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《モコンさんの庭》ぼくのセルアニメ業界現場 WORKS Memo:Events 07・『メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い 』1986年

メガゾーン23を観た後で思ったこと『続きは?』でした。
それを知りたくてアートミックに行きました。
アートミックの鈴木敏充氏に『続きはないんですか?』と尋ねました。
すると続きの要望はあるんだけど何も案がなくて進んでいないということでした。
それならと『じゃ、ぼくが案を出してもいいですか?』と言ったところ『うん書いて書いて』とのことで始めたのです。

こうして1週間ほどでまとめたのが『メガゾーン23PartII スターティングノート』なる企画書で、当時はまだ今のようなワープロなどはなく手書きのものでした。

書くにあたり『メガゾーン23』の企画書がなかったので、メガゾーン23のビデオとアニメ雑誌の記事を参考にしつつ自分なりにまず基本になる設定をまとめてみました。

・メガゾーンの世界観
・メガゾーン23の設定。
・登場キャラクターの設定。
・メカニックの設定。
~等メガゾーンPartIIへ向けて必要な基本設定を全部まとめて書きました。

そしてぼくのアイデアとして物語の核になる2つの重要な要素を設定しました。

①地球への帰還と帰還できる条件とは?
月基地に『ADAM』という今でいうならAIを設定、月基地にある地球防衛プログラム『ADAM』はぼくの発案で宇宙に散らばった沢山のメガゾーンの地球に帰還の選別の検証だけでなく地球帰還に不適切メガゾーンを排除する強力な兵器でもあります。

②時祭イヴが仮想ではなく実体として現れたら?
イヴのシステム自体がバハムート本体と切り離された自我を持つという設定としています。アイドルとしての時祭イヴはバーチャルな存在ではあるけれど歌を通して多くの人々の心にふれ、矢作省吾や高中由比に出会ったことで、最後に届ける歌がメガゾーン23を救うカギになるという設定を考えていました。

この2つを柱にしてどんな物語構成ができるかと、書き出したら簡単なあらすじのつもりがどんどん膨らんでいつのまにかほとんど箱書きになってしまいました。また書きはじめて『メガゾーン23』で出てきたキャラを全部踏襲する必要がない内容になってきたので登場キャラクターを絞りました。このことが後に『メガゾーン23』と違うキャラクター設定でも構わない要素にもなっているかと思います。実際、板野一郎氏が起用したキャラクター設定と作画監督を兼ねた梅津泰臣氏の絵柄にピッタリな作品になりました。

ということで『メガゾーン23PartII スターティングノート』は手書きながら約30ページを越える分厚いものになりました。これをアートミックに持ち込んで鈴木氏に渡しました。後日、といっても割とすぐに連絡が来てアートミックへ向かいました。

するとすでに鈴木氏の他にあいどるの社長や石黒昇氏、AICの三浦亨氏、ビクター音楽産業の永田守弘氏らが集まっていました。ぼくのスターティングノートを読んでいた一同は『これで行きましょう』と一同でうなずきつつ即決となりました。この時にメガゾーンPartIIの監督は板野一郎氏がやることになっていると石黒氏から知らされました。これは前作の監督の石黒昇氏より2作目は板野一郎氏が監督するという話し合いで決まっていたそうです。

シナリオライターは前作と同じ星山博之氏でスターティングノートのプロットを参考に、今作品の監督の板野氏を交えて脚本打ち合わせに入りました。

脚本打ち合わせと脚本完成までがぼくの仕事だと思っていたら、『脚本打ち合わせをしたのだから、絵コンテもやってください』とAICの三浦氏に言われ、そのまま絵コンテも担当することになりました。ただ長編なので前半、後半と分けて、クライマックスに至る後半部分の絵コンテを担当することになりました。前半の絵コンテは演出の長谷川康雄氏で、両方の絵コンテが上がったところで、前半は特に板野氏の意向である『若者の持って行きようのない怒りや焦り』の部分にこだわったシーンが大幅に入り、また体制側のBDに省吾がとことん対立するという場面と後半でメガゾーン23が崩壊するシーンにイブの歌が流れるシーンなど見どころをしっかりと捉えています。そのために絵コンテのタイトルは清積紀文氏を加えた4人となっています。

