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《モコンさんの庭》ぼくのセルアニメ業界現場 WORKS Memo:Events 16・樹なつみ『OZ』1992年

樹なつみ氏原作の初アニメ化作品。
まだ完結はしていませんでしたが、完結した単行本にして全4巻というストーリーを約70分にまとめなくてはなりませんでした。

樹氏との初めての打ち合わせは日曜日のマッドハウス社内にておこなわれました。初めてお目にかかった樹先生はかなり積極的で、初めてのアニメ化ということもあってかいろいろとご質問なさっていました。

この打ち合わせの時点で、まだ原作の『OZ』は完結していませんでした。樹氏よりアニメ化にあたり「ラストだけはしっかり見せたい」ということもあり、ラストまでのネームを後日FAXにて送るということになりました。このFAXはかなりの分量があり、FAXマシンから延々とでてきます、本当に延々と…。樹氏はこの結構な分量を意外なほどの短期間で作成し送ってきてくれたのです。いわゆるネームというもので、セリフとコマ割りにラフな絵が描かれています。結構きちんと描かれている部分も多くすでにイメージができていたのかなと思いました。しかしなんというパワフルさでしょう!

まだ未完の『OZ』ですがラストまでのネームを読み、フィリシア・エプスタイン(16歳ながら生体工学博士・植物細胞学が専門)が最先端の科学都市『OZ』目指す荒廃した旅路を助けるのが傭兵ムトーという構図ながら、フィリシアには壮大な夢があり、それがラストまで読んだときに…OVAでのテーマがはっきりとしました。

今回のシナリオライターは渡辺麻実氏で、ぼくとふたりでどうしたらこの長さを自然に約70分にできるかをかなり時間をかけて打ち合わせしました。そうとう大胆な構成になってはいますが流れてとしてはできる限り不自然さを感じないように脚本にしてもらいました。

絵コンテを描くときに、なるべく樹氏のコマ割りに近くするためにコミックのコマをコピーして絵コンテ用紙に貼り付けてみました。原作者のアングルを使うことで、原作を読んでいる観客の興味が引けたらという意味と、樹氏のコマ割りが映画の表現に近いのであえて1話目で試みたのです。2話目の絵コンテは1話目感じが分かったので普通に、また後半はダイナミックさをプラスしています。

音楽を発注する際にできるだけわかりやすくと考えて、絵コンテのコマを8㎜ビデオで全カット撮影しました。これがひとりではなかなか大変でまる一日かかって、中腰だったせいもありしばらく腰痛で動けませんでした。このビデオを今回も音響監督を担当する本田保則氏に渡したところ、自分の会社のスタッフでアテレコしておりました。こうすると音楽のメニューや入りどころが容易に抽出できるわけです。

美術監督が、須江信人氏、中座洋次氏となっていますが、このおふたりは1990年発足の「草薙」創始者です。美術背景も「草薙」が担当しています。

この『OZ』でも忙しいにもかかわらず梅津泰臣氏に原画を少しですが手伝っていただきました。

アフレコでは樹なつみ氏も立ち会い、セリフの表現や言い換えなどに積極的に参加していました。

第1話の初号のときにムトーとフィリシアのキスシーンがあるのですが、試写室でぼくの右隣に座った樹先生の恥ずかしそうな表情を目撃してしまいました…たまたまです、すみません。

OVAはVHSでの発売なので約35分ずつの2巻となっています。VOL.1でのエンドクレジットは意図的に黒バックにしてあるのですが、これはVOL.2のエンドクレジットの麦畑を生かすために意図的にしています。当初エンドクレジットのバックに使う大地一面の麦畑は止めの絵のつもりでしたが、丸山氏が動かすようにと指示してくれたので風にそよいでいます。LDでは2巻を1枚に収録しています。

LD

VHS版:VOL.1 約35分、VOL.2 約35分。
LD版:VOL.1・2収録     約70分。

※販促用の冊子。(もちろん限定版です)

冊子
冊子

第2話の初号の後、
調布の居酒屋で打ち上げがありました。樹先生はかなりの酒豪で雑誌の担当者の方が先に潰れるそうです。
樹先生はぼくに丁寧にお礼の言葉をかけてくれました。

※本稿はぼく個人のセルアニメ業界での実体験をもとにした記録です。当時の資料としてご覧いただけたら幸いです。個人名は当時の状況を踏まえ実名で記しております。関わってくださった皆さまに心より感謝いたします。

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