【プチ小説】落ち着く場所で生きる。
責任
オレは26歳の営業マン。皆、オレの事を「カワヲロ」と呼ぶ。高琉疾市(たかるきし)のオフィス街で働いており、オフィスビル5階建ての3階に入居している会社だ。社員は50名。オレは、営業部長をしている。
ある日。
部下のモヤシがオレの元に来た。
営業部の場合、個人のデスクがない。大きな丸型デスクに10脚のチェアが囲んでいる。また、窓際にカウンター席が5席あり、オレは1番奥のカウンター席に座っている。誰も、そこに座らない。常に空いている。
また、オレの会社は基本的に、スーツを着なくていい。オレはいつも、私服だ。
モヤシは、社長の息子。長身で細身のイケメン。髪型はツーブロック。ブランド物のスーツを着ている。オレとモヤシは、同い年で同期。仕事中でも、敬語を使わない。
モヤシは「カワヲロ、クライアントを怒らせた。一緒に謝罪に来てほしい」と言った。オレは「なるほど。大口のクライアントか。契約が飛んだら、一大事やな」と言った。
モヤシは「なので、カワヲロも一緒に来てほしい」と言った。オレは「まぁ、1人で行ってみろ。それでダメなら、オレが行く」と言った。
モヤシは「え、部下の頼みを聞かない・・・。親父に言おうかな」と言って笑った。オレは「どうぞ、ご自由に。オレはビクともしないよ」と言った。
モヤシは「分かった。では、どうなるか覚悟しておいてよ」と言って笑った。オレは「分かった。オレはどうでもいいので」と言った。
モヤシは「では行ってきます」と言った。オレは「おう、頑張れ」と言った。
ミズナが、オレの元に来た。
ミズナは、長身の細身で、長髪のサラサラヘアー。眼光鋭く、メガネをかけ美人である。いかにも"キャリアウーマン"というイメージがある。
ミズナもまた、同様だ。敬語を使わない。
ミズナは「カワヲロ、大丈夫なん?」と聞いた。オレは「問題ないよ。何とでもなるさ」と言った。ミズナは「最悪、退職に追い込まれるよ」と言った。オレは「それはそれで、面白い」と言って笑った。
ミズナは「さすが百戦錬磨の営業マン。動じないか」と言った。オレは「そうやな。てか、無駄口叩かないで、さっさと外回りに行け」と言った。ミズナは「あ、そうやった」と言って笑った。
オレの会社は、ルートー営業。新規開拓はない。また、平日9時から17時まで。残業は基本的にない。残業代がもちろん出るが、残業が続くと評価が下がる。もちろん、必要なら問題ない。しかし、仕事量は上司が管理しているので、残業の有無はわかる。
オレはスマホで何やら始めた。無線キーボードも使っている。営業事務のクコが来た。
クコは、ショートカットで小柄の二重で目がクリッとしている。美人というよりは可愛い系か。モヤシやミズナと同様、敬語をを使わない。
クコは「毎日、スマホで何をしているの?」と聞いた。オレは「まぁ、小説の執筆をしているかな」と言った。クコは「え、小説の執筆をしているの?」と聞いた。
オレは「小説の執筆は楽しいよ」と言った。クコは「私、前から興味があるので、カワヲロがしているなら、私もしようかな」と言った。オレは「仕事に支障をきたさないなら」と言った。
オレの会社は、副業OKである。ノルマを達成していれば、思う存分に副業をしていい。また、わざわざ、出社する必要もなく、働きやすい会社だ。
もっとも、ノルマを達成していても、皆、出社をしているが。個人の自由である。
クコは「私もスマホでやろうかな。手軽そう」と言った。オレは「無線キーボードがあればパソコンと同じ。スマホの方が、自由度が高いね」と言った。
クコは「分かった。では、今から少し、やってみよう。仕事がひと段落したので」と言った。オレは「分かった。許可する」と言った。
16時の頃。
モヤシが帰ってきた。かなり、疲れた顔をしている。モヤシは「やっぱりダメだった。もう、解約だね」と言った。オレは「なるほど。では、明日、オレが行ってこよう」と言った。
モヤシは「だったら、僕も一緒に」と言った。オレは「いや、明日は、オレ1人で行く」と言った。モヤシは「ありがとう」と言った。
さて、明日は、久しぶりだ。あれを使うしかない。
当日。
13時待ち合わせだ。クライアントまで電車で1時間。絶対に遅刻出来ないので、11時に会社を出た。この日ばかりは、スーツを着た。私服は、マズイ。
正午頃に、クライアントの最寄駅に着いた。カフェに入って、コーヒーを飲んだ。ランチタイムで人が多い。何とか座れたが、オレは謝罪の後に、ガッツリと食べる。今はコーヒーだけだ。
それにしても、オフィス街だけあって、ほぼ、会社員か。OLもいそうだ。私服姿の人は、ベンチャーか。勝手な想像で、ベンチャー企業は、私服が多い気がする。もっとも、オレの会社はベンチャー企業ではない。
クライアントが入居する、オフィスビルに入った。5階建のオフィスビルの2階だ。階段で行けるので、エレベーターに乗っていない。
受付で手続きを済ませ、出入り口横の応接室に案内された。6畳程度の広さで、中央に長机がある。それを囲うように、6脚のチェアがある。窓際で、外の景色が見える。
今日は、それを見る為に来たのではない。謝罪で来ている。
13時前、担当者が来た。
スラっとした、30歳程度の女性。髪型は茶髪のポニーテール。優しい雰囲気の女性だ。
オレはチェアから立ち上がり、土下座をした。「この度は、申し訳ありませんでした」と言った。担当者は呆気に取られている。
オレは下を向いているが、笑顔だ。
頭を下げるだけの、簡単な仕事。最初は落ち込み、恥ずかしかったが、今は何も思わない。仕事の一環だ。
担当者は「顔を上げて下さい」と言った。オレは申し訳なさそうな顔をして、顔を上げた。
そのあと、担当者と名刺交換した。担当者は「部長さんが、わざわざ来るとは」と言った。オレは「先日は、モヤシが失礼しました」と言った。
担当者は「モヤシさんは、オタクの会社の社長の息子さんですか?」と聞いた。オレは「そうです。モヤシの親は、社長です」と言った。
担当者は「なるほど。ミスのカバーも社長教育の一環ですか?」と聞いた。オレは「そうなります。その為に、先日はモヤシを行かせました」と言った。
担当者は「まぁ、部長さんに土下座されたら、むげには出来ない。再度、検討しましょう」と言った。オレは「ありがとうございます」と言った。
担当者は、「ただ」と前置きをして「今後、担当はカワヲロさんでお願いします。それも、条件の1つです」と言った。オレは「かしこまりました。今後は私が担当します」と言った。
オレの会社の場合、管理職は担当を持ってはならない。しかし、これは例外だ。クライアントの言う事は、基本的に従わないといけない。
ただ、頃合いを見て、また、モヤシに担当させるつもりである。
担当者は「このあとどうされます?」と聞いた。オレは「会社に戻って、仕事です」と言った。もっとも、早く小説の執筆をしたいが。帰りたい。
