その22「新ジャンルとオンライン」 Archives『THE NIKKEI MAGAZINE Ai』プレミアムクラブ会員向けメールマガジン/歌舞伎編
(2015年11月~2023年3月配信/文:Katsuma Kineya、編集:講談社、配信元:日本経済新聞社)
※俳優名、公演情報は配信当時のものです
歌舞伎新ジャンルの見どころと見せどころ
2021年10月1日配信
10月は歌舞伎座の「大歌舞伎」や大阪松竹座の「花形歌舞伎」に加え御園座では「坂東玉三郎 特別公演」もかかっていて、華やかな月となっています。少しずつコロナ前のように各地で多彩な公演が戻ってきており、うれしいかぎりです。多彩といえば先月は南座で“超歌舞伎”が上演されました。新作歌舞伎の一種ではありますが、こういった、コンセプト自体がきわめて斬新なものを、今回まとめてご紹介します。
スーパー歌舞伎、スーパー歌舞伎II(セカンド)
コンセプトが新しいものとしてすぐに頭に浮かぶのが、スーパー歌舞伎です。最初の公演は昭和61(1986)年。梅原猛原作の『ヤマトタケル』、脚本・演出三代目猿之助(現二代目猿翁)、衣裳は毛利臣男(当時はまだイッセイ ミヤケのアートディレクター)、装置は朝倉摂と、錚々たる面々がクリエーションにたずさわり、歌舞伎的である一方で、モダンで煌びやかな、まったく新しい舞台を創り上げました。常にその時代の新しい風を取り込むという意味では、まさに歌舞伎らしいといえます。もう35年も前のことですが、美しい衣装とモダンな舞台美術に感動した記憶が残っています。
スーパー歌舞伎II(セカンド)は、当代猿之助がスーパー歌舞伎の革新的なコンセプトをコンテンポラリーに再解釈した舞台で、『ワンピース』でよく知られています。
コクーン歌舞伎
当時シアターコクーン芸術監督だった串田和美と十八世勘三郎(当時勘九郎)が平成6(1994)年に始めた舞台です。歌舞伎の名作を新しい視点から見直すことがコンセプトのひとつ。渋谷という街にふさわしく、若い人たちを歌舞伎の魅力に引き込む解釈と演出で、新しい世界を創り出しました。現在は勘九郎と七之助が勘三郎の精神を継いでおり、最新公演は今年5月の『夏祭浪花鑑』。ニューヨーク公演でもかかった演目で、コクーン歌舞伎では三回目の公演になります。
六本木歌舞伎
平成27(2015)年『地球投五郎宇宙荒事(ちきゅうなげごろううちゅうのあらごと)』をEX THEATER ROPPONGIで上演したのが始まり。海老蔵の音頭で始まったジャンルで、エンタメ性、ドラマ性の高い、歌舞伎を知らない人でも思いきり楽しめる演目がかかります。第2弾の『座頭市』では女優の寺島しのぶが出演し、悲願の歌舞伎デビューということで話題となりました。
海老蔵は、伝統芸能をわかりやすく多角的に味わってほしいという思いから2012年に始めた『古典への誘い』も続けており、今年も全国を巡演しています。また、持続可能な地球環境の実現に寄与することを目的として、昨年オンラインで、美しい映像の中で、ライブで三番叟を披露するという実験的な試みをした『アース&ヒューマン』の公演を、今年は11月に舞台で上演予定です。
超歌舞伎
獅童とバーチャルアイドル歌手の初音ミクとの共演が眼目の舞台。平成28(2016)年 に誕生し、先月も『九月南座超歌舞伎』が上演されました。超歌舞伎としては先月が第2弾となり、オンライン配信もありました。音楽のライブ公演のように掛け合いなどで観客と一体化していく独特のノリも魅力のひとつです。今年4月に幕張メッセで初演され「ニコニコネット超会議2021」でオンライン配信のあった『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』では初音ミクが悪役に初挑戦しており、この演目は9月の超歌舞伎公演でもかかっています。
このほか、赤坂という地に歌舞伎を根付かせたいという思いから十八世勘三郎が手がけ始めた赤坂大歌舞伎も、より新しい演目がかかることの多い舞台です。今年も11月に上演予定で、演目は笑福亭鶴瓶の落語から題材を取った『廓噺山名屋浦里』ほか。チケットはすでに発売中です。
(参考資料:歌舞伎公演筋書)
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オンラインの見どころと見せどころ
