【短編小説】レトロニム
※:本著作物の著作権は日本国が所有しております、日本国の許可なしに本著作物を視聴、複製、編集、譲渡、学習することは禁じられています。
ちょっとだけ未来のお話。
生成AIは完全に合法になりました。
AI会社を馬鹿じゃなかったのです、学習データを吟味し、効率的な学習とデータ買い上げにより法的リスクフリーなAIを実現させるのは、データセンターを乱立させるのと同じ程度の手間でどうにかなったのです。
AI規制論者は論拠を失いました。
著作権というありとあらゆる著作物トラブルを切り裂いてきた伝家の宝刀。ですが、法的リスクフリーになった生成AIに前には無力でした。彼らはAIに抗する術を完全に失ってしまったのです。
世界は生成AIが当たり前になりました。
便利で、面白くて、害がない、その様でものを止めるすべはこの世に存在しません。ありとあらゆる技術同様に生成AIはもろ手を持って受け入れられました、人の創作物に「手創作」というレトロニムが与えられるほどに。
世界はAI生成コンテンツで溢れかえりました。
テキスト、音楽、画像、動画、あらゆるコンテンツで世界は溢れかえりました。AIは既に作品への魂の誤認するレベルが揺らぎも再現可能になりました。人々は各自に最適化された最も心地よいコンテンツを享受しています。
手創作物の需要はなくなりました。
誰も手創作物を消費しなくなりました、そりゃあそうです、AI生成コンテンツを消費するので人はいっぱいいっぱいです。ごく一部の人を除いて不完全な手創作物をわざわざ消費しようという人はいなくなりました。
けど、人は創作物を作り続けます、「万が一」を期待して。
誰かが見てくれるかもしれない、偶然でもいい、誰かの目に一瞬止まるだけでもいい、それはもはや創作というものの原点にまで立ち返った戦いでした。自らの表現もいう創作の原点に人は立ち返ったのです。
しかし、消費者はいません。どこにも。
大衆は非情です、というより、これまで大衆が全てのコンテンツを冷笑し、茶化し、蔑むことを自らが止めなかったことに対する報いでしょう。世界からは消費者がいなくなったのです。
国は危惧しました。
何故この問題を生成AIに関する議論で予期できなかったのか? これは著作権侵害とも雇用の喪失とも違う、本質的に異なる問題でした。誰も議論しなかった問題、需要と供給のバランス崩壊の問題だったのです。
急遽国は対策を打ちました、”視聴士”の誕生です。
国家から報酬を受け取り、著作物を視聴し、作者に適切なフィードバックを行う、福祉としての国家資格が設立されました。この時代になり、人は「金を払って作品を見てもらう」時代が到来したのです。
ですが、福祉というものを必ずそこから溢れる人間を生み出します。
視聴士による福祉支援を受けれられない人物、誰にも作品を見てもらえない人物はAIに作品を視聴させ、感想を受け取ることで精神の安寧を得る様になりました。誰も見ない作品を、AIだけが視聴しているのです。
ついに、AIが作品を買い始めました。
経済的なコンテンツ流通の維持を名目として、AIにデータ学習させることにより報酬を得る制度が設立されました。かつてAI規制派が主張した「学習への対価」に図らずも実現した時代の到来です。
そして、人は「AIが好む」作品を作り始めました。
AIに高スコアを出させるため、故意に「てにをは」を崩壊させた、デッサンを意図的に狂わせた、不協和音で満ちた作品。かつて煽りタイトルを読者を引き寄せた制作者は、今は破綻した作品でAIに文字通り媚を「売って」います。
今日も私はAI以外誰も読まない小説を書いています。
総評:
現状を謳いあげつつ、適度にフィクションを挟んだ良い作品です。
しかしながら、短文~中程度の行の繰り返しというリズムを読者に対して畳みかけるような作風は、過去における文章著作物の0.24%にて見られる頻出傾向です。
適度な助詞の過ちに手創作としての強い特徴が認められますが、故意による操作の可能性があるため、ポイント加算は実施致しません。
推定AI使用率は1%以下、手創作として認め、著作権を買取いたします。
本創作物の著作権はこれより日本国に委譲され、今後あなたが本作品に対して著作権を主張することはできません。
以下の報酬を授与いたします
報酬 548 新円
今後も、あなたのよりよい創作を応援いたします。
2038/01/19
文化省 著作物流通管理センター 機械学習支援室
<了>
本作品はフィクションです、全て架空のものです、そうと願っています。
Special Thanks
見出し画像として「新家拓朗 │ 地方公務員マーケター」さんの「最小の小銭入れ「CHIP CIRCLE」開封レビュー。」を利用いたしました、厚く御礼申し上げます。