担当者「お茶でもしませんか?」と聞いた。オレは「かしこまりました」と言った。担当者の名前は、アセビである。まさか、お茶をするなんて。クライアントとのお茶は、ハッキリ言って、つまらない。
早く帰りたい。
15時になり、畄琉葉の舞(るるはのまい)に入った。
畄琉葉の舞はチェーンのカフェ。店の規模は地域によって異なるが、この店は30席程度ある。テラス席もあり、天気の良い日は、開放感がある。また、"映える"商品があり、SNSをしている人は、撮影して、SNSにアップしている。
オレらは、窓際の2人席に座った。アセビは「ご飯、食べられました?」と聞いた。オレは「いえ、まだです」と言った。アセビは「だったら、何か、食べましょう。私も食べていません」と言った。オレは「かしこまりました。ご馳走します」と言った。
アセビは「ありがとうございます」と言った。オレは「なにが良いですか?」と聞いた。アセビは「パスタがいいな」と言った。オレは「かしこまりました」と言い、タブレット型のタッチパネルで注文し、ほどなくして品が届いた。
オレもパスタだ。同じにしていると大丈夫だ。ちなみに、今日はラーメンの気分だ。それはまぁ、どうでもいいが。
アセビは「彼女はいるの?」と聞いた。プライベートな質問だ。オレは「あいにく、おりません」と言った。アセビは「なるほど。立候補しようかな」と言って笑った。オレは苦笑いをした。
アセビは「まぁ、それは冗談。それにしても、モヤシさんは、イマイチだね。カワヲロさんと比べると、見劣りするね」と言った。
部長と平社員。比べる方がおかしい。オレは「もう1度、モヤシにチャンスを与えてくれないでしょうか。私がサポートします」と言った。
アセビは「まぁ、それはいいですけど。次、何かあったら、解約ですよ」と言った。オレは「問題ありません。私がしっかりとサポートします」と言った。
アセビは「分かりました。今回はカワヲロさんに免じて、許します。やはり、次はないと思って下さい」と言った。オレは「かしこまりました」と言った。
アセビは「今度、プライベートで呑みに行きましょう」と言った。オレは「喜んで。その時は、お願いします」と言った。アセビは「分かりました。また、連絡します」と言った。
オレは「お待ちしております」と言った。もっとも、待たない。接待は楽しくない。仕事の一環で、当然、接待はあるが。
1時間ほど経過して。
カフェを出た。1人で食べた方が、美味しい。クライアントとの食事は疲れる。それでも、もう慣れたが。アセビは「ご馳走様」と言った。オレは「いえいえ」と言った。
アセビは「また、連絡します」と言った。オレは「お待ちしております」と言った。とは言え、待ちたくない。1人で小説の執筆をした方が、楽しい。
17時前、会社に戻ってきた。皆「お疲れ様です」と言った。オレは「もうすぐ定時なので、帰っていいぞ」と言った。あと5分で定時だ。
皆、「お先に失礼します」と言い、営業部を出て行った。モヤシが来て「どうやった?」と聞いた。オレは「まぁ、契約続行かな」と言った。
モヤシは「さすが部長。ありがとう」と言った。オレは「さ、帰れ。マイナス評価になるぞ」と言った。モヤシは「わかった。でも、今日、呑みに行こうよ。奢るよ」と言った。
今日は華金。明日は休みだ。
オレの会社は平日9時〜17時までが仕事。土日祝日は休み。ゴールデンウィークやお盆、正月休みは10連休ほどある。給料は少し安いが、とても働きやすい会社である。
オレは「分かった。ではご馳走になるか」と言った。モヤシは「ミズナやクコも誘っているので」と言った。オレは「なるほど。先に呑んでくれ。オレは仕事が残っている」と言った。
モヤシは「分かった。また後で」と言った。オレは「おう。また後で」と言った。
一方、管理職は17時で終わらない。メンバーの日報や報告書などに目を通すので、17時では終わらない。最低でも19時頃まで仕事である。
給料は平社員より高いが、どれだけ働いても定額。サブスクみたいなモノだ。
オレは仕事を再開した。毎日、書類に目を通す。結構、疲れるが、パソコンで管理しているので、書類はすべて、データである。
昔は、紙の書類だったが、今はデータ。ペーパーレスでいいのである。
18時前、仕事が終わった。すぐにモヤシ達と合流してもいいが、オレは小説の執筆をしたかったので、会社で小説の執筆を開始した。
「やはり、転職するとしたら、小説家かな」と思っているのである。
その時、スマホが鳴った。画面を見ると、先ほどのアセビだ。クライアントである。
オレは「お世話になります」と言った。アセビは「お世話になっています。今はどうされていますか?」と聞いた。
オレは「社内で仕事をしています」と言った。アセビは「今日、これからお酒を呑みませんか?」と聞いた。
クライアントのお誘いを断る事は出来ない。
オレは「かしこまりました。お願いします」と言った。アセビは「私の行きつけの居酒屋にしましょう。住所、メールで送りますので」と言った。
オレは「かしこまりました。それではよろしくお願いします」と言い、電話を終えた。
すぐにメールが届いた。アセビの会社の近所である。オレはまた、会社を出て、アセビの会社に行った。
居酒屋はアセビの会社から5分。駅前にある。どうやら、個人の居酒屋か。店名を聞いた事がない。
居酒屋の前に着いた。町屋を改造したような建物だ。他にも和食やイタリアンなどの店が横に並ぶ。
大きな規模ではない。
居酒屋に入ると、アセビが手を振っている。2人席の窓際だ。オレは「お待たせしました」と言った。アセビは「お疲れ様」と言った。
オレは早速、店員を呼び、ビールを注文した。アセビはすでに、呑んでいる。顔が赤い。
到着したビールを一気呑み。ビールジョッキだ。かなりの容量がある。
また店員を呼び、ビールを注文した。今日の酒は、あまり美味しくないが、それでも、気分爽快である。
アセビは「カワヲロさんは、お酒に強いの?」と聞いた。オレは「強い方ですね」と言った。アセビは「それは頼もしい」と言った。
少し、意味不明だが、適当に受け流した。アセビは「仕事は順調ですか?」と聞いた。オレは「おかげさまで、順調です」と言った。
オレは今日、社を背負って、ここにいる。少し気合いが入っている。大口のクライアントだ。「やっぱり、解約します」とは言わせない。気持ち良く酔っ払ってもらう。
アセビは「個人的に、友達になりたい。ダメかな?」と聞いた。オレは「大丈夫です。是非、友達になりましょう」と言った。
アセビは「プライベートは敬語、必要ないので」と言った。オレは「かしこまりました」と言った。
アセビは「今はプライベート。敬語は必要ないよ」と言った。オレは「あ、分かった」と言った。
アセビは「彼女って本当にいない?」と聞いた。オレは「いないよ。仕事一筋かな」と言った。アセビは「私、立候補しようかな」と言って笑った。
オレは「またまた。モテるやろ?」と言い、ビールをクイッとひと口呑んだ。
