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味噌と事故

私が学生のころの話である。
婆様が、いっしょに味噌を仕込もうという。
それで、婆様といっしょに味噌を作ることになった。

味噌というのは単純な調味料のようで、

  1. 豆をゆでる

  2. 豆をつぶす

  3. 豆をさます

  4. 豆に塩と麹をまぜる

  5. 寝かせる

みたいな工程で製造される。

婆様は気が利く。
私に声をかけるまえに豆をゆでておいてくれていた。
私はゆで豆を豆つぶしマシーンへ投入し、つぶす役である。

豆つぶしマシーンはものすごい年代物だった。
たしか昭和十何年製造というプレートがついていた。
ちなみに、中の仕切りを変えることで、豆から豆乳を絞ることも可能だ。

時おり豆のかたいところが噛むようで、マシーンに負荷がかかる。
そのたびに家全体の明かりが明滅するのだった。
私はスペクタクルを感じた。

つぶれてひき肉のようになった豆を、露天で冷ます。
底が格子になった箱に布巾を敷いて、その上につぶれ豆を延べていく。

季節は冬である。
豆はどんどん冷えていく。
また豆から汁が出て、庭に流れていく。

ふと見ると、庭が大変なことになっていた。
豆の汁がかかった地面から、ミミズが大量に這い出てくるのだ。
ミミズは土から出てきた瞬間によじれて、凍ってしまう。

おお、なんということだ。

どうやら豆の汁によって、ミミズたちになんらかの誤解が生じたらしかった。
命に慣れていない私は婆様相手に「ミミズが!ミミズが!」と騒いだ。
婆様は笑いながら「大丈夫だ」と言っていた。

味噌づくりは終わった。
私は夕日差す庭に出た。
大量のミミズが、凍った屍を大地にさらしている。

ミミズよ、すまぬ。
私は心のなかで謝った。

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