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《モコンさんの庭》ぼくのセルアニメ業界現場 WORKS Memo:Events 08・『JUNK BOY』1987年

マッドハウスに初めて行きお目にかかった丸山正雄氏社長に開口一番『明るく楽しく爽やかでエッチな作品をお願いします』と言われました。

マッドハウスにぼくを紹介してくださったのはOVA『アウトランダーズ』の時にビクター音楽産業のプロデューサー佐藤智子氏の紹介でした。今回の『JUNK BOY』は国友やすゆき氏原作のコミック。爽やかなエッチな楽しいギャク物で、原作者の国友やすゆき氏ともお目にかかりましたが元気な面白い方でアニメ化に対してなにも注文をつけませんでした。

実はこの頃、丸山氏はもうアニメは辞めてもいいかなと思っていたそうです。でもこの『JUNK BOY』で実験・試してみたいことがあるとのことでした。
その意図は『監督+作画監督+美術監督の組み合わせで、丸山氏が作品の方向性などを指示して制作にあたる』といった趣旨を明かしてくれました。この実験の最初がこの『JUNK BOY』だと聴いています。

『監督+作画監督+美術監督』の組み合わせと作品の方向性や見せ方などの基本的なことはプロデューサーである丸山氏が提案する、これを丸山正雄氏は当時『設定』と呼んでいました。そこで『明るく楽しく爽やかでエッチな作品をお願いします』という依頼になったそうです。

作画監督は誰にしたいかと聞かれたので浜崎博嗣氏と即答しました。当時浜崎氏はタツノコに在籍していたのですが、丸山氏はちゃんとタツノコの責任者と話をつけて浜崎氏をマッドハウスに招きました。さすが丸山社長。業界キャリアの長さだけでなく、人柄、顔の広さや人脈の広さ、制作する力のすごさを感じました。

シナリオはマッドハウス社内の二人の新人、浦畑達彦氏と福島宏之氏とで、ぼくが具体的に教えつつ書いてもらうという方法で、書いては打ち合わせをし表現できていないところを書き直すということを数回繰り返してできあがりました。シナリオ打ち合わせをみっちりとやったので絵コンテのイメージがかなり固まっていて、今回はマッドハウス社内でぼくがラフな絵コンテを描きその横ですぐに浜崎氏が清書するというスタイルでなんらとどこおるところもなく1週間もかからずに完成しました。ぼくの下手なラフコンテを浜崎氏が清書してくれたので、よく原作のキャラの特徴を捉えていて演技もわかりやすく原画にとってもよい絵コンテになりました。

作画打ち合わせは当時マッドハウス社内にいる原画家総動員という豪華さで、皆さんどなたもすべてレベルの高い原画が上がってきました。中でも竹井正樹氏の原画はキッチリとしっかりとした線で描かれていて目に止まりました。どのアニメーターの原画も気楽な作品のせいか伸び伸びしていてチェックしていて楽しかったです。

手順としてぼくが原画をチェックした後、演出の五月女有作氏に渡しOKとなったら作画監督の浜崎氏に渡すとすぐに修正にかかります。上がり原画が少ない時は、浜崎氏に『ちょっと待ってて』と言われることがありました。修正にかかりさっと仕上げ一緒に帰ることが多かったのです。浜崎博嗣氏は絵の上手さに速さがある凄いヤツだなと認識すると同時に遊ぶ時間を作るヤツだとも思った次第。

劇中の回想シーンで良平がアイドル歌手のビデオを見て青春する!?シーンの曲(挿入歌)の作詞したのがぼくです。今回の『ジャンクボーイ』ではシングルは出さないということで挿入歌という扱いですが一応二番の歌詞まで作っていました。JUNK BOY(1987年):挿入歌「月の涙」作詞。

シーン変わりの時に『架空の精力ドリンクのCM』を入れることにしていましたが、作画をどうしょうと思っていたところ、 丸山氏が川尻善昭氏に頼んだらと言うのです。川尻氏は別の仕事中でしたが相談したらすぐ打ち合わせとなり、小1時間程で原画を上げてわざわざぼくのところまで持ってきてくださいました。1カットですがずっと動きがあるカットにもかかわらず、信じられないほど早くそして当然ですが凄いクオリティの原画でした、さらにここはもう少しためを作って…など話しただけですぐに修正して持ってきました。川尻氏の原画はパワフルで絵コンテ以上の内容の原画を描くアニメーターというより作画監督と監督もこなす実力派なので頼みにくいかと思いきや、以外にも気軽に引き受けてくださいました。なおこのシーンのナレーションは原作者の国友やすゆき氏自身が担当しています。

ラストの方で主人公、山崎良平と編集長の織田由貴だけのシークエンスがあるのですが、これをダメモトで西島克彦氏にやってもらえないかと絵コンテを見せました。このシーンは良平のしでかしたことで編集長の織田の『たわけ投げ』が炸裂するギャグシーンなのですが、このシーンならやりますと西島氏は快諾してくれました。

よいスタッフに恵まれたせいか制作自体もスムーズに進み、内容もアニメーターの乗りが感じられる作品になったと感謝です。

エンディングの曲は『危ないSugarDance』で作詞・作曲ともに朝倉紀幸氏で、朝倉氏自身が歌っています。バックに入る大騒ぎの声に国友氏とスタッフの皆様が協力してくださいました。この頃はボーカリストのイメージがあった朝倉氏ですが、後に作曲、編曲としてアニメ版『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』などを手がけています。

エンディングは止めのイラスト調な洒落たものを考えていたので、絵コンテなしでまるごと梅津泰臣氏に『好きに描いて』と依頼したところすぐに快諾してくれました。梅津氏に自由に描いてもらったこともあり作品にピッタリな止めのイラスト調の原画を約十枚ちょっとにオチもついて上げてきました。

フィルムが全部上がり編集を終えたあとで、ビクター音楽産業としてはこのようなちょっとエッチな路線は始めてということで佐藤氏プロデューサーの上司の方にお越し戴き試写を観ていただきました。試写後『いいのでは』と笑っておりました。

アフレコは早稲田のアバコスタジオで行われました。ぼくの希望でマッドハウスとしては始めてアーツプロの音響監督である本田保則氏との仕事となりました。

この作品の声優さんの中に後に『YAWARA!』の声を担当する皆口裕子氏がおりました。
劇中のおでんの屋台のおじさんの一声を丸山社長があててくださいました。収録はなごやか、シーンによっては声優さんのアドリブが入り、これがまた面白くて声優さんの乗りもよかったと思います。

マッドハウスと外注のスタッフなどかなりの人数が集まっての試写は、東京現像所の奥まったところにある大きな試写室で行われました。終わったところで、一番前の席に居たぼくは立ち上がりスタッフの皆さんの方を向き『ありがとうございました』と頭をさげました。

※エンディングをお願いした梅津泰臣氏の原画がありましたのでスキャンしました。

梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画
梅津泰臣氏の原画

パッケージ版・国友やすゆき氏のイラストです。

JUNK BOY

※本稿はぼく個人のセルアニメ業界での実体験をもとにした記録です。当時の資料としてご覧いただけたら幸いです。個人名は当時の状況を踏まえ実名で記しております。関わってくださった皆さまに心より感謝いたします。

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