クライアントとタメ口。まぁ、いっか。契約が続行出来るから、誰にも文句を言われないはずだ。
アセビは「どこに住ん位でいるの?」と聞いた。オレは「高琉疾市(たかるきし)かな。アセビは?」と聞いた。
アセビは「槻撰市(つきせんし)かな」と言った。オレは「隣町か。案外近いね」と言った。アセビは「そうだね。頻繁に会えるね」と言った。
それは、公的なモノか、私的なモノか。おそらく私的なモノだろう。呑み友達が増えるのは嬉しいのである。
オレは「彼氏はいないの?美人やからモテるやろ?」と聞いた。
アセビは「今はいないね」と言った。美人を否定しない。自覚しているか。
オレは「そっか。フリー同士か」と言って笑った。アセビは「私と付き合ってみる気、ある?」と聞いた。オレは「もちろん。友達として付き合うよ」と言った。
アセビは「いや、恋人になってほしい」と言った。オレは「わ、分かった。では付き合う」と言った。
交際を断ったら、契約が飛ぶかもしれない。迂闊に断る事は出来ない。
アセビは「やった。付き合える」と笑顔で言った。オレは「ただ」と前置きをして「オレ、会社を辞めるかもよ」と言った。
アセビは「え、なんで?」と聞いた。オレは「小説家になりたいので」と言った。
アセビは「え、そうなのか。だったら付き合えないね。収入が安定しなさそうなので、付き合えないよ」と言った。
オレは「なので、友達として付き合おう」と言った。アセビは「それがいいね。これからも公私共によろしく」と言った。
オレは「こちらこそ」と言った。
21時前、解散となった。一緒に帰ろうかと思ったが、アセビは夜の街に消えて行った。
ただ、オレのサポートがなくなれば、アセビとの取引はどうなるか。彼女は指摘していないが、納得しているのか。それは分からないが、この際、どうでもいいだろう。
彼女の事は、もはや、どうでもいい。それよりも、モヤシの誘いを無視した。
オレはモヤシに電話した。オレは「モヤシ、お疲れ」と言った。モヤシは「お疲れさま、今どこ?」と聞いた。
オレは「接待やった。やっと解放された」と言った。モヤシは「お疲れさま。もう、居酒屋を出たよ。今、皆で帰っているところ」と言った。
オレは「なるほど。皆と呑みたかったが、また、今度かな」と言った。
モヤシは「これから、カワヲロの家に行こうか?」と聞いた。オレは「いや、1時間かかるので、また、後日にしよう」と言った。
モヤシは「だったら、明日とかどうかな?」と聞いた。皆、休みだし」と言った。オレは「お、いいな。そうしよう」と言った。
モヤシは「明日の11時に行くよ」と言った。オレは「お、おう。早いな」と言った。モヤシは「休みやし、朝から呑もう」と言った。
休みだからと言って、朝から呑む理由はないが。細かい事は気にしない。
オレは「わかった。では、待っておく」と言った。モヤシは「では明日」と言い、電話を終えた。
明日は家にこもって小説の執筆をするつもりだったが、どうもそうはいかないらしい。
それもまた、いい。
当日。
オレは9時に起きてスーパーに行った。
チェーンのスーパーで24時間営業である。駐車場が100台程度あり、割と大きな規模か。コンビニより品数が多く、安いモノが沢山ある。
6本パックの缶ビールと缶チューハイをそれぞれ2セット。お菓子や惣菜、そして刺身を買った。総額で1万円近くになったが、オレはお金を持っている。大した事はない。
11時前、3人が来た。
オレは「どうぞ」と言い、家に招いた。3人は「お邪魔します」と言った。
ダイニングテーブルを囲みチェアに座った。オレは冷蔵庫から缶ビールと刺身を出した。モヤシらが持ってきたビールは冷蔵庫に入れた。
オレは3人にお酌して、モヤシがオレにお酌をした。
グラスを軽くあてて乾杯し、宴会がスタートした。モヤシは「今回はありがとう」と言った。オレは「いやいや。まぁ、解約にならなくて良かったよ」と言った。
ミズナは「さすが、カワヲロ。営業部長はすごい」と言った。クコは「ホント、そう思うよ」と言った。
オレは「まぁ、オレは、この中で1番、稼いでいるしな」と言った。オレは部下の給料を知っている。オレの次に給料が高いのは、ミズナだ。
ミズナは「モヤシ、もっとシッカリしないと。次期社長やから」と言った。クコも「そう。モヤシ、もう少し、頑張らないと」と言った。
オレは「まあ、モヤシも頑張っているさ。あまり、責めるな」と言い、ビールをクイッとひと口呑んだ。
ミズナは「カワヲロは、モヤシに甘いところがあるね」と言った。オレは「まぁ、モヤシが社長になったら、オレは専務に昇格したいからね。媚を売るさ」と言って笑った。
モヤシは「もちろん、カワヲロを専務にする。既定路線だね」と言って笑った。
ミズナは「だったら、私を部長にしてほしい」と言って笑った。モヤシは「任せとけ」と言った。
クコは「私は今のままでいいよ。今の仕事、気に入っているので」と言った。モヤシは「分かった。クコはそのままな」と言った。
オレは「まぁ、昨日のクライアントと友達になったよ」と言った。ミズナは「え、すごい」と言った。モヤシは「え、本当に?」と聞いた。
オレはスマホの写真を見せた。2ショットで写っている。クコは「すごい」と言った。モヤシは「そこまでの信頼関係が築けるとは。さすが、カワヲロ」と言った。
オレは「まぁ、付かず離れずで行くさ。担当は、引き続きモヤシな。了解を取った」と言った。モヤシは「え、僕でいいの?」と聞いた。
オレは「もちろんさ。オレがサポートするので、思う存分、やってくれ」と言った。モヤシは「分かった。ありがとう」と言った。
クコは「カワヲロはやり手やな。さすがやわ」と言った。オレは「おだてても何も出ないぞ」と言って笑った。
もっとも、逆にビールと刺身を出している訳だが。
ミズナは「カワヲロに付いていこう。営業部は安泰だ」と言った。オレは「まぁ、オレに付いて来い」と言って笑った。
モヤシは「カワヲロに付くと安心して仕事ができるね」と言った。オレは「思いっきりやってくれ」と言い、ビールをクイッとひと口呑んだ。
クコは「会社、辞めないでよ」と言った。オレは「もちろん。解雇されない限り、辞めない」と言った。
モヤシは「カワヲロは仕事ができるから、声、かかっていない?」と聞いた。オレは「今のところは。条件が良いところから、お誘いがあったら、なびくかもね」と言って笑った。
ミズナは「それだけは、死守しないと」と言った。モヤシは「本当に。そうしないと」と言った。
オレは「まぁ、今すぐ、どうこうはないね。月曜日から、また、仕事を頑張るよ」と言った。
モヤシは「僕らも頑張ろう」と言った。ミズナは「うん。頑張る」と言った。クコは「私は程々に頑張る」と言った。
この先も、皆で呑めるだろうか。それは分からないが、月曜日から、また頑張るのである。
カフェの店員
3ヶ月後。
