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女子たち、今日も「ただいま」

〜女子というだけで、この世は危険でいっぱいだ〜

今まで生きてきて、数々の危機をくぐり抜けてきた。 女子たちに、特に気をつけていただきたいのは性被害。これはモテの話ではない。誘ってるとか、隙があるとか、露出度とか、見た目や服装、態度の話でもない。

ただ一つ。

どんな年齢でも、どんなシチュエーションでも、加害者は思いもよらない形でやってくる。

私は6歳から痴漢に遭ってきた。博物館でおじさんに付き纏われ逃げたこと、自宅に不審者が侵入、再訪を単独で防いだこと、自転車に乗った3人組に追いかけられ、自宅と違う方向に逃げおおせたこと。

先日、知人男性と痴漢の話になったら、痴漢の存在も、エピソードも「とても信じられない」という反応だった。知人の弁護士さんも「逆に、真っ当な男性ほど自分がしないことを他の人がするということがわからないみたいだ」とのこと。女子を囲む性被害の数々は語られにくいし、理解されにくいらしい。警察沙汰になっていることは、氷山の一角にすぎない。私の周りでも、多くの女子が何らかの性被害を経験している。

女子だというだけで危険だらけなこと、不埒な奴らのバリエーションが、驚くほどバラエティ豊かなこと、何に気をつけなければいけないのかを、素人なりに伝えたい。

ちなみに、私の体験だけでなく、友人知人から聞いたものも混ぜて書いた。個人が特定されることのないように、一人称は全て「私」に統一した。

どこかの遠い誰かの話ではなく、あなたやあなたの隣の誰かの体験かもしれない。身近な姉妹や友人の話を聞くような気持ちで、読んでいただけたら嬉しいです。

※この文章には性被害・つきまとい・侵入などの描写があります。苦手な方は無理をせず、途中で閉じてください。



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目次

・第1章 小学校編

 川沿いのちかん

 住宅街のちかん

 ジョボジョボ

 単独行動は奴らのチャンス

 キモいとはこれ


・第2章 中学生編

 へなちょこ

 セダンの男

 静かなヒーロー


・第3章 高校生編

 私の値段

 坊主頭の男 ※閲覧注意

 春の下着泥棒

 初夏の妖怪


・第4章 大学生編

 自転車三人組

 ただいま

 耳事件


・第5章 社会人編

 夜明けの新宿

 最悪トリオ部長課長係長

 湿った手の上司

 地下鉄丸ノ内線 小太りの男

 初夏、新宿駅の男

 スクーターの男

 裏通りのワゴン車

 冬、新宿東口交差点 ※閲覧注意

 両目の男

 妊婦の胸

 警察を騙る電話


・今、私が思うこと


・番外編

 男子の被害者



……………………………………………………


・第1章


小学校1年生

「川沿いのちかん」

初めて痴漢に遭ったのは、小学校1年生の夏。

細い川沿いの道を自転車で走っていた。前を歩く知らないおじさんを追い越そうとしたら、こんな細い道を自転車で通るなんて危ない。すぐ降りなさい。と言われて、自転車を押して歩いた。

するとおじさんは「素直だね」と褒めながら頭をなでた。名前や学年を聞かれて、なぜか肩を抱きよせられ、「かわいいね」と頬にチュッとして走り去って行った。

ちゅーは親とするものだった私は事態が飲み込めず、わなわなしながら帰宅。

両親に報告して、そういう人を「ちかん」というと教わる。顔を洗うようにと母からタワシを渡され、タワシが痛くて泣きながらスポンジで洗顔。母がその後、スポンジを捨てていたので、自分がすごく汚くなったような気がして悲しくなる。

<今だから言えること>
知らない人に近づかない。
大人が手を伸ばしたら届く範囲に入らない。
個人的な質問に答えない。




小学校1年生

「住宅街のちかん」

二度目はその年の秋。

学校帰りに友達と住宅街を歩いていたら、正面から高校生くらいの男子が小走りで近づいてきて、下半身にタッチ&ラン!その背中に向け、精一杯叫んだ。「ちかーん!!!」

住宅街なのに、誰も道に出てはこず、怒りに燃えて帰宅。 私からの報告を受け、さらに怒りに燃えあがった母の通報によって警官が我が家に。パトカーに乗って現場までドライブ。 警察署で男の似顔絵を描いて、我ながらなかなかの出来になった。集中して描き込んだ甲斐があった。警官に褒められるが、犯人を見てない人に褒められても微妙だと、虚しくなった。

そしてもちろん犯人は捕まらなかった。 奴が制服姿だったので、近くの男子高の生徒だろうと思い込んでいた。

<今だから言えること>
知らない人が自分に向かって近づいてきたら逃げる。
周りをよく見る。
父からは、同じようなことがあったら「火事だー」と叫べと言われる。火事は他人事じゃないから。

その後、高校生になった頃、友人がその男子校の生徒と付き合っていて、彼氏の友達を紹介すると言われたが、件の男がその男子校の生徒だったと勝手に思い込んでいたので、丁寧にお断りした。恋のチャンスを逃したかもしれない。




小学校2年生

「ジョボジョボ」

姉と父と散歩をしていた。
人気のない住宅街。姉と私はスキップして少しカーブした道を進む。少し離れて父がついてくる。服が薄汚れた男が立っているのが見えた。男はゆっくり振り向いてこちらに動き出した。

何か、、、変?
そう思った時、男はジョボジョボと放尿した。
何か変だったのは、しまわれているはずのものが外に出ていたからなのだ。姉妹で立ち尽くした。男はジョボジョボしながら、じり、じり、と近づいてくる。おしっこがかかったらどうしよう、そう思った時、

「おい!
おっさん、いい加減にしろ!しまえしまえ!」

父が大きな声を出しながら私たちを両手で引き寄せ、男と私たちの間に立ち、男は慌てて逃げて行った。

<今だから言えること>
危険な人はふいに現れる。そして子どもだけでは対抗できないことが多い。あの日、父がいてくれて本当に良かった。子どもにとって「守ってくれる大人」の存在は大きい。




小学校3年生

「単独行動は奴らのチャンス」

学校でいじめられている子を庇ったら、なぜか私が標的になってしまった。みんなに無視され、土日に遊ぶ相手がいない。そこで1人で行動することを覚える。電車で動物園や美術館、科学博物館に通うのが楽しみになった。

シーラカンスを見ようと出かけた初夏のある日。ひんやりとした博物館で展示物を観ている私に、おじさんが話しかけてきた。 何年生?3年生です。名前は?〇〇です。素直に答えたが、聞き間違えたようで、〇⬜︎ちゃんか、いい名前だねと褒められる。面倒なので訂正せずに歩き出す。

1人できたのか、学校はどこか、家は近くか、好きな科目は何か、前にもここに来た事があるか、今日は何をしにきたか、ゆるゆると歩きながら質問は続く。ずっとついて来るし、頭を撫でられたりするので脳内に川沿いでの何かが呼び起こされ、困ったなと思いながら歩みを止めなかった。すると、おじさんが喫茶店に行こうと誘ってきた。

「クリームソーダなんかどう?」

うちの母はあの緑や青の飲み物は身体によくないと言う。それをちらつかせるとは。この人、悪い大人だ!