作画監督の梅津泰臣氏は板野氏の指名です。キャラクターデザインが梅津氏に変わり前作とまったくガラリと変わったキャラクターになっていますが、このPartIIの物語内容は前作よりリアリティがあるので違和感なく、しかも今までとは違う魅力を出していると思いました。時祭イヴだけは前作同様、美樹本晴彦氏のキャラクターを踏襲しています

梅津氏自身も作画監督をしながら原画を描いていますが、それがあの省吾と由比の本格的なラブシーンで克明に丹念に、そして長いカットで見どころのひとつかと思っています。梅津泰臣氏の描く由比の表情のこだわりは半端ではありません。劇場公開版ではこのシーンは諸事情により一部しか使われていませんでしたが、後にカットされたところが復活したバージョンがOVAで出ています。そのため劇場時の上映時間とOVAでの上映時間が違っています。ただし初回にリリースされたVHSは劇場時と同様のものです。

ぼくが演出上作画で特に原画も担当する板野氏にお願いしたのは、デザグルが『アダム』の攻撃で崩壊するとき爆発でなく、爆縮してから爆発にして欲しいという要望を見事に表現してくれました。

撮出しの段階になり劇場公開日が決定しているので続々とカットが上がってきます。アフレコ前の撮出しと撮影済みのラッシュ編集を平行して泊まり込みとなりました。撮出しは透過光マスクもありかなり1カットのセル分量が多く重いものが多かったし、また枚数も多いカットがあり、それがほとんど切れ目なく上がってくる感じで、とうとう5日間徹夜になりました。

仮眠を取ろうとするとカットが上がってくるので撮影にすぐに回さないと間に合わないのでスグに撮出しという循環が延々と続いた感じです。この時演出が二人で良かったと思いました。一人ではとてもさばける量ではありません。

ちなみにこの時食事は三日目にもう一人の演出の長谷川とデニーズに行ってまともな食事をしただけで、あとは缶コーヒーを飲んでいました。この五日間は朦朧として何度か低血糖症状で意識が飛ぶような時もありました。さらに日増しにセルの入ってカット袋が重く感じられて手が震える時もありました。撮出しと編集とでアフレコに立ち会うことができませんでした。

アフレコが終わってもまだ線撮り部分の撮影や編集があり劇場公開前日から最後のプリントが上がるまでの初号試写と劇場公開映画館との時間との戦いとなりました。長編のフィルムはいくつかのロールに分けられていて、最終の撮影分とネガ編集の終わったものから試写されるのですが順番がバラバラに上がってきます。試写は徹夜になり最後のロールの試写が終わったのが早朝で、一番最初に劇場にかけられる北海道にプロデューサーが飛行機で自ら運ぶ状況でした。なんとかギリギリ間に合ったとい連絡がありホッとしました。

劇場用パンフレット

後日劇場用パンフレットを見ると、ぼくがメガゾーンPartII用に書いておいたメガゾーンの世界観を描いたメモが、劇場用パンフレットに転用されていたのは嬉しい誤算でした。普通ならスタッフだけしか見ないようなメモを、編集して載せるなんで考えてもいませんでしたので。

劇場用パンフレット

劇場用のパンフレットのこのページは、ぼくが企画の参考に書いていたメモでした。
普通なら表に出ることのないメモですが、パンフレットの編集の方はこれを上手い具合に利用してくださいました。

STORY ストーリー
FILE NAME "物語・HISTORY“
MEGAZONE23レポートDATA

DATA:[時代設定はイヴ]
人々が幸福を感じ、自由とのびやかさを持った時代-
現在。馴染みのハードロック・カフェ、ゲーム・センター、
流行(はやり)のMUSIC、突っ走るバイク。
みんな、何時(いつも)の日常、流れに乗った人々。
500年間宇宙を航行してきた街、メガゾーン23の住民達。

DATA:[B.Dの野望]
クーデターは完全に成功して、街の実権はすべてB.Dのもの。
宇宙から見れば、ただのちっぽけなチリのような世界。
B.Dの野望は、ヒニクにも鏡に映っている虚像だった。
血で購(あがな)った勝利は、敵の出現によって、
さらに多くの血を要求している。

DATA:[デザルグ]
殺戮マシン。触手を伸してただ貫き人々を殺す。
冷めたく暗い宇宙空間での戦いは、あまりにも力の差がはっきりしている。
敵[デザルグ]は、あまりにも進んでいて、強大であ残酷なのだ。
戦争を「カッコイイ」と言った若者達は、
本物(リアル)であることの恐怖をあじわう。
だが、もう手遅れだ。

DATA:[トラッシュ]
自由でありたい!個性の集まり、バイク仲間の集団がトラッシュ。
ボスはライトニング、省吾の親友(ダチ)。
こよなくイヴを愛し、とことん惚れ抜いている。
そのイヴが、コンピューターの虚構だと知ったとて、心変わりなんかしない。
今は、軍の手先になっているイヴを助けたい!