今日もオレは、会社で仕事をしている。が、少しずつ、小説の執筆をする時間が増えてきた。仕事に支障をきたしていないので、誰も文句を言わないが。
オレにも上司がいるが、今ののところは何も言われていない。営業部は成績が良い。このまま進むのである。
ある時。
オレは最近、フラッと外に出る事がある。毎日ではないが、ある、カフェに通っている。
個人経営のカフェで、会社から徒歩5分の場所にある。古民家風の建物で、カウンター席が7席、テーブル席が3席ある。
美人のオーナーと美人の店員。男性客の方が多い。オレもその1人。美人を見に行くのだ。
カフェに入ると「いらっしゃい」と言われた。声の主は、ホルン。オーナーだ。オレは「いつものでお願いします」と言った。ホルンは「少々、お待ち下さい」と言った。
ほどなくして、店員が持ってきた。名前はライチ。やはり、ホルン同様、美人だ。オレはスマホと無線キーボードを出して仕事を開始した。もっとも、これは副業である。
カフェは7時から16時までだが、15時を超えると、ほぼ、客がいない。オレの予想だが。この時間に行くと、客があまりいない。
ホルンは「スマホで何をされているのですか?」と聞いた。オレは「小説の執筆ですね。楽しいですよ」と言った。ホルンは「え、小説の執筆か。難しそう」と言った。ライチは「そうでもないですよ。私も、小説の執筆をしています」と言った。
オレは「え、ライチさんも小説の執筆をされているのですか?」と聞いた。ライチは「はい。小説のネット販売をしています」と言った。
オレは「え、それはすごい。私はまだ、小説の執筆をしているだけです。そのうち、小説のネット販売をしようと思っていました」と言った。
ライチは「簡単ですよ。今すぐ、販売しましょう」と言い、教えてもらった。あっけなく、販売が始まった。オレは「今日からオレも小説家か」と言った。ホルンは「おめでとう」と言った。オレは「ありがとう」と言った。
ライチは「私、ここの給料より儲かっていますよ」と言った。カフェの給料を知らないので、何とも言えない。が、カフェで働くという事は、小説のネット販売だけでは、無理って話か。
ホルンは「私も始めようかな。カフェだけでは不安なので」と言った。ライチは「オーナー、私がお教えします」と言った。ホルンは「分かった。ありがとう」と言った。
16時前になり、オレは「今日は帰るね。また来るよ。ライチ、ありがとう」と言った。ライチは「また来てね。分からない事があれば聞いてね」と言った。オレは「分かった。その時は、頼んだ」と言った。
サクッとデビューしてしまった。が、すぐに売れるとは限らない。引き続き頑張るが、3ヶ月後、オレは会社を退職した。
上司や部下から、引き止められたが、オレは小説の世界に入った。後悔はない。今日からオレは、専業の小説家だ。スマホで稼ぐ。それしかない。
退職はしたが、引っ越しをしていない。今のマンションで暮らす。変わったのは、職業だけだ。あとは、何も変わらない。
ある日。
オレは今、毎日、15時から16時までカフェにいる。ホルンのカフェだ。ホルンはもちろん、ライチはオレが退職した事を知らない。オレは私服だが、会社員時代も、私服だ。謝罪の時はスーツを着るが、それ以外は私服だった。
ホルンは「いつもありがとう。最近、何かあった?少し、ゆったりとした表情をしているので」と言った。オレは「あ、会社、辞めたよ。今は専業の小説家だね」と言った。ライチは「え、それはすごい。いよいよ、小説の世界に来たか」と言った。
オレは「そう。ライチと同じかな。まぁ、ライチは兼業だけど」と言った。ライチは「専業はリスクがあるね。カフェで働きながら、小説の執筆をする方がメンタルが安定するよ」と言った。
ホルンは「食べていけるの?」と聞いた。オレは「いや、まだ、小説の収入はないよ。貯金を崩しているね」と言った。ホルンは「なるほど。ウチで良ければ働く?人手が必要なので」と言った。
オレは「ありがとう。でも、オレは小説家で生きたいので、他の事はしたくないよ」と言った。ホルンは「分かった。では、コーヒーを無料で飲んでいいよ。毎日、15時に来る事」と言った。
オレは「え、お、おう。ではそうさせてもらう。ありがとう」と言った。ホルンは「私は17時から3時間程度、小説の執筆をしているよ。晩御飯も用意するので、それを食べる事」と言った。
オレは「え、いいの?」と聞いた。ホルンは「もちろん。文句ある?」と聞いた。オレは「え、ないよ。ありがとう」と言った。
圧を感じるが、まぁ、晩御飯代を節約できる。また、美人と小説の執筆。悪くない。毎日、通い、毎日、小説の執筆。晩御飯も出てくるし、もう、ここに住んでいいかな。
カフェの2階が居住スペースになっていて、2人で暮らしても問題ない。オレは住みたかったが、かと言って、言えない。言われるのを待つだけである。
なんだか"ヒモ"みたいだ。それは避けないといけないか。
オレは百戦錬磨の営業マンだったが、今は見る影なく。ただのシガナイ、小説家だ。それ以上、何もない。
ある日、モヤシから電話がかかってきた。モヤシは「カワヲロ、お疲れさま」と言った。オレは「お疲れ。どうした?」と聞いた。
モヤシは「会社を辞めて少し経つけど、どう?生きているか?」と聞いた。オレは「何とか。貯金を崩しながら、生活をしているよ」と言った。モヤシは「なるほど。奢るから、呑みに行こうよ」と言った。オレは「え、いいのかい?」と聞いた。
モヤシは「もちろん。ミズナとクコを誘うので、久しぶりに4人で呑もう」と言った。オレは「いいね。いつにする?オレはいつでも大丈夫」と言った。
モヤシは「だったら、明日かな。華金だし、夜遅くまで呑める。土日休みだし」と言った。オレは「分かった。場所は?」と聞いた。モヤシは「いつもの居酒屋にしよう」と言った。
いつもの居酒屋というのは、会社から徒歩5分のところにある。オフィス街にあり、ビル群の中で、木造建築の居酒屋である。 個人の居酒屋で、カウンター席はない。テーブル席と個室の座敷がある。個室は3日前までに予約する必要がある。
オレは「了解。では、それでお願い。時間は?」と聞いた。モヤシは「17時30分でどうやろ?ミズナだけ、遅れるけど」と言った。オレは「了解。なぜ、ミズナだけ遅れる?」と聞いた。
モヤシは「あ、言ってなかったかな。カワヲロの後任で、今、ミズナが部長だよ」と言った。オレは「な、なるほど。彼女なら大丈夫だ」と言った。
モヤシは「では明日」と言い、電話を終えた。
ミズナが部長か。彼女に適した、ポジションだろう。オレも任せるとしたら、ミズナしかいないと思っていた。明日、詳しく話を聞こう。
当日。
ホルンのカフェに来た。もう、これは"出勤"だろう。オレは「ホルン、今日は17時で帰るよ。予定があるので」と言った。ライチは「デート?」と聞いた。オレは「いやいや、前の会社の人と呑み会な」と言った。