背中に手を添えられて、まずい展開だと思い、お父さんと待ち合わせしてるからと断りながら、体を回転させて男の手から逃れ、出口に向かった。「でも、、、」と男が何か言いかけていたが、振り向かなかった。

博物館を出て、出口に立つ男の靴先がこちらに向いているのを目の端で捉え、まだ危ない。ゆっくり歩く。角を曲がっ、、、、てからはもう、全力で走った。

学校名を答えてしまい心配になったが、名前が間違っているので大丈夫だろうと考えた。 あの時、ついて行ったら大人になれなかったかもしれない。

<今だから言えること>
知らない人に個人情報を言わない。しつこく聞かれた時はいっそのこと偽名でいい。身体を触らせない。すぐ近くに知った大人がいることをアピールする。お父さんと待ち合わせという嘘も有効。

普通、子どもは嘘をついてはいけないと教わるが、「安全のための嘘」というものがある。




小学校4年生  

「キモいとはこれ」

制服のある小学校に通っていた私。
ある朝、満員電車から降りてホームを歩き出したら、不意に、後ろから腕を掴まれた。普段は学校で挨拶するだけの、別の学年の女性の先生だった。

先生の顔はこわばっていた。私は制服を汚されていた。 プリーツスカートの後ろ側に白い液体がかけられていたのだ。

先生は静かな声で「大丈夫よ」と言った。手を繋いで駅員室へ行き、水で流してくれて、先生のハンカチで叩くように生地を拭いてくれた。湿った制服で学校へ行った。

私は絵の具やボンドだと思っていた。制服を汚すなんてひどいねと友達と言い合い、体操着に着替えた。連絡を受けた母が迎えに来て早退した。母は何やら神妙な面持ちで、先生と話し、帰宅してからは父と夜遅くまで話しこんでいた。しばらく母が送り迎えしてくれた。

数年後、真実に思い至り、怒り新たに。

<今だから言えること>
信じられないろくでなしがこの世には存在する。通学などで単独で電車に乗る時は、ホームの時点で女性が多い列に並び、乗車中も女性のそばにいるように心がけるといい。

あの時ホームで、通勤途中の先生に一番に見つけてもらって、本当によかった。先生も他の学年でクラス担任をしていたはずなのに。クラスの子たちを他の先生にお願いして、私を保護してくれたことになる。学校への事情説明の連絡なども、おそらく先生がしてくれていたのだろう。気づかずに汚れたまま学校に行っていたら、どうなっていたかわからない。




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・第2章

中学1年生  

「へなちょこ」

土曜日の昼間、始発駅。人がまばらな車内で長椅子に座り、発車を待っていた。自分の右側に籠編みのバッグを置いて読みかけの文庫本を広げた。 するとすぐ左側に人が着席してきた。
え、ガラガラなのにすぐ隣?とは思ったが、読み始めたストーリーに頭を持っていかれていた。男が足を開いて座るので、膝が触れそうだ。触れたら座り直そうと、うっすら思いながら文字を追う。

すると、視界の端っこに男の手がゆっくりゆっくり入ってきて、ん?と思った瞬間、私の左膝に触れて来た。 右のバッグを両手で掴み、自分と男の間にザクッと差し込んだ。一瞬の間の後、男はシャキーンと立ち上がり、走って駅のホームに降りてそのままひょこひょこ走って姿を消した。 細身の大学生風の若い男だった。

<今だから言えること>
ガラガラのシートの状況で、すぐ隣に座ってきたら離れる。何か不審に思ったら、本や携帯に気を取られず、注意を向けておく。大きなバッグはガードに有効。 

思えば視界に入ってきたその手は、少し震えていた。なぜだろうと思っていたが、初心者だったのかもしれない。

若い男よ、
失敗してよかったな。
真っ当に生きたまえ。




中学2年生

「セダンの男」

私が通う中学校の敷地の周りは、南北の太い道、東西の細い道に囲まれていて、特に西側の道は人通りが少なかった。住宅がいくつかと、駐車場と、マンションの裏側にあたるため、壁や隣の小学校のフェンスに挟まれた一本道。でも、両側から木が枝を広げ、木陰は木漏れ日が綺麗で、静かなその道を私は好きだった。時々、タクシーのドライバーさんや、営業マン風のスーツの人が車を停めて休憩していた。

ある日、友人と一緒にその道に入ると、1台のセダンが停まっていた。窓が空いていて、男が一人、地図を広げていた。私たちが近づくと、声をかけてきた。
「ちょっと教えてくれるかな?
この地図でいうと、ここってどこ?」
二人で近づき、覗き込むと、急に地図を引っ込めた。
男はズボンも下着も履いていなかった。

驚いて声が出ない私。一瞬の間を突いて、友人が笑い出した。笑いながら私を引っ張り、車の後方の少し離れた場所でしゃがみ、お腹をかかえて笑い続けている。

男は困惑した顔でエンジンをかけ、去って行った。

すると友人は立ち上がり、「びっくりした。びっくりしたね」そう言って私に抱きついた。聞けば彼女には、兄が二人いて、お風呂上がりにパンツも履かずにうろうろする。しかも、変な人が見せてきたら「笑え」と教えられていた。
「ちょっとひきつった笑いになっちゃった」と自分の体を抱きしめるように両手で左右の腕の辺りを擦っていた。
怖かったね。一人じゃなくてよかったね。と言い合って帰った。

翌日、クラスでその話をしたら、他にも数人が似たようなことに遭っていた。コートを着た男が振り返ってコートを広げるとズボンと下着が膝まで脱げているバージョンもあった。

何人かは逃げ、
逃げながら「ちいさーい!」と叫んだ強者もいた。

もう、あの道は通らないほうがいいと言い合った。
好きだった木漏れ日の道を失ったのだ。

<今だから言えること>

いわゆる露出狂というタイプ。あの頃はただ、変態と呼んでいた。友人がいてくれて助かった。その友人だって、頼もしいようで本当は怖かったのだ。日常の困った兄弟も、免疫にもなり、知恵も授けてくれる。家族構成や生育環境もたくましさに影響する。
そして、友人間の情報のやり取りは重要。




中学3年生

「静かなヒーロー」

通学で一駅だけ電車に乗る。毎朝満員電車で、乗り込むのも全力だ。ポジションはほとんど選べない。と、お尻に違和感。撫でられてる。気味が悪くて身をよじるも回避できず。手は撫でるというよりつかむに近い動きになり、絶望感が滲んだその時、

「ちょっとすみません、カバンが」と男子学生が私と痴漢の間に身体をぐいっと強引に入れてきた。

偶然?
いや、助けてくれた?
待って、痴漢に遭ってることを気付かれた?

ほっとするより、恥ずかしさが先に立った。

背の高い学生の顔を見る勇気はなく、視界いっぱいの彼の学ランの黒い生地に釘付け。斜めの生地目をただ見つめた。駅に到着。私はホームに降りて振り向きもせず走った。 恥ずかしーよー!
それにしても。騒ぎ立てず攻撃もせず、周りにも気づかれないスマートなディフェンス。
こんな助け方があるのか。

何十年もたったけど、彼は今も心のヒーロー。
あなたのおかげで紳士もいると思えたよ。
彼が幸せなおじさんになっていますように。

ディフェンスされた痴漢は、以後、足の小指を家具の角に1000回ぶつけていますように。

<今だから言えること>

世の中には加害者もいるが
ごくたまに、見て見ぬふりをしない人もいる。あの日の男子学生のおかげで、私は「世の中捨てたものじゃない」と思えた。

ヒーローが現れたら、次はちゃんとお礼を言う。




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・第3章


高校1年生

「私の値段」

生徒のほとんどが電車通学している高校に通っていた私。同級生が電車で痴漢に遭って、胸ポケットに覚えのないお札が入ってるという事件が起こる。先生に相談した事で公になり、同様のことが実は学内に複数人いることがわかり、大騒ぎに。学校に警察がやってきて該当の生徒は事情聴取された。