DATA:[行動/1]
「セヴン・Gのオペレーター! 応答して下さい。」のひとことだけで
行動の目的が出来る。
命をはっても良いという目的。
ほんのささいな動機。
だが、誰がそれをバカバカしいと言える。
夜の間の中を切裂くバイクのヘッドライト。
その光の内が彼らの世界。-OK. OKそれで十分さ。
すべての鍵はプロト・ガーランドにある。それを取り戻せ。

DATA:[由唯と省吾
たとえば、身体(からだ)と肉体(からだ)をかさねてみても、
まだ愛の意味なんか分らない由唯と省吾。
もどかしいほどに、自分の気持を伝えることのヘタな少女と少年。
これも、ひとつの愛のバターン。
長い髪の毛を切る由唯。それは-ある決心

DATA:[行動/2]
イヴの全ては、軍の手に落ちてはいなかった。
イヴの開放のために牙を剥くトラッシュ。
軍の力の前に、どれほどの事が出来る。
死にに行くだけじゃないのか?
実際、あいつが倒れ、そいつが射たれ、あの娘が吹っ飛ぶ、傷ッ!!

DATA:[崩壊]
由唯の傷は、命に関わる-唯を抱きしめる省吾に、
本根(これは本音の間違いです)の風がひと吹き、
手は血で染まって-ブラック・アウト。
イヴと省吾が交す言葉。
デザルグは津波のように押し寄せ、
近づきつつある地球光(アースライト)の輝きの中に、
メガゾーンの崩壊のプロローグが始まる。
もう時は、止められない。

DATA:イヴの道
運命の糸は、コンピュータをも編み込んで、
それぞれのキャラクターに決断を迫る。
形こそ違うが、あまたの愛がメガゾーン23に満ち溢れて、
イヴすらも、もし許されるなら人の、生きとし生けるもの全てに-。
ラストブログラムは流行歌(はやりうた)-
でも、いったい誰れのために?
愛で…愛で、何が出来るのか?

DATA:[発展]
メモリー・バンク崩壊。記録されておりません。
願わくば、あなた自身の眼で確かめて下さい。

ここは、メガゾーン23が地球への帰還を果たす条件を検証する必要と、地球自体を守るディフェンス・システムとして月基地のメイン・コンピューター「アダム」を設定したDATAとするつもりでした。ですがネタばらしになるので、そこは劇場でご覧になる方のためにわざと書かないでおきました。ストーリーの紹介として「あらすじ」がなく、あくまでもイメージ的になっていて、このメモが役に立ったのはパンフレット編集の方のセンスかと思います。

劇場用のパンフレットのために一言ということで書いたのですが、この頃は恥ずかしげも無く書きたいように書いていたんですね。

劇場用パンフレット

この作品において、コンピューターに人格があったなら…という発想が始めにありました。それがイブであり、生身の人間のように省吾と言葉を交わすとしたら、500年間人々を見守り続けてきたイヴに何らかの感情のイメージが生れていないともかぎりませんよね?
誰だって時がこのまま止まって欲しいと思う瞬間があるでしょう。 自分が輝いて思えるとき、生きている確かさが分かるときを忘れないで。何事にもシラけないで、熱さを持って挑戦していくか、それが青春ならば、年のことなんか忘れてしまうのがいい。省吾、由唯、B.D、イヴ、ライトニング、それぞれが考える-愛に、何が出来るのか?

キャラクター設定

※梅津泰臣氏のキャラクターデザイン表。AICの社長により印刷された冊子のようになっています。

※本稿はぼく個人のセルアニメ業界での実体験をもとにした記録です。当時の資料としてご覧いただけたら幸いです。個人名は当時の状況を踏まえ実名で記しております。関わってくださった皆さまに心より感謝いたします。

© 2025「モコンさんの庭」プロジェクト

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