ホルンは「え、楽しそう。私も参加したい」と言った。オレは「え、まぁ、いいと思うけど。一応、ことわりのメールをしておくよ」と言い、モヤシにメールをした。
その結果、ホルンも参加出来るようになった。オレは「ライチはどうする?」と聞いた。ライチは「私は呑み会が苦手だし、お酒、呑めないから」と言った。オレは「なるほど。では、今度、お茶会でもするか」と言った。ライチは「それだったら全然。美味しい団子を食べながら、お茶を飲みたいね」と言った。
オレは「分かった。今度、スーパーでちょっといい団子を買っていくよ」と言った。ライチは「ありがとう」と言った。
17時の頃。
オレは「ホルン、そろそろ行こう」と言った。ホルンは「分かった。行こう」と言った。ホルンはブルーのワンピース。かなりの美人だ。彼氏は嬉しいだろう。ただ、そんな話は聞いていないので、おそらく、彼氏はいないと思われる。
ただ、いてもおかしくない。まだ、彼氏がいないなら、立候補していいのかも知れない。ちなみにオレは、Tシャツにハーフパンツ。「トレーニングか」と思われる服装である。
17時20分の頃。
店先で待っていたら、モヤシとクコが来た。モヤシは「お疲れさま」と言った。クコは「お疲れさま。お久しぶり」と言った。
モヤシは「そちらの方が?」と聞いた。オレは「そうそう。カフェのオーナーだよ」と言った。
クコは「まぁ、入ろう」と言った。オレらは「そうやな」と言った。
居酒屋に入ると、店員が「いらっしゃいませ、何名様ですか?」と聞いた。モヤシは「5人です。あとから1人、来ます」と言った。
店員は「こちらにどうぞ」と言い、座敷を案内した。6名程度、対応しているか。
あちこちで歓声が聞こえてくる。解放感がハンパないのであろう。
タブレット型のタッチパネルで注文し、ほどなくして品が届いた。
皆、ビールだ。ビールジョッキを持ち、軽くてあてて乾杯した。
モヤシは「それにしても、ホルンさんは、かなりの美人やな」と言った。ホルンは「そうでもないですよ」と照れ笑いした。
クコは「2人は付き合っているの?」と聞いた。オレは「まさか、オーナーと客、そして小説家仲間かな」と言った。
モヤシは「今も小説の執筆を続けているのか?」と聞いた。オレは「もちろん。続けているさ。仕事だからね」と言った。
クコは「仕事は楽しい?」と聞いた。オレは「楽しいよ。家で仕事ができるので」と言った。
モヤシは「でも、部長時代に比べると、少し寂しい気がするね」と言った。オレは「まぁ、それなりに楽しかったな」と言い、鯛の刺身を口に放り込んだ。
クコは「もう、営業マンに未練はないの?」と聞いた。オレは「今のところは、ないね」と言った。
モヤシは「もし、戻りたくなったら言ってね。僕の権限でどうにでもなるので」と言った。
ホルンは「モヤシさんは、偉いさんなの?」と聞いた。オレは「いや、平社員。が、社長の息子だ」と言った。
ホルンは「え、それはすごい」と言った。モヤシは「親父は。僕は偉くないし、すごくもない」と言った。
モヤシは謙虚なヤツだ。この先も、そうであってほしい。クコは「カワヲロの小説、読んでみたいね」と言った。オレは「また、今度な」と言って笑った。
モヤシは「え、今すぐ読みたい」と言った。オレは「まだ完成していないので、完成したら読んでもらおう」と言った。
モヤシは「分かった。期待しているね」と言った。オレは「お楽しみに」と言った。
クコは「2人、中々、お似合いかな。付き合え」と言った。酔っ払いの絡みである。
モヤシは「小説家のカップルでいいやん」と言った。オレは「こら、ホルンに失礼だぞ」と言った。
モヤシは「あ、ゴメン」と言った。クコは「でしゃばってしまった。ゴメン」と言った。ホルンは「いえいえ。大丈夫。私はカワヲロが好きなので。付き合ってほしい」と言った。
オレは「え、オレと?」と聞いた。ホルンは「うん。前から気になっていたよ」と言った。オレは「まぁ、ホルンがいいなら。オレ、貧乏で、小説家でご飯を食べられないかも知れないよ」と言った。
ホルンは「カフェがあるし大丈夫」と言った。オレは「分かった。では友達として付き合おう。恋人になるかどうかは、今後の展開次第で」と言った。
ホルンは「分かった。それで問題ないよ。付き合おう」と言った。オレは「分かった。では付きお会う」と言った。
モヤシは「おめでとう」と言った。クコは「良かった。一安心」と言った。
「聞きづてならないな」と言った。振り返ると、ミズナの姿があった。モヤシは「あ、お疲れ」と言った。クコは「お疲れさま」と言った。
ミズナはタッチパネルでビールを頼み、届いたら、一気に半分ほど呑んだ。
オレは「お、お疲れ。久しぶり」と言った。オレは「ホルン、元、部下のミズナだよ」と言った。ホルンは「ホルンです。こんばんは」と言った。
ミズナは「お疲れさま。初めまして。ミズナです」と言った。オレは「部長だって?偉いさんになったな」と言った。ミズナは「私はこんなモンじゃない。もっと、上を目指すよ」と言った。
モヤシは「どうした、そんなに興奮して」とミズナに言った。ミズナは「実は、カワヲロを、もう1度、営業マンにする」と言った。
クコは「え、まぁ、営業部は人手不足やけど」と言った。ミズナは「それもあるけど、大口のクライアントが、カワヲロの復帰を望んでいて」と言った。
いつかのアセビだ。オレを望んでいるのか。
モヤシは「あ、アセビさんとこか。オレ、担当だけど、僕は役不足か」と言った。ミズナは「大口が解約になると、会社はダメージが大きい。なので、カワヲロ、戻ってこい。副業していいから」と言った。
オレは「なるほど。さて、どうしたものか」と言い、ビールをクイッとひと口呑んだ。ミズナは「ノルマがあるんで、それをクリアしたら、好きにしていいよ」と言った。前と変わっていない。
オレは「なるほど。では、復帰、しようかな」と言った。ホルンは「私はどうなるの?」と聞いた。
オレは「毎日は会えないけど、週末、遊びに行くよ。お互い、自分の家で小説の執筆をしよう」と言った。
ホルンは「そっか。だったら、私、小説の執筆をやめようかな。ぶっちゃけ、カワヲロの気を引く為にしていたけど、それが無くなれば、小説の執筆はしないよ」と言った。
オレは「なるほど。では、ご自由に。ホルンにはカフェがあるので、大丈夫」と言った。ホルンは「そうだね。そうする」と言った。
ミズナは「来週月曜日から来てほしい。それでいいね、ね?」と聞いた。
圧を感じる。
オレは「わ、分かった。では月曜日から働く」と言った。ミズナは「仕事中は敬語で」と言った。オレは「分かった。そうする」と言った。
モヤシは「何だかんだで、カワヲロが戻ってくるのか。嬉しいな」と言った。オレは「また、お世話になる」と言った。
クコは「また、一緒に働けるので嬉しい」と言った。ミズナは「で、ホルンさん、ウチで働く気、ない?」と聞いた。
オレは「え、ホルンをスカウト?」と聞いた。ミズナは「営業部は人手が足りないので、雇いたい」と言った。ホルンは「え、私、カフェを経営しているので」と言った。