気持ち悪い、意味がわからない、どうせ触られるなら実はラッキーじゃんなどと、口々に言う私達に先生は言った。
「あなた達!
自分の身体に値段がつけられたんですよ。こんな、とんでもない事を許してはいけません。あなたたちはみんな、一人一人が、お金には換えられない、大切な存在なんです。」ヒートアップし、涙ぐむ先生にちょっと引きつつもプチ感動。

でも、問題あるのは向こう側。私たち、できることないんだけど。お金は回収され、警察へ。しばらくは、なるべくグループで電車に乗る事を奨励された。家族が送り迎えする家庭もあった。
もちろん犯人は捕まらず。

集団で帰ることで、いいこともあった。

帰宅経路が同じ4人で、並んで吊り革に捕まっておしゃべり。端っこの一人が、自分の横の20代くらいの女性が痴漢に遭っている事に気づいた。 何せ我が校では今、痴漢が一番ホット。
小さな声で隣の友達に「ねぇ、ねぇ、Aちゃん、痴漢がいる」
「え、ねぇねぇ、Bちゃん、痴漢がいる!」
「え!ねぇねぇ、Cちゃん、痴漢がいる!!」
と段々と大きな声の伝言ゲームになり、最後はみんなで口々に「だれが痴漢?」「本当だー痴漢だ!」「お姉さんかわいそう!」「痴漢ひどい!」と騒ぎ、次の駅で男が逃げるように降りて行き、お姉さんからはお礼を言われた。

<今だから言えること>

自分の身体に値段をつける権利は誰にもない。あの時はピンと来なかったけれど、先生が真剣に怒った意味を、ことあるごとに考えることになった。

ちなみに、20代の頃、渋谷の交差点で信号を渡ると、指を3本立てて、これでどう?これでどう?と聞いてくる男がいた。会社でその話をしたら、3万円でホテルに行こうという、ナンパだと言う。同僚女子も同じ目に遭っていた。同僚男子は「3万なんだ」と謎に感心していたが、ちがうやろ。人に値段をつけるなんて、君も地獄に落ちちゃうぞ。




高校2年生

「坊主頭の男」
 ※ちょっと重めです。閲覧注意かもしれません。性的被害を想起させる内容を含みます。

父が、我が家の隣家を購入。これがぼろぼろの古家で、玄関の引き戸は建て付けが悪すぎて開かない。2階の6畳の部屋が私にあてがわれ、裏口から出入りしていた。家族がいる元の家の玄関まで5歩くらいだ。

朝、パジャマのまま朝ごはんを食べに行く。ぼろぼろの家から人が出て来るので、通行人がギョッとするのがわかる。その裏口は、小さな内鍵が付いているだけ。その鍵もズレているため、扉の桟を思い切り持ち上げないと鍵穴に棒が入らない。ガラスのはまった木の桟は、乾燥しケバだっている。下手をすると指をケガしそうだった。

最初こそ一生懸命鍵をかけたが、だんだん面倒になり、鍵を掛けずに過ごすようになっていった。

古家の1階は実質倉庫で、荷物や灯油が置いてあったので、両親から再三鍵をかけるよう注意された。しかし開け閉めがやはり面倒くさいため、内側からリボンで結ぶ事にした。

その年の初冬。
眠っていた私は重い違和感に目覚ました。でも、瞼が重くて、うまく目が開かない。何かが上にのしかかって苦しいし、上手く身体が動かない。布団を押し除け、なかなか持ち上がらない手を下半身の方に伸ばすと、ザリッとしたモノに手が当たって、それは坊主頭だった。黒い影が身を起こすとふっと重みから解放されて、そのまま意識が遠のいた。朝、目が覚めると、布団は掛かっているが下着が床に落ちていた。

頭はぼんやりとして鈍く重い。見覚えのない、ハンカチより一回り小さな白い布も落ちていた。布には油性マジックみたいな匂いが残っていた。じわりと恐怖が湧いて、すぐにゴミ箱に捨てた。

状況からみて、これは最悪なのではないかと思った。なけなしの知識によると、その場合は痛みがあるらしいが、身体のどこにも痛みはなく、ベッドも汚れていなかった。変な夢を見たと思いたかった。いや、ぜひ夢であってくれ。

とりあえず母屋に行こうと裏口でサンダルを履いた瞬間、目に飛び込んできたのは、床のアスファルトにちぎれて落ちたリボンだった。 誰かが、力任せに戸を開き、入ってきた可能性、大。予想が真実だとしたらと思ったら、ショックで、しばらくその場にしゃがみ込んだ。

こんなこと、誰にも話したくなかった。恥ずかしいし、信じてもらえないかもしれない。でも、特に身体的な被害はなさそうだし、たいしたことないのでは?警察なんて大袈裟だよね。大体、鍵をかけていなかった私が悪い。注意されていたのに。言ったら、怒られるかも。ああそうだ、もう学校に行かなくちゃ。漢字のテストだから休むわけにいかない。

下着、白い布、リボン。どれも状況でしかなく、信じたくない気持ちが強かった。

学校に行っても、そのことが頭から離れない。ふと一番の問題に気づいた。

もし、本当に、起こったことだとすると、また、やってくるかもしれないって事だ。

その日から扉と格闘して、桟が食い込む指の痛みに泣きそうになりながら毎日鍵を掛け、夕食後は仮眠した。23時からは電気をつけずに起きていて、明け方、寝落ちする数日だった。

そしてある晩の1時頃、扉をガタガタと揺らす音がした。
来た。
そっとルームシューズを履き、息を殺して母屋に面した窓を、すぐに開けられる体勢で待った。侵入してきたら両親の部屋の窓に向かって叫んで、窓から出て、隣家の平屋の屋根伝いに逃げるつもりだった。

扉を揺らす音は止んだり鳴ったりを繰り返した。時間にして5分ほどか。やがて小刻みな、不定期な音がなくなり、家の壁を叩くような、蹴るような音が道路に沿って移動していく。壁の端を強く蹴ったような音を最後に、静かになった。
男の姿を窓の隙間から確認するが、街灯の逆光でよくわからない。ジャンパー的な膨らんだ上着、中肉中背風、坊主頭、バッグはなし。わかったのはそれだけだった。

でも、少なくとも、夢じゃなかったのだ。
新たな絶望感が足元に広がった。

そこから1週間ほど同じ生活パターンで過ごしてから、もとのサイクルに戻した。その頃には鍵のコツを覚え、楽に施錠できるようになっていた。その後、同じ危機はなかった。

しかし、何故かある日、父が坊主頭にして帰宅した。しばらく父を見たくなくて口をきかなかった。反抗期ですまされてたと思う。

ところで、言うまでもなく、坊主頭の皆さんには何の罪もありません。

<今だから言えること>

被害に遭った時、人は意外なほど冷静に現実逃避する。私もそうだった。考えたくない、認めたくない、嘘であってほしいとおろおろしているうちに、白い布は捨ててしまったし、証拠がなければ信じてもらえないと、できることはないと、思い込んで両親には言わなかった。
孤軍奮闘、よく頑張ったと思う。
でも、
鍵、かけろ。
家族へ相談しろ。
警察へ行け。

家族の人たちへ
女子たちは、未熟さと恥ずかしさゆえ、
事態の深刻さを受け入れたくなくて、
誰にも被害を言わないことがあります。

10代は、反抗期とかコミュニケーションが希薄とか、様々なことがあるにしても、「いざという時には、あなたを絶対守る」と宣言してあげてください。その一言が、女子たちを救うことがあるはずです。

そしてもし不幸にして被害にあっても、女子たちを責めないでください。彼女たちの言葉を信じ、受け止め、抱きしめてあげてほしい。性被害において、悪いのは被害に遭った人たちではありません。