2020年7月3日配信
楽しみにしていた歌舞伎公演が中止、あるいは延期になり、寂しい思いをしている方も多いと思います。そんな歌舞伎ファンのために、ここ数か月にわたり、オンラインでさまざまな動画やライブが配信されています。そこで今回は、後援会のサイトや俳優のSNSとはひと味違う、オンラインの楽しみ方をご紹介します。
YouTube:俳優のチャンネル
動画配信といえばYouTube。最近、無料で見られる俳優のチャンネルがいくつか登場していておすすめです。配信が開始するやいなや人気急上昇中なのが、海老蔵の『EBIZO TV市川團十郎 白猿』。チャンネル名の通り、テレビ番組風の作りです。ちなみに手作り風味たっぷりのインスタライブ(Instagram)とは対照的なので、両方見ても飽きません。勸玄くんや麗禾ちゃんとの親子3人のやり取りは心が和みます。獅童の『中村獅童一家チャンネル』も人気が高いですね。やはりお子様も登場する和み系。若手では、壱太郎が歌舞伎の「拵え」の仕方や舞踊などを披露、右近(尾上)が自主公演の限定配信などを行っています。
Youtube:舞踊
まずはお茶タイムにぴったりの短い単発もの『歓喜の舞』。スーパー歌舞伎Ⅱ新版オグリの出演者が舞を披露しながら次から次へと登場します。5分なのであっという間に終わりますが、ジャージーを着て踊っている姿はかなり新鮮です。
Youtube:公式チャンネル
協会や劇場の公式チャンネルもあります。日本俳優協会・伝統歌舞伎保存会は『歌舞伎ましょう』。幸四郎の回は、自宅で隈取をする様子の自撮りに、ていねいなナレーション入り。テレビでは編集でカットされがちなところまでしっかり見られる貴重な映像です。国立劇場の公式チャンネルでは文楽を期間限定で配信しているので、歌舞伎と見比べる楽しみがあります。『松竹チャンネル』でも歌舞伎座『三月大歌舞伎』などの無観客舞台収録映像を期間限定配信していました。
イープラス「Streaming+」
有料ストリーミングサービスのイープラス「Streaming+」では、5月末から歌舞伎夜話特別編のトークセッションを、有料でライブ配信しています。歌舞伎夜話とは、通常は歌舞伎座ギャラリーで開催されている『ギャラリーレクチャー 歌舞伎夜話(かぶきやわ)』のこと。その特別編として配信されているのが『歌舞伎家話(かぶきやわ)』。第1回目は幸四郎×松也、第2回目が松也×七之助×小栗 旬などで、初回は1,000円、第2回目以降は2,000円です。俳優たちの、舞台とはまったく違う「素」の顔が見られます。同じく通常歌舞伎座ギャラリーで催されている『紀尾井町夜話(きおいちょうやわ)』の特別編も配信。こちらは『紀尾井町家話(きおいちょうやわ)』、松緑がホスト役。酒を傾けながらのトークで2,000円。どちらの企画もまったりした感じが親近感を覚えます。ともにライブ後も24時間視聴可能。
6/27からは、図夢歌舞伎『忠臣蔵』が始まりました。『仮名手本忠臣蔵』の世界を新構成し、全11段を7/25まで5回に分けて3,700円(第1回目はトークイベント込みで4,700円)で配信中。幸四郎が主要な役を演じ、構成や演出にも参加しています。7/12には『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎』も配信予定と、オンラインならではの新形態の歌舞伎が続々オンラインに登場しています。
テレビ
舞台収録画像を見るなら、有料チャンネルの衛星劇場が数多く扱っています。WOWOWでは数は少ないものの、7/4にシネマ歌舞伎「スーパー歌舞伎II ワンピース」を放送します。ちなみにニコニコ動画でも有料で5月にNEWシネマ歌舞伎『三人吉三』を放送したので、どちらもときどきチェックするとよいかもしれません。編集番組では、NHK『にっぽんの芸能』や『古典芸能への招待』で歌舞伎を取り上げることがあります。
オンラインでは俳優の素顔も見られて、思いがけない発見があります。舞台収録やシネマ歌舞伎では、見逃したもの、もう一度観たいと思う舞台に出合えます。とはいえ、歌舞伎はやはり劇場で生舞台を観るのがいちばん! 8月から再開する歌舞伎公演を心待ちにしています。
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