ミズナは「会社員の方が稼げるよ。コーヒーを売るより、よほど儲かる」と言った。
もっとも、これはミズナの主観だ。実際は異なる場合もあるだろう。
ホルンは「まぁ、確かにそうだけど」と言った。ミズナは「なので、来月からおいで。営業部でルート営業。新規開拓はないよ」と言った。
オレは「まぁ、初心者に優しい環境ではある。ホルンは「持ち帰って検討します」と言った。
オレは「まぁ、無理するな」と言った。モヤシは「でも、待っているよ」と言った。クコは「一緒に働こう」と言った。
ホルンは「分かった。前向きに検討するよ」と言った。オレは「まぁ、焦るな」と言った。
ミズナは「こちらは来月から来られるよう、手配をしておくので」と言った。ホルンは「わ、分かった」と言った。
ミズナは押しが強い。さて、ホルンはどうするか。それがどうなるか、楽しみではある。
オレと一緒に仕事をするか、はたまた、カフェで頑張るか。
2時間後。
皆、かなり酔っ払っている。ウダウダと世間話。いる意味はない。
オレは「では帰るよ。月曜日からよろしく」と言った。ミズナは「待っているよ」と言った。モヤシは「また、一緒に働ける」と言った。
クコは「楽しみ」と言った。オレだけ1人、店を出た。ホルンは皆と楽しそうだ。言う事なし。
オレはさっさと帰宅し、そして、仕事を再開した。月曜日からは兼業か。得意の営業と、不得意と言うか、どうなるか分からない小説家。
二足のわらじで行く。それしかない。
月曜日。
オレは久々に出社した。皆、「え、部長。お疲れ様です」と言った。オレは「今日からまた、お願いします。私は新参者ですので、お気遣いなく」と言った。
ミズナは朝礼でオレを紹介した。営業部は少し、ざわついた。オレは早速、アセビの会社に行き、オレが専属の担当となった。
アセビは「また、よろしく」と言った。オレは「こちらこそ」と言った。友達関係なので、もはや、敬語は使わない。
アセビは「また、呑みに行こうよ」と言った。オレは「それは、公的に?それとも私的に?」と聞いた。アセビは「それままぁ、私的かな」と言った。
オレは「分かった。では割り勘な」と言った。アセビは「分かった。また、連絡するよ」と言った。オレは「了解」と言った。
オレはとにかくルート営業を頑張った。新規開拓もした。元部長だ、オレは。仕事ができる。周りは「さすが、元部長。仕事ができますね」と言っている。
オレはまた、部長になる。それが夢になっていた。小説家の事はスッカリと忘れ、週末も家で仕事をした。
いつしかホルンのカフェにも行かなくなり、とにかく仕事を頑張った。
ただ、ミズナから座を奪えていない。ミズナは、かなりの強敵だ。ジワジワと頑張ろう。
3ヶ月が経過して。
ホルンが入社した。オレは「ホルン、今日からよろしく」と言った。ホルンは「結局、部長の押しに負けたよ」と言った。部長とは、ミズナの事である。どうやら、説得を続けていたらしい。
オレは「カフェはどうするの?」と聞いた。ホルンは「カフェはライチに任せたよ。今、彼女はオーナーだよ」と言った。
オレは「なるほど。かつての店員が、オーナー。中々だ」と言った。
ミズナは「教育係はカワヲロな。しっかりと指導して」と言った。オレは「承知しました」と言った。仕事中は敬語である。それが、彼女との約束だ。
オレは「ホルン、では外回りに行くか」と言った。ホルンは「うん・・・じゃない。承知しました」と言った。
ホルンは会社員の経験はなく、名刺交換をした事がない。まずはそこから教え、営業のノウハウを教えた。
が、1ヶ月後、ホルンは退職した。やはり営業に向いていなかったか。わずか、1ヶ月で離脱。早すぎる、退職である。
退職後、オレは、なおさらカフェに行かなくなった。ホルンはおそらく、またカフェのオーナーをしているはずだ。
会う気が起きないので行っていない。コーヒーが飲みたくなったら、自販機で買う。100円で飲めるし、スーパーなら、100円未満で買える。
もう、カフェに行く理由はない。元々、コーヒーにこだわりはない。これで十分なのである。
ある時、クコが「カワヲロ、今日って空いている?」と聞いた。オレは「大丈夫。何かあった?」と聞いた。クコは「少し、相談がある」と言った。
オレは「そっか。そこの公園で話すか」と言った。クコは「うん」と言った。
会社から徒歩5分の場所に大型公園がある。無料で利用でき、そしてベンチがたくさんある。コンビニも近くにあり、缶コーヒーを買って、ベンチに座った。
オレは「で、相談とは?」と聞いた。クコは「カフェで働くってどう思う?」と聞いた。オレは「なるほど。カフェで働きたいのか?」と聞いた。
クコは「うん。カフェで働きたい」と言った。オレは「仕事先は見つけた?」と聞いた。クコは「実はホルンに声をかけて、いつでも働けるよ」と言った。
オレは「なるほど。一度、挑戦したらいい。向いているかどうか、わかる」と言った。クコは「分かった。では、退職して、ホルンのカフェで働いてみる」と言った。
オレは「分かった。お世話になったね。最近、行っていないので、また、様子を見に行くよ」と言った。
クコは「ありがとう。これで踏ん切りがついた。もう、会社を辞める」と言った。オレは「お疲れやった」と言った。
1ヶ月後、クコは退職した。明日からはカフェ勤務。ライチとも上手くできるか。
陰ながら、応援したいのである。
共に、暮らす
1年後。
今、オレは営業部長だ。ついに、ミズナを蹴落とした。今、ミズナはオレの部下だ。
「辞める」と言っていたが、オレが説得し、今も一応、働いている。不満はありそうだが、この世は弱肉強食。仕方がない。
オレはまた、かつての席に座り仕事をしている。1番奥のカウンター席だ。また、誰も座らない。オレの指定席になっている。
ある日。
モヤシは「カワヲロ、今日って暇?」と聞いた。オレは「おい、仕事中は敬語だ」と言った。モヤシは「あ、すいません」と言った。
前は敬語を使っていなかったが、今は敬語を使わせている。
モヤシは「今日、ホルンのカフェに行きませんか?クコの仕事ぶりを見に行きたいです」と言った。
オレは「え、行った事ないの?」と聞いた。もっとも、オレも行っていないが。そもそも、まだ続いているのか分からない。
モヤシが知っているので、今もクコはカフェで働いているか。
オレは「よし、行くか」と言った。モヤシは「15時頃、行きませんか?15時の休憩です」と言った。
会社は「15時に休憩してね」というルールはないが、15時に1度、休憩したほうが捗る。
オレは「了解。15時に行くか」と言った。モヤシは「はい」と言った。オレは「今日はそのまま、直帰でいいぞ。どうせ、アポないだろう?」と聞いた。
モヤシは「よくご存知で」と言った。もっとも、メンバーの仕事量を知ってるので、モヤシのスケジュールが分かる。もう少し、頑張ってほしいが。頃合いを見て、言うつもりだ。