その後のことを少し。
私は何もなかったと思っているが、ホントのとこどうなのか。答えはない。この後、私は自分の身体の状況がわからないという自己肯定感ダダ下がりの青春を駆け上がっていくことになる。人を好きになるたびに、相手が私の過去にこだわるかを気にする羽目になった。
そして、読んだ漫画の言葉に影響を受けた。「この世には答えのない問いがあり、それを考え続けると人は狂ってしまう」という内容で、日々の中で、この件をなるべく考えないことで生きてきた。

「わからない」
それだけで十分、人は苦しめられる。

今、あの男が神様から嫌われる人生を送っていることを心から願う。




高校3年生

「春の下着泥棒」

部活から帰ると家が無人で、自分のベッドに倒れこんだ私。うとうとしているとガチャガチャと鍵を開ける音がして、ドサリと荷物を置く音。お母さんが買い物から帰ってきたなと安心していた。

ふすまが開いて、お母さんが入ってきた気配。布団を掛けてほしいと思いながら、壁の方を向いたままうとうと。タンスの引き出しを開ける音。お母さん、洗濯物片付けてくれてありがとう、と深い眠りに落ちた。

ガチャガチャと扉が開く音、つづいて「私ちゃん、いるの?」とお母さんの声。 状況が飲み込めない私。さっき帰ってきたよね?いやいや今よ。とのやりとりのあと、タンスを開けてびっくり。

下着がなくなっていた。

両親は速攻で鍵を変えてくれた。

<今だから言えること>

下着泥棒は思った以上に図太い。人がいても入ってくることがある。しかも人の後ろでタンスを開けられる神経を持っている。
自宅で施錠してても合鍵を持っているなら注意のしようがない。でも、扉にチェーンをかけようと思った。

あと、お母さん、お父さんは味方。




高校3年生 

「初夏の妖怪」

それは制服を夏服に切り替えた日の下校電車での出来ごと。私は吊り革に掴まって立っていた。前に座るスーツの男がちらちらと、こちらを見てる気がする。視線が袖の奥の脇に注がれているようで不快な気持ちに。

駅に着き電車が止まると、男が立ち上がりついでに、なんと、私の肘から手首にかけてをぺろーんと舐めて降りて行った。
思わず叫んだが、周りも唖然とするのみ。そんな事あるのかと震える。 洗っても洗っても、洗いたりない。

<今だから言えること>

痴漢は予想を超えてくる。変な視線に気づいたら、即座に場所移動しよう。

ちなみに友人にその話をしたら、その痴漢は友人間で「妖怪ペロン」と呼ばれ、友人たちが同じ電車で妖怪ペロンのパトロールをしてくれた。友達の存在って本当にありがたい。

殺伐とした受験期の、憂鬱な帰宅時に遭った痴漢を笑い飛ばしてくれて、懲らしめようとパトロールまでしてくれる。




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・第4章

大学生 夏

「自転車3人組」

自宅近くの商店街へ買い物に出かけた。自転車が数台、すぐ横を通り過ぎていく。不意にお尻をぱんっと叩かれ、自転車は走り去っていった。

唖然。

笑いながら走り去る数人の後ろ姿。よくわからないが、中学生か高校生くらいの男子たちに見えた。

数週間後、遅くなったなと思いながら、駅から自宅に向かって歩いていた。4車線の国道沿いの道の交差点から、2車線の道へ入ったとき、広めの歩道を、後ろから自転車がやってきた。

1台目の自転車の男が、またしても私のお尻をぱんっと叩き、2台目の自転車の男は私の頭をポンと叩いた。少し間があって3台目がきた時、奴は片手運転で、左手を伸ばしてこようという瞬間だった。

思わず、横から蹴り倒した。

そこから全速力で、家へ続く小道は曲がらずに通り過ぎ、2車線の道路沿いを走った。
家を知られてはならない。
その一心だった。
知り合いの家に飛び込むか、この先の文房具屋がまだ空いているか?
高速で考える。男たちは3台目を起こすためか、すぐには追って来なかった。歩道に乗り上げる形で、建物にぴたりと駐車している自動車があった。家の壁と車の間に身体を捩じ込んだ。
もし見つかっても、これならすぐには引っ張り出せないし、狭いから1対1でのバトルが可能だ。しかも、騒げばこの家の人に助けを求められそうだった。足元を探ると小石があった。1つ握った。小さいけど念の為持った。

すると自転車が走ってきて男が叫んだ。
「あのアマどこに行った?!」

あ の あ ま ど こ に い っ た ?

映画?
こんな陳腐なセリフ、人生で一度きりだ。
めちゃウケるんですけど。

身を固くして、自転車が3台とも通り過ぎる音を聞いた。自動車の下を覗かれたら私の足が見えるはずで、まずいなと思っていたが、幸い気付かれなかった。音がしなくなって、通りのずっと奥の方に自転車らしき影が見えなくなるまで待って、小石を捨てて一目散に帰宅した。

親にはもちろん言わなかった。言えば警察沙汰になり、でもきっと犯人は見つからないだろう。それなのに、パトカーが来たりして目立つと、男たちに私が特定されかねないと思った。

ちなみに私は、その日着ていた服を処分し、翌日、予約なしで美容院に飛び込み、髪を切った。しばらくの間、同じような時間にならないように、帰宅時間を調整した。

<今だから言えること>

商店街での男たちと、国道の男たちが同じかはわからない。下手に刺激すると厄介になる。私はとっさに蹴ってしまった。あれが正しかったのか、今でもわからない。触ろうとしていたように感じたけど、実際はまだ触っていない男の自転車を蹴り倒したから。

彼らにとって最初は多分、ちょっとしたいたずら。でも、蹴り倒されて頭に血が登った。私を見つけたら、どうするつもりだったんだろう。殴る?乱暴?命を奪う?明らかな犯罪に発展したかもしれない。

私を見つけられなくて、彼らの人生は助かったと思う。




大学生 冬

「ただいま」

学校からの帰り道、川沿いの細く長い一本道を歩いていた。枯葉が積もり始めていて、サクサクと足音がする。乾いた葉が割れる音を楽しみながら歩いていたら、音が不自然に聞こえてくる。

後ろから誰かが歩いてきているのだが、私と同じテンポでやってくる。立ち止まると音が止み、歩くと後ろでもカサカサと音がする。怖くなって振り向けず、足早になった。後ろの音はもう私には合わせてこない。ただ、スピードがアップされている。思わず最後は走った。

細道を抜けた住宅の2軒目は、いつも門が開け放たれたお家だった。閉まっているところを見たことがない。もちろん知らない人の家だ。赤の他人の敷地に飛び込み、ピンポンを押しながら私は言った。
「ただいまー!」

足音の主は、門の後ろに立っているらしく、道に影が見える。「頼む!在宅であってくれ」と祈った。
扉が開いて、隙間から怪訝そうな顔の女性が見えた。「お母さん、ただいま!」そう言って中に入り込み、後ろ手で扉を閉めて、しゃがみ込んだ時には半泣きだった。
「ごめんなさい。すみません。なんかつけられてしまって。電話貸していただけますか?」
昭和w
まだ携帯電話がなかった。

父が迎えにきた。私のSOSを聞いた父は、木刀を持とうとして「いや、大げさか」と置き直し、家にあった物で何か身を守る物を作ろうとしたらしい。結果、小銭をつかんでやってきた。
銭形平次か。

<今だから言えること>

後ろからくる人の足音は重要な情報。一人歩きの時は耳をすませて。
自宅までの間に、どんな家があっていざという時に飛び込めそうな家があるか日頃から確認しておくと安心。一人暮らしでないとしても、地域を知っておく。




