。多分。
だが、音無と千影先生は。
性別以外にも教師と生徒という立場に年齢差。
一方は成人していて、もう一方は未成年。
音無の親なんかも関係してくるかもしれない。もし二人が恋仲だとしたら、前途多難である。
少なくとも教師と生徒という関係だけでもなくしたいと思うのは当然だ。
「……いつかは卒業して大人になるだろ」
その「いつか」がいつになるのかはわからないけれど。
俺には気休めにしかならない慰めしかできなかった。
「お前のちーちゃん、嫌そうな顔してるな。お前といる時と大違いじゃん」
音無の隣に並んで校庭を眺める。
容姿端麗な2人が並んで歩いているせいか、下校する生徒たちに話しかけられていて歩数が進んでいないように見えた。
「……ボクの?」
予想外の反応だった。
俺の中では共依存してるように見えていたから。
「え? そこ疑うの? 先生、お前に激甘じゃん」
教師は公平であるべきだとは思うが、ここまで来ると清々しいというか。
まぁ、あの人怒ると怖いけど普段は他の人にも平等に優しいから良いのか。
きょとんとした表情の後にふふっ、と笑った顔はいつもの音無だ。
「そう、ボクの。ボクもちーちゃんのもの」
「ものじゃないけどな。お前も、先生も」
「いいんだよ、ボクたちはそれで。ボクもちーちゃんもそれで許し合ってるの。だから、いいの」
5月の柔らかい風が吹き、セーラー服の襟がなびく。
「水兵リーベ、ボクの……」
聞こえてきたのがいつもの幼い声だったことに安堵した。
「ひめちゃん、明日は化学の抜き打ちテストあるって知ってた? D組の子が言ってたよ」
「知るわけねーだろ。抜き打ちだぞ。範囲どこか教えろ」
そう、俺は知らない。
音無の大人びた表情も、落ち着いた声も、そして先生に対する執着のようなものも。
知ってしまえば、今までと同じように音無や先生に接することは難しいだろう。
だから俺は何も知らないフリをする。
音無が今着ているセーラー服を脱いだら、今日のことは全て忘れる。
何も見てないし聞いてないし気づいてもいない。
永遠に続く日常の中、少しくらい鈍感にならないと狂ってしまうから。
《了》
ここからあとがき!
せっかく月さんが素敵な短歌を詠んでくださったのでね!
いつものコメディじゃなくて、しっとりした雰囲気の作品を書きたかったのです。
書けたかなぁ……マフィンくらいのしっとり感は出せたかなぁ。
セーラー服と言えば機関銃くらいしか思いつかない化石のような脳みその人間なので、どうしようかと悩みました。
結構無理やりな感じになっちゃったけど、単語は拾えたと思います😊
そして、ただ単語が出てきただけのゴールデンウィーク……。
ごめんね、私は君のこと大好きだよ。
さて、私がいつも文学フリマで出してる本では幼馴染設定で元気いっぱいに共依存している響&千影。
エブリスタとかnoteの小説では教師と生徒設定なので、わりとシリアスめな関係になりました。
シリアスっていうか、絵面だけ見ると事案っていうか……。
響がやけに幼い理由もあるっちゃあるんですけど、あんまり小説に関係ないんでね。スルーです。
あまり人物の容姿の描写してないので、「可愛い」とか「イケメン」とか書かれていてもイメージつかないと思います。
響と千影の容姿はこちらの記事に載ってますので、気になる方はどうぞ🥰
今日も仕事の合間に皆さんの作品を読みに行きますね😊
感想は後ほどゆっくり書きます✨
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