15時過ぎ、ホルンのカフェに入った。ホルンは「あ、カワヲロだ。やっと来てくれた」と言って笑った。オレは「ご無沙汰」と言った。
ライチは「いらっしゃい」と言った。オレは「元気そうやな。クコは?」と聞いた。
ホルンは「クコは退職したよ。今、スーパーの店員らしいよ」と言った。モヤシは「え、退職したのか。会いたかったのに」と言った。
オレは「なるほど。どこのスーパーか知っている?」と聞いた。ホルンは「いや、そこまでは。3ヶ月前に退職しているので、もし、気になるなら、電話をしてあげて」と言った。
モヤシは「分かった。一度、連絡してみる」と言った。オレは「で、カフェの経営はどんな?」と聞いた。ホルンは「まぁ、あまり変わらないよ。程良く儲かっているね」と言った。
オレは「それがいいね。ベストだよ」と言った。ライチは「オーナーは、また小説の執筆をしているよ」と言った。オレは「え、そうなの?」と聞いた。
ホルンは「そう。少し、お金儲けできるようになったね」と言った。オレの眠っていた感情が湧きおこる。
オレは「それはすごい。小説、読ませてほしい」と言った。ホルンは「どうぞ」と言い、スマホに小説の画面を表示させ、オレに渡した。
モヤシは「え、スマホでやっているの?」と聞いた。ホルンは「うん。手軽でいいよ」と言った。
モヤシは「僕もやってみようかな」と言った。オレは「小説の執筆はお金がかからないので良い趣味だよ」と言った。
モヤシは「なるほど。趣味を見つけたいって思っていたので、今からスマホで書いてみよう」と言った。
ホルンは「無線キーボードがあると便利なので、今度、一緒に買いに行こう」と言った。モヤシは「喜んで」と言った。
ライチは「皆さん、楽しそうだね」と言った。ホルンは「ライチもする?」と聞いた。ライチは「私は、やめておきます。物語を書くのは、苦手です」と言った。
オレは「確かにそうだ。でも、オレも再開しようかな。本業、安定しているので」と言った。モヤシは「部長も再開か。楽しくなってきました」と言った。
1時間後。ホルンの小説を読み終えた。オレは「なるほど。お金を稼いでいるだけあって、面白い」と言った。ホルンは「え、ありがとう」と言った。
オレは「オレも再開する。とりあえず、今から、何かを書くかな」と言った。モヤシは「完成したら、読ませて下さい」と言った。
オレは「分かった。読んでもらう」と言った。モヤシは「僕も完成したら、読んで下さい」と言った。オレは「分かった。読ませてもらう」と言った。
モヤシは「僕も小説で稼げたりして」と言って笑った。オレは「現実は甘くないぞ」と言った。モヤシは「そうですよね。でも、頑張ります」と言った。
オレは「本業をおろそかにするなよ。評価に影響するぞ。それに、モヤシは次期社長だ。本当は、本業に専念してほしい。オレの座を奪うくらいの仕事をしてくれ」と言った。
モヤシは「承知しました」と言った。
ただ、プライベートは自由だ。仕事時間は、やはり、仕事に専念してほしい。小説の執筆をしてほしくない。今、ノルマを達成しているので、強くは言えないが。
オレは「そろそろ、帰るか。モヤシ、お疲れ」と言った。モヤシは「僕はまだ、いるよ」と言った。オレは「カフェは営業終了している。帰らないと失礼だぞ」と言った。
ホルンは「またおいで」と言った。モヤシは「分かった。また来るね」と言った。ホルンは「小説が完成したら読ませてね」と言った。
オレとモヤシは、カフェを出た。モヤシは「さて、クコに電話をしようかな」と言った。オレは「そうやな。電話をしてやれ」と言った。
モヤシはクコに電話した。「クコ?モヤシやけど」と言った。クコは「モヤシやん。久しぶり。どうした?」と聞いた。
モヤシは「いや、カフェを退職したって聞いたから」と言った。クコは「向いてなかったよ。今はスーパーのレジ打ちをしているね」と言った。
モヤシは「なるほど。今ってどうしている?」と聞いた。クコは「仕事が終わって帰るところ。明日は休みでノンビリするよ」と言った。
モヤシは「良かったらカワヲロと3人で呑みに行かない?」と聞いた。クコは「いいけど、お金がないよ」と言った。モヤシは「それは大丈夫。僕とカワヲロが払うから」と言った。
クコは「やった。お言葉に甘えるよ?」と聞いた。モヤシは「もちろん。奢るよ」と言った。
クコは「ありがとう」と言った。
オレらは合流し、居酒屋に入った。出入り口横のテーブル席に座った。
タブレット型のタッチパネルで注文し、ほどなくして品が届いた。
3人で乾杯した。オレは「仕事はどうなん?」と聞いた。クコは「問題ないよ。毎日、楽しい」と言った。オレは「なるほど。それは素晴らしいと」と言った。
モヤシは「あの頃が懐かしい」と言った。クコは「だね。皆で仕事をしていた時が懐かしい」と言った。
モヤシは「もう、あの時には戻れないかな」と言った。オレは「そうでもないよ。クコが戻りたいなら、動くけど」と言った。
クコは「私はいいや。今の仕事を続けるよ。楽しいので」と言った。オレは「そうだね。楽しく仕事をするのがいい」と言った。
モヤシは「そうだね。それがいいよ」と言った。クコは「ミズナは元気?」と聞いた。オレは「元気やで」と言った。モヤシは「今から呼ぼうか?」と聞いた。
クコは「いいね。久しぶりに会いたい」と言った。モヤシは「分かった。連絡してみる」と言った。
モヤシはミズナに電話した。モヤシは「お疲れさま」と言った。ミズナは「お疲れさま。どうした?」と聞いた。モヤシは「今ってどうしている?」と聞いた。
ミズナは「家にいるよ。ノンビリとしているところ」と言った。モヤシは「今、カワヲロやクコと呑んでいるけど、来る?」と聞いた。
ミズナは「楽しそう。でも、外に出るのめんどくさいので、私は遠慮しようかな」と言った。モヤシは「分かった。また、今度かな」と言った。
ミズナは「何なら、私の家に来る?」と聞いた。モヤシは「え、いいの? そうしたい」と言った。
ミズナは「分かった。待っているね」と言った。モヤシは「では、後ほど」と言い、電話を終えた。
モヤシは「これからミズナの家に行こう。招待してくれるって」と言った。オレは「なるほど。では行くか」と言った。クコは「楽しみ。行こう」と言った。
3人で居酒屋を出た。支払いはオレ。1万円近くした。オレは金を持っているので、何とも表っていない。
オレは「スーパーで酒とお菓子を買って行くか」と言った。モヤシは「そうだね。そうしよう」と言った。クコは「いいね。そうしよう」と言った。
3人でスーパーにい行き、6本パック缶ビールを2セット買った。お菓子を沢山買い、ミズナの家に行った。
行くのは初めてだ。どんな住まいなのか、気になる。
ミズナは5階建の3階のワンルームマンションに住んでいる。築年数が割と新しく、単身の人が多く住んでいるとか。ワンルームなので、そうなるか。