大学生 春

「耳事件」

その日、電車のいわゆる狛犬ポジションに立ち、ポールに体を預けて文庫本を読んでいた私。大きな駅で人がどっと雪崩れ込んできた。目の前に立ったサラリーマン風のスーツの男が私の頭を越えて、自分のバッグを網棚に乗せた。息がお酒くさい。しばらく揺られていたが違和感。男にお尻を触られている。ガードしても角度を変えて諦めない。

こいつ。

バッグに名刺とか、身分証明書とか入っているのでは?
閃いた私は奴のバッグに手を伸ばした。掴んだ途端、奴も自分のバッグを押さえた。バッグを下に引っ張る私、抑える男。近距離でギリギリと睨み合う。お酒くさ。

駅に着いた瞬間、奴はあろうことか私の耳を舐めた。

ぎゃー 心の叫び。
私は無言で駅に降りた。

みなさん、覚えておいでだろうか。
妖怪ペロン、2匹目を確認。

<今だから言えること>
見知らぬ女子を、電車で舐める妖怪が1匹ではないなんて。
この世はホラーか。

思えばこの時、周りには山ほど人がいた。私たちが揉めていることは、何人もが気づいていたと思う。でも、介入してくる人は1人もいなかった。はっきりと、助けを求めるアクションをしたら違ったろうか。




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・第5章

社会人

「夜明けの新宿」

映像の会社に勤めていた私。会社はいわゆるザ・ブラック。その日も、台本をワープロ(w昭和)で打ってほしいと言われ、初心者の私は、人差し指2本で一晩中かかって仕上げた。

始発が動き始めている駅に向かった。通りは流石に人が少ない。
薄明るくなっていく空を見上げて歩いた。カラスが道に舞い降りては、ゴミを咥えて飛んで行く。

正面から、歯がない、薄汚れた服のおじさんが歩いてくる。
まずいかな?
おじさんは私の方を見て、いやにニコニコしている。
まずいかもしれない。
と思った途端、おじさんは言った。
「ごきげんなおっぱいちゃんだな〜」
両手を私の方に伸ばして、胸を触るジェスチャーをする。

その日の私は、別に胸が目立つ服を着ていたわけではない。ダブダブのTシャツだ。多分彼にとって「女の子=おっぱいちゃん」なんだろう。完全に認知が歪んでいる。ニコニコして不思議なことに悪意を感じない。と、理解を示す気持ちもありつつ、そのジェスチャー、やっぱりやだ!

もし私が男子なら、朝も早よから、こんな無神経さに心を削られることはないのだ。

<今だから言えること>

薄明るくなっていく空を見上げて歩いてもいいんだけど、周りに気を配る。男子には男子の苦しみがあるのかもしれないが、女子がかなり不利だということは、もっと知られてほしい。




社会人

「最悪トリオ部長課長係長」
※昭和の話です

ある会社の企画室に勤務していた私。本社から電車と徒歩で30分くらいの場所に企画室はあった。企画室には会議や打ち合わせなどで、役員や営業の人たちがやってくる。自分の仕事のほかに、訪問者へのお茶出しも女子社員の仕事だった。これ、昭和体制です。

本社、企画室、工場勤務の人たちが一堂に会すと500名を超える。事件はそんな500名が集まってのパーティで起こった。

先輩女子がやけに張り切っていた。若い女子たちを集め、お酌をして回るように指示を出す。私はペアを組むように言われた、初対面の本社の女子と名乗りあって、2人でビールを持って回り始めた。

1度だけ会ったことのある部長はその日、それはそれはご機嫌だった。大きな声で「よく来たね!若い子に注いでもらうのがサイコーなわけよ」と言いながら私にグラスを差し出す。

注ぐと嬉しそうに「待っててよ〜」と飲み干し、「おかわり!」と今度は本社女子にグラスを差し出した。注いでもらって飲み干すと、おもむろに「どれ、どっちが大きいかな?」と言いながら私と本社女子の胸を両手でむんずと掴んだのである。周りのおじさんたちがどよめく。横にいた営業のおじさんが慌てたように目で「行け」と合図しながら「部長!俺のお酌でも飲んでくださいよ〜」と部長のグラスにビールを注いだ。

ナニコレ、ナニコレ、
ナニガオキタンダ?????

ビール瓶片手に、立ち去る私の胸を
課長がすれ違いざまに触った。

はい???

さらに係長が笑いながらお尻を触りに来た。

!!!

しかし、この後更なる事態が。
トイレで混乱&悔し泣きの私を、同僚が慰めにやってきた。
続いて駆け付けた先輩女子が言った。
「気にしちゃダメよう。毎年そうなんだからあ。」

なんですと?
こうなると知ってて行かせたんかい!
この会社の大人たち、なんなの?
生贄か?
先輩女子が遊郭の女将のような
やり手だなんて聞いてない。

本社女子は大丈夫?と聞かれて、平然と「こんなことで泣かないわよ。彼女、かわいーのね」もう驚愕。女子にも敵がいるのか。流すなや。私が変みたいじゃん。

「私、もうお酌はしないです」というのが精一杯だった。

企画室に翌日、係長がやってきた。彼は来た途端に同僚女子に拉致られ、どこかでお説教をされたらしく、私の前に連行されてきた時には、妙にシオらしくなっており、丁寧に謝罪してきた。
「すぐに許すことはない。今後の行動を見ていく」と伝えた。

数日後、課長がやってきた。会議室を覗くと単独でいた。そこで
「先日のパーティで、課長が私の体に触ったこと私、大変腹を立てています。謝罪の機会を差し上げますが、謝罪なさいますか?」
課長は怯えた表情で、「本当にすまなかった。謝ります」と言ったので、二度目はないと伝えて、「では今日も、私が、お茶を淹れて差し上げます」
私が淹れたお茶を、怖くて飲めなくなればいいのに。

パーティから10日くらい経って、部長がやってきた。会議室を覗くと単独で新聞を広げていた。そこで同じセリフ。「先日のパーティで、部長が私の体に触ったこと私、大変腹を立てています。謝罪の機会を差し上げますが、謝罪なさいますか?」
部長は言った。「謝らない」
おっと。まじか。「どうしてですか?」
「そんなこと、謝るようなことじゃない」
「わかりました。謝罪をなさらない限り、私は部長にお茶を淹れません。よろしいですか」
「いいよ、そんなの」
「承知いたしました」

事務室の扉を開け、会議室に聞こえるような大きな声で全員に宣言した。「私は大変怒っている。2度とお酌はしない。部長が謝らないというので、謝るまで、私は部長にはお茶を淹れないことになりました。部長も承知されました。みなさんご承知おきくださーい!」

そこから私が退社するまでの1年半、部長が謝ることはなかったし、上司も先輩も部長が来た時は、そそくさと自らお茶を淹れるのであった。

私についたあだ名?
「風紀委員」です。

<今だから言えること>

決戦は1 on 1。周りに人がいない方が、向こうは素直に謝りやすい。でも、扉は開けておく。ハラスメントは秘密にしない。すぐにシェア。

ただ、触られた時、すぐにその場で部長にきちんと抗議ができていれば、その後の課長係長の行動は防げたと思っている。Gを1匹見つけたら2匹3匹湧いて出るって本当なんだと思った。
係長を注意してくれた同僚女子には本当に感謝。

