味噌と事故
私が学生のころの話である。
婆様が、いっしょに味噌を仕込もうという。
それで、婆様といっしょに味噌を作ることになった。
味噌というのは単純な調味料のようで、
豆をゆでる
豆をつぶす
豆をさます
豆に塩と麹をまぜる
寝かせる
みたいな工程で製造される。
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婆様は気が利く。
私に声をかけるまえに豆をゆでておいてくれていた。
私はゆで豆を豆つぶしマシーンへ投入し、つぶす役である。
豆つぶしマシーンはものすごい年代物だった。
たしか昭和十何年製造というプレートがついていた。
ちなみに、中の仕切りを変えることで、豆から豆乳を絞ることも可能だ。
時おり豆のかたいところが噛むようで、マシーンに負荷がかかる。
そのたびに家全体の明かりが明滅するのだった。
私はスペクタクルを感じた。
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つぶれてひき肉のようになった豆を、露天で冷ます。
底が格子になった箱に布巾を敷いて、その上につぶれ豆を延べていく。
季節は冬である。
豆はどんどん冷えていく。
また豆から汁が出て、庭に流れていく。
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ふと見ると、庭が大変なことになっていた。
豆の汁がかかった地面から、ミミズが大量に這い出てくるのだ。
ミミズは土から出てきた瞬間によじれて、凍ってしまう。
おお、なんということだ。
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どうやら豆の汁によって、ミミズたちになんらかの誤解が生じたらしかった。
命に慣れていない私は婆様相手に「ミミズが!ミミズが!」と騒いだ。
婆様は笑いながら「大丈夫だ」と言っていた。
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味噌づくりは終わった。
私は夕日差す庭に出た。
大量のミミズが、凍った屍を大地にさらしている。
ミミズよ、すまぬ。
私は心のなかで謝った。
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