あと、女子って
「全員、風紀委員」だと思ってくれてちょうどいい。




社会人

「湿った手の上司」

社員5人ほどの小さなデザイン会社に勤めていた私。
直属の上司は30代の独身男性。人を上から下まで舐め回すように見る人で、上司の前に立つと、なんとも言えない居心地の悪さを感じる。しかも、体質なのか、いつも手が湿っているらしく打ち合わせ中に紙が、ふよふよにふやけてしまう。
でも、彼の指示のもと、仕事を進めなければならない。

ある時、モデルを使った撮影現場でのこと。海外からやってきたという若いモデルさんは美しかった。撮影後、私服に着替えた彼女が、挨拶に来てくれた。彼女は背中が腰まで空いた服。買ったシャツを自分でアレンジしたと教えてくれた。それがとても似合って、セクシーで可愛らしかった。彼女がぎこちないながらも日本風にお辞儀をして、くるりと方向を変えた瞬間、上司が彼女の腰から背中にかけて、すうっと指を滑らせたのだ。

あの、湿った指で。

彼女は小さく叫んで振り返った。周りのおじさんたちは笑っていた。彼女のマネージャーの若い日本人男性は困惑顔だった。慌てて、私が謝った。

彼女たちが立ち去った後、「触るのは良くないです。ダメですよ」と言ったら上司は「役得だよ」と笑った。代理店のおじさんたちもまあね〜と笑っていた。時代は昭和。全員どうかしていたのである。

私が人前で注意したのが気に入らなかったのか、明らかな嫌がらせを受けるようになった。なぜ嫌がらせするのか尋ねたら「君が嫌いだから」と言われた。え、珍しく気が合う〜、うちら嫌い同士じゃ〜ん。

退職した。

数年後、渋谷の路上でばったり行き合ったら、向こうから話しかけてきたので、心底驚いた。

<今だから言えること>

恥知らずはいる。そして多分記憶力が弱い。自分が何をしたのか、モデルさんへも、私へも。そんな不埒者に付き合う時間はもったいない。自分の時間を大切に。




社会人

「地下鉄丸ノ内線 小太りの男」

前述の会社に勤めていた頃、朝の電車の中で、お尻を触られた。

連日の上司の嫌がらせに辟易し、朝、目を覚まし、会社だなぁと思うと泣けてくる。もうやだー、行きたくないー!そう布団の中で叫んでから身支度をする。ダークサイドに落ちた、怒りと悲しみがとぐろを巻いた状態で、電車の吊り革に掴まっていた。
痴漢は空気も読まず、そんな私を触ったのだ。

はっしと、右手で痴漢の手首を握って、左手も被せて掴んだ。「何するんだ!僕は痴漢なんかしてないぞ」と大きな声を出したのは小太りの男。「あなたが痴漢かどうかはわからない。私に触ってる手を掴んだだけ。」「はなせよ」「はなさない」「駅員のところに行くぞ!」盗人猛々しいってこういうことか。「そのつもりです」駅に着いたので手を引っ張って降り、2人でホームを歩き出した。

歩きながら小太りは言った。「今朝、重要な会議があるんだよ。時間がない」知るかと思って掴んだ手に力を入れる。「あのさ、本当にごめん」

は?あなた、さっき、痴漢じゃないって言ったじゃん。足を止めた。

「謝るんですか?」
「うん。謝る。」
「何を謝るの?」
「さわったこと」
「さわったんだ。じゃあ、あなた痴漢なのね?認めるのね?」
「うん」
「うん?」
「はい。すみませんでした!」腰を95度くらい曲げてお辞儀をした。

「もう、するな」一番低い声を出した。
「はい」少し小さな声になった。
「2度とするな」
「はい」

手を離した。

「すみませんでした」もう一度お辞儀をして、足早に去って行った。

私はそのままホームに座り込んだ。足がガクガクしていた。解放したのは甘かったか?でも、痴漢の手を捻りあげるなんて、我ながらすごい。
ダークサイドに落ちて、虫の居所が人生史上最悪だったからできた芸当だ。


<今だから言えること>

この時、たまたま、人生史上最悪な機嫌の悪さだったために、反撃ができた。咄嗟の出来事への対応は実は瞬発力やスキルやキャリアがいるものなのだと思う。怒り慣れてるって大切なことだ。




社会人

「初夏、新宿駅の男」

新宿駅の大きな階段に向かって歩き、階段を登り始めた私。前から来た男が、私の胸を片手でぎゅっと掴んで離して過ぎ去った。

んなバカなと振り返ると、駅構内の女性たちに次々手を伸ばしている。追い越しざまにお尻、前から来る女性には胸。誰もが皆驚いて、振り返る、男は手当たり次第に触っている。
階段の上から見ると、ツイスターゲームでもやってるみたいにジグザグにガニ股で、不格好なポーズで進んで行く。スピーディーに。

異様な光景。
でも、誰も捕まえようとはしていない。その場の全女子が驚き、呆れて、諦めている。関わりたくないのだ。そんな変な人。

「触っても減るわけじゃない」どこかのノータリンが言っていた。

減る。

自分を大切にする心とか、人への信頼とか。「そんなことくらい」と言う人への信用も。

<今だから言えること>

この世は、特に日本は、社会への信頼で成り立っている。快適な生活は、みんなの努力の賜物だ。男も女もその他も、今日もただ、いい人でいよう。人をバカにせず、下に見ず。すれ違う見知らぬ人にも人生があり、気持ちがあり、誰かを愛し誰かに愛されている、大切な人なのだ。

そう思ったら、お互いに不埒なことなんてできないはず。




社会人

「スクーターの男」

最寄駅からの帰り道、自販機で炭酸飲料の缶を購入して、缶を手に持って歩いていた。一口飲みたいけど、家まで我慢と思っていた。最後の曲がり角を曲がる。すると、家の窓の灯が見える。もう50メートルほどの距離だ。
ほっとした瞬間だった。
スクーターが1台正面から走ってきて、すれ違ったところでキュッと止まり、「すいません」。振り向くと、「駅までって、この道で合ってますか?」説明すると「あー」首を傾げ、「この先を右ですか?」ポケットから紙を出し、地図のメモを見せてきた。電灯の光のせいで、明るいけど影が濃く、よく見えない。近づいた瞬間、胸を触って走り出した。咄嗟に缶を投げつけた。
男の背中に軽く当たったが、そのまま走り去った。ナンバープレートが折り曲げられ、角度がつけられていて、番号はわからなかった。
家に入るなり警察!!!と叫んだ。

お巡りさんが自転車でやってきたのは20分後だ。
現場で身振り手振りで状況説明。こんな、自宅の目と鼻の先で被害に遭ったことがショックだし、生活圏での犯行は本当に許せない。
缶を投げつけたが走り去ったこと、飲み口を開けてから投げればよかった、そうしたら炭酸が飛び散って、犯人が見つけやすかったかもしれないと悔し紛れに捲し立てたら、
「ええと、次回、同じようなことがありましたらですね、絶対に、ものを投げないでください。刺激すれば何をされるかわかりません。まず、近づかない。話しかけられた時点で、ナンバーを確認する。この手順で安全第一でお願いします。」
ごもっとも。

<今だから言えること>

思えば、この男はフルフェイスのヘルメットだった。自宅の近くで油断していた。怪しいかもしれないと言うアンテナは、常に張り巡らすべきなのだ。
お巡りさんの言った「近づかない。話しかけられた時点で、ナンバーを確認する」が全てだ。
実を言うと、私はよく人に道を聞かれる。国内の観光地とか出張先、海外に着いた日に、旅行者に聞かれたこともある。そして、私自身も道がわからない時はすぐに人に聞く。人への親切は周り回って自分に返ってくると信じている。
親切の輪も、気をつけて広げる。




社会人

「裏通りのワゴン車」

繁華街の端の住宅街。その一角にある事務所から、帰宅途中の私。いつもの裏通りを駅に向かっていた。2車線の道の歩道を、足早に歩いていると、前方から音楽が聞こえた。見ると、黒っぽいワゴンが停車している。

助手席の窓が空き、身を乗り出すように、男が顔を出した。振り向きながら、こちらに向かって手招きをした。車の数メートル手前で立ち止まると、

「こっち、こっち」
知り合い?いや知らん。
「乗りなよ!遊びに行こう。なんなら送るよ」
後ろの席のスライドドアが開き、
5、6本の腕が出て、手招きをしている。

咄嗟に反対側の歩道に渡った。見ると、運転席側のウインドウも下がりはじめた。後ろのウィンドウは真っ黒で、中の様子は見えない。来た道を走った。うしろから声が追いかけてくる。
「おねーさーん!怖くないってー!」「たのしーよー」ぎゃははという笑い声を遠くに聞きながらスピードを上げた。

このままの歩道にいたら、バックで近づかれ、付き纏われるかもしれない。反対に渡れば距離もとれて、方向転換に時間がかかるはず。瞬時にそう思えて助かった。

彼らの声掛けがもっと遅ければ、車との距離がなければ、引き摺り込まれていた可能性もあった。もちろん、友好的な、ゆかいな仲間の可能性だってあるにはある。
でも、黒い車から、何本もの腕が手招きをする光景は、今も恐怖のシルエットだ。何十年経っても忘れられない。

<今だから言えること>

道を曲がるたびに、身を隠せる場所があるか、人通りはどうか、誰かが等間隔でついてきていないか、誰かが待ち伏せしていないか十分すぎるくらい周りを見ろ。
私のことが心配すぎて、そう言った父は正しかった。
おかげさまで生きてます。




社会人

「冬、新宿東口交差点の男」 
※ちょっと重めです。閲覧注意かもしれません。

残業後の仕事おわり、ネオンは賑わっているけれど、帰宅ラッシュの時間帯を過ぎ、新宿東口交差点の人はまばらだった。

信号が変わるのを待っていた時、急に後ろから、大きなコートでふわりと私を包むようにして両肩を掴み、くるりと方向転換して男が歩き出した。誰?何?私は小柄で、浮き上がり、足が空をかく。地面につかない。恐怖で声も出ない。

道を曲がり、ビルに入り、階段を降り始めた。これ、命が危険かもと気づき、なんとせねばと、思い切り暴れた。体をよじり、足をばたつかせた。男がバランスを崩し手を離して、数段下へ転げた。私は一目散に走り、交番に飛び込んだ。

髪はボサボサ、靴は片足のみ。カバンもなかった。お巡りさんはちょっと驚いた様子だった。

でも、
顔も見ていない、名前もわからない男をどうやって捕まえてもらえるのか。
コートの色しかわからない。

震えが止まらない私が、とにかく靴と鞄を探しに行きたいというと、同行してくれた。ビルに入ったところにカバンはあった。中身のお財布や身分証などもそのまま手付かずで、階段の下に、靴が片方転げていた。
何も取られていないことから、本当に乱暴か命が目的だったのではと、改めて震えが来た。靴が見えていても、下に降りていくのが怖くて躊躇していたら、お巡りさんが降りて靴をとってきてくれた。

<今だから言えること>

自分のコートに女子を包んで連れ去るなんてこと、なぜ思いつくんだ。側から見たら、私たちはカップルに見えたと思う。
奴らは擬態する。




社会人

「両目の男」
私が一人暮らしで選んだのは、古いアパートの一室。扉は重い金属で、古いけれど頑丈そう。郵便物を入れる横長の小窓があり、内側にはカバーの蓋がついている。郵便物を外から押し込むと蓋が開いて玄関の床に郵便物が散らばる。扉の内側に受け止めるものはない。

ある夏の日の午後、扇風機の風を受けて涼んでいた時、なんだか落ち着かない。何か、、、視線を感じるような、、、と、玄関を見ると、郵便用の小窓が空いていて、誰かが両目で部屋をのぞいていた。

目が合った。
もう心臓が止まるかと思った。

一瞬置いて、スッと蓋が閉じられ、階段を駆け降りる音がした。私はフリーズしたままだった。

翌日、また気配を感じて見るとやはり両目がいた。
「こらっ!」と言ったら蓋が閉じられ、階段を駆け降りて行った。

硬めのビニール袋をカットして、小窓につけた。蓋を押して開けると、しゃりしゃりと乾いた音がする。

翌日、扉からしゃりしゃり音がしたので、「こらっ!」と言ったら蓋が閉じられ、また階段を駆け降りて行った。

その日の夜、お風呂に入っている時、湯気を逃そうと2センチくらい窓を開けたらそこに人影が。「いー加減にしろ!」と窓を開けてシャワーで撃退。

2度と来なかった。

<今だから言えること>

「こらっ」とかシャワーとか、なんとものんきに見えるけど、プライベート空間の安全が脅かされてからでは遅い。

物件選びは慎重に。距離があるなら不審者には強気でOK。




社会人

「妊婦の胸」

20人ほどの規模の会社に勤めていた私。妊娠8ヶ月をすぎ、規定の産休を取ることになった。会社で壮行会を開いてくれた。もちろん、私にはお茶を啜る会だが、みんなは酔っ払っていく。

最後にお店の前へ出て、扉の前でたむろしながら、何度目かの挨拶をした。すると後輩女子の1人が、「私さん、お腹触らせてください」いいよと答えたら、我も我もと男女関係なく四方八方から手が伸びて、おしくらまんじゅうの様になりバランスを崩しかけた。

怖い!
「待って待って!下がって!」
みんなが気づいて下がったので、転ぶことはなかったが、それより何より、どさくさに紛れて胸を触った奴がいる。

後方。
振り向くと目があった。
奴は目を逸らした。
お前。
野生のやり取り。
無言の視線戦。

尊敬している先輩だった。
心底がっかりした。
酔っ払っているにしても、ありえない。

その後、仕事復帰して先輩と働いた。何も言わなかった。2度と不埒なことはなかった。仕事は尊敬できる。
でも、心の中では今も軽蔑している。

ギターが趣味の先輩。人より早めに耳が遠くなって、一生、ギターのチューニングが決まりませんように。

<今だから言えること>

長年勤めた会社。お祝いの席。夫も同席。公衆の面前。これで油断しない人がいるだろうか。そんなシチュエーションでも奴らは入り込んでくる。信頼をあっさりと裏切ってくる。悪ふざけとか、ノリという大義名分を持って。




社会人

「警察を騙る電話」

育児休暇中だった私。夫の帰りは毎日遅く、朝から晩まで2、3ヶ月の赤子の世話をワンオペでこなしていた。睡眠時間もまだ定まらず、ふらふらと生きていた。そんな雨の夜、一本の電話がかかってきた。

男は警察を名乗り、
〇〇さんのお宅で間違いないですか。
はい。
ご主人はご在宅ですか。
いません。
では、お電話口は奥様ですか。
はい。
奥様に伺いたいことがあります。ご協力いただけますか。
と、丁寧に言われたので、どんなご用件でしょうと返した。大人と話せるのが久しぶりで正直、少し気持ちが浮き足立った。

内容は以下。
数日前にある男が窃盗で捕まった。下着泥棒である。男の自宅を調べたら、名前、電話番号、住所、盗んだ下着の種類と色などのリストが押収され、まずは、電話で確認している。
ここ1年の間に下着をなくしていないか。

そんな覚えはなかった。
ないと答えた。

近所でそういったうわさを聞いたことはあるか。
ない。

近所の防犯対策など、ご自身でも取り組んでいることはあるか。
ない。

ご主人とも話したいが、何時頃なら電話対応をお願いできるか。普段、遅くなることが多いか。曜日によって早く帰る日はあるか。私のフルネーム、生年月日も聞かれ、答えた。
そして、
「ちなみに現在、どんな色の下着をお持ちですか」
ん?
そのとたん、電話の向こうから聞こえる雨音の大きさ、雨の中を車が走り抜ける音に不自然さを感じた。この人、外にいる。

ぞくっとした。

ええと。確認してご連絡しましょうか。
「記憶の範囲でいいですよ。黒、赤、パステル系、白、何系が多いとか」

あ、すみません、子どもが起きたので、こちらから掛け直します。お電話番号いただけますか。
「いや、それにはおよびません。ひととおりは伺えたので、ここまでで大丈夫です。ご協力ありがとうございました」

でも、主人から電話させますが?

ガチャンと切れた。

すぐに警察署の電話番号を調べてかけた。内容を伝えて確認してもらったが、該当する件はなく、イタズラ電話だろうとのことだった。
特に何も取られてないし、怪我もされてない。実害はないですね?

耳を疑う。情報を取られているし、騙されたショックで心は血だらけだ。見えないだろうけど。
「ただのイタズラ電話とは思えないです。まず相手はうちの苗字と電話番号を知っていました。私は自分のフルネーム、生年月日、家族構成、夫が不在がちなことまで言ってしまいました。
地域の防犯について質問されたことも気になります。この辺り一帯に、まとめて泥棒に入るための情報収集だったらと思うと不安でたまりません。もちろん、色々話してしまったのはこちらの落ち度だけれど。
普段、我が家は私と赤ん坊だけで、押し入られたらおしまいだと思うんですが」必死で訴えた。


電話口の人は、パトロールを増やすことを約束してくれた。本当に増やしてくれたかはわからない。

でも、翌日、家の前の駐車場に自転車の警官が立ち止まって、何かメモしていたので、約束を守ってくれたのかもしれないと思った。


<今だから言えること>

2000年代初頭の話。劇場型で台本がありそうな、なりすましの犯罪は、すでに始まっていたのかもしれない。自宅にいても、下着の色を聞いてくる電話がかかってくる。
でも、いちいち驚いてはいられない。

そういう世を生き抜いて行く。




……………………………………………………


「今、私が思うこと」

※この先は体験談ではありません。ここまでの出来事を経て、今の私が思うことです。

知っている、体験した、聞いたエピソードを並べてみました。今回、出来事からかなりの時間が経ったことで、やっと文字にできたこともありました。深刻度の差はあるかもしれない。でも、どの時の、どの「私」も不快だったし怖かった。一見、深刻度が軽くても、当事者にとっては一大事の危機だ。そしてどれも謂れのない出来事で、ただ、「そこにいた女子だ」というだけ。エピソードの約3割が電車で起きた話だった。

車内で痴漢に遭遇した時、勘違いかもしれないと、自分を疑いながらも、女子はアンテナを張る。自分の後ろのスペースに余裕があるのに前にいる女子にぴたりとくっつく。座るとやけに足を開き、体温が伝わってくるほど女子の足にくっつける。そんなことは日常茶飯事だ。なぜ女子はこれらを我慢しなければいけないのか。痴漢に顔を覚えられたくない。反撃することで、目立ちたくない。痴漢に遭っていることを周りに知られたくない。そんな気持ちの女子に、あの、スマートにディフェンスしてくれた学生には本当に感謝だ。
書いてみて改めて、今も賛否はあるが、女性専用車両の必要性を感じた。

語り口がふざけていると、不快に思った方がいたらごめんなさい。嫌な目に遭った時、「ネタにでもしないとやってられない精神」で書きました。やられっぱなしの時もあれば、反撃したこともある。だんだん逞しくなっていくし、仲間がいるとさらに強くなれる。

読んでくれたあなたも、同じような思いをしたことがあるかもしれない。言葉にできないことを抱えているかもしれない。自分の身を守ろうとしても、防げないこともある。年齢や場所や服装や時間帯が違っても、奴らは現れる。

覚えておいてほしい。
どんな時も、悪いのは加害者だ。

あなたは悪くない。

あなたに落ち度はない。

自分を責めないで。

仮に、どんな無防備な女子がいても、
乱暴しない。
利用しない。
傷つけない。
必要なら助けを呼ぶ。
それが真っ当な世界だと思っている。

痴漢の動機はストレスと征服欲だという記事を読んだ。痴漢の皆様におかれましては、まずご自分を征服していただきたい。カンケーない女子を巻き込まず、ご自身の人生と行動をコントロールすることに集中していただきたい。そして、あなた自身も誰かの大切な人なのだということを思い出してほしい。その行動は大切な人を喜ばせるだろうか。

時代は移り変わる。犯罪もスタイルが変わる。でも、性犯罪は続いている。私が知っているだけでも50年以上変わらない。

身軽に動けないからという理由で妊婦や車椅子の方が、急いでいるからと受験シーズンの学生が、ターゲットになることがあるという。老人の施設でも起こっているらしい。私が出会った不埒者たちも、嗜好はそのままに歳をとっているのだ。

まったく。
女子の受難はいつまで続くのか。

女子たち、小さきものたち、逃げよう。
いつも誰かが守ってくれるわけじゃない。ふとした一瞬、いつもの道に、いつもの時間に、魔が入り込むことがある。その時は、自分を守るために必死になっていい。



格好悪くていい。

大声を出していい。

嘘をついてもいい。

堂々と逃げていい。

自分の身を守ることを、最優先にしよう。そして、生き延びてほしい。あなたが悪いから狙われたんじゃない。

生きて帰ることが、いちばん大事だ。

そして家族に今日も言わせてあげよう。
「お帰りなさい」


そして
家族へ。
友人へ。

恋人へ。

あなたが女子たちを守れる場面もある。

でも守れない瞬間も、あるかもしれない。

だから、どうか日頃から伝えてほしい。

「何かあったら絶対に助ける」

その一言が、大切な彼女たちの心を強くして、命を救うことがある。彼女たちに、最大限の敬意と支えを。

どうかいつも味方でいてください。


※もしも、この記事を読んで自分の体験を思い出して苦しくなった人がいたら、一人で抱え込まないでください。信頼できる人や専門機関に相談することも、自分を守る大切な一歩です。




……………………………………………………

番外編   

男子の被害者

帰宅途中の電車の中での出来事。

車内は椅子は全部埋まり、吊り革に掴まって立つ人はまばら。私は3人がけシートの前に立って本を読んでいた。
人が私の肩にぶつかり、後ろを見ると、扉エリアのスペースを、ぐるぐる円を描いて歩いている2人連れがいる。どうやらその人たちとぶつかったらしい。
電車内で遊ぶなんて。と思ったが、よく見ると、二十歳前後に見える学生風の男の子の背中にぴたりと張り付いている20代に見える男性。

彼は学生さんの首の後ろに鼻を押し付け、ふんふん音を立てていて、どうも匂いを嗅いでいるらしかった。学生さんはちょっともう、泣きそうな顔をしていた。声も出せずにひたすらくるくると逃げている。

これは、、、痴漢?男子が男子に?初めて見る光景に私も周りの人たちも、2人を見つめるだけで、誰も止めない。

駅に着くと学生さんは一目散に走り去った。男性は「もう〜〜〜〜」と言いながらホームに降りて何かを喚いていた。

被害に遭うのは女子だけとは限らない。

学生風の彼が、どこかで幸せでありますように。


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