呼び鈴を鳴らし、ミズナがドアを開けた。ミズナは「いらっしゃい」と言った。オレらは「お邪魔します」と言った。
女性の家に入るのは初めて。いい香りがする。
テーブルを囲み、オレは缶ビールの蓋を開け、皆にお酌した。モヤシがオレにお酌をした。
グラスを軽くあてて、乾杯した。ミズナは「クコ、久しぶり。元気そう」と言った。クコは「久しぶり。ミズナも元気そう」と言った。
ミズナは「仕事を頑張っているよ。あと、小説の執筆も」と言った。オレは「え、小説の執筆をしているの?」と聞いた。ミズナは「そう。試しにやってみたら、楽しい」と言った。
オレは「なるほど。仲間か」と言った。モヤシは「2人は頑張るね」と言った。オレは「まぁ、仕事、第一かな」と言った。
モヤシは「まぁ、僕も小説の執筆をしているよ。まだ、完成していないけど」と言った。
クコは「私もやろうかな」と言った。オレは「お、いいね」と言った。ミズナは「だったら、今から執筆会かな」と言った。
オレは「いいね」と言い、ビールをクイッとひと口呑んだ。
皆で、小説の執筆をした。楽しいひととき。
2時間補ど経過して。
今日は華金だ。皆、明日は休み。ゆっくり出来るのである。モヤシとクコは、寝だした。フローリングに横になっている。
ミズナは「カワヲロは彼女いる?」と聞いた。オレは「いないよ。募集中」と言って笑った。ミズナは「私、立候補しようかな」と言った。
オレは「え、オレが好きなの?」と聞いた。ミズナは「そう。カワヲロが好き。付き合ってほしい」と言った。オレは「まぁ、いいけど。オレ、仕事を辞めるかもよ」と言った。ミズナは「え、辞めるの?」と聞いた。オレは「そう。また、小説家になろうかな」と言った。
ミズナは「なるほど。大丈夫。私が支える」と言った。オレは「まぁ、小説で食べるほど、稼いだら、辞めるかな。いつになるか分からないけど」と言った。
ミズナは「分かった。では、それでお願いします」と言った。オレは「分かった。では付き合おう」と言った。モヤシは起き上がり、「2人ともおめでとう」と言った。オレは「聞いていたのか」と言った。モヤシは「ゴメン、聞くつもりはなかったけど、聞いてしまった」と言った。
オレは「まぁ、いつかは知れ渡る事だけどね。社内で噂なるだろうし」と言った。モヤシは「そうだね。でも、僕は言わないよ。ここだけの秘密にしておく」と言った。ミズナは「そうしてね」と言った。
モヤシは「僕は、口が固い」と言った。オレは「了解。では、それで頼んだ」と言った。
社内恋愛。よくある、話だ。禁断の恋か。それは分からないが、恋人と一緒に働く・・・。実に窮屈だ。どうするか、本気で考えないと。
22時近くまで呑み会をして、解散となった。皆、それぞれ、家に帰った。が、オレは残っている。ミズナとは恋人同士。夜遅いからって、何の問題もない。オレらは2人で小説の執筆をした。
ミズナは「彼氏と小説の執筆・・・。悪くないね」と言った。オレは「確かに」と言った。もっとも、オレは家で小説の執筆をするのが、1番、捗る。今日はまぁ、いいだろう。
ミズナは「私ら、結婚前提かな?」と聞いた。オレは「もちろん。そうなるさ。ミズナを守るよ」と言った。ミズナは「ありがとう」と言った。オレは「2人で生きていこう」と言った。ミズナは「うん」と言った。
オレは朝方までミズナの家にいて、そのあと、始発で家に帰った。一睡もしていない。帰ってからシャワーを浴びて、寝た。
ハッとして起きたのは、16時頃。もう、土曜日は終わる。平穏な土曜日。そして、日曜日。ひたすら小説の執筆をしていた。
これから、土日はデートをするのだろうか。憂鬱だ。オレは家で過ごしたい派。外に出るのはめんどくさい。ただ、ミズナがそれを望んだら、応えないといけない。
それを考えていた。
しばらくして。
やはり、オレとミズナの交際が噂された。モヤシは言っていないが、オレらの態度で分かるのか。「部長、ミズナと付き合っていますか」と直球の質問はされないが、皆、そういう目で見ている。
ある日の朝礼で。
始業時、必ず、朝礼がある。挨拶は上長がする。すなわち、オレだが。オレはこう言った。
「皆さん、おはよう。今日も始まった。張り切っていこう。それと、私とミズナの関係だが、皆が噂しているように、私はミズナと付き合っている。公私混同はしていないつもりだ。これで皆、スッキリしただろう」と言った。
メンバーはどよめいている。
オレは「恋人がいない人は、頑張って見つけろ。人生が楽しくなるぞ」と言った。
皆「はい」と言った。
オレは「では、今日も頑張ってくれ」と言った。皆「はい」と言った。そのあと、皆、外回りに出かけた。オープンにした方が、仕事がしやすい。堂々と出来る。秘密にするのはシンドイ。これがベストだ。
モヤシは「とうとう、言いましたか」と言った。オレは「まぁ、そうだが」と言った。モヤシは「僕、言っていませんよ」と言った。オレは「分かっている。さ、お前も外回りに行け。まだ、ノルマを達成していないよ」と言った。モヤシは「は、はい。行ってきます」と言った。
社内はオレ1人。誰もいない。オレは小説の執筆をした。部長職は、案外、暇だ。ひたすら小説の執筆。重役の会議があれば参加し、意見を述べる。そんな対応だ。
ある日。
オレは人事部長に呼ばれた。オレは「人事部に行き、人事部長に会った。人事部長室で「カワヲロさん。ミズナさんとの件です」と言った。
オレは「はい。どうかされましたか?」と聞いた。人事部長は「一部、不満が出ていまして」と言った。オレは「なるほど。それで、どうしろと?」と聞いた。
人事部長は「どちらかが退職されるか、交際をやめるかの二択です」と言った。オレは「分かりました。では、私が退職します」と言った。人事部長は「え、そうなのですか?」と聞いた。オレは「はい。もう、この会社に未練はありません」と言った。
人事部長は「そうですか。分かりました。では、退職を受理します。後任は、こちらで決めますので」と言った。オレは「分かりました。おせわになりました」と言った。
一体、誰が不満なのか。それは分からないが、後任はモヤシになった。モヤシは「カワヲロ、ゴメン」と言った。オレは「え、何が?」と聞いた。
モヤシは「実は、人事部に不満を言ったのは僕だよ。実は、営業部長になりたいと思っていて」と言った。オレは「な、何・・・。お前だったか」と言った。
モヤシは「ゴメン」と言った。オレは「分かった。まぁ、そんな人と付き合う義理はないね。もう、付き合わないよ」と言った。
モヤシは「分かった。お元気で」と言った。
1ヶ月後、オレは退職した。また、それを追うように、ミズナも退職をした。これで、モヤシと永遠にお別れか。
それは分からない。
ミズナは「私ら、これからどうする?」と聞いた。オレは「まぁ、何とかなるよ。オレは小説家になる。小説のネット販売をするさ」と言った。
ミズナは「分かった。私が支える。似たような職種を探すよ。カワヲロは、思う存分、小説の執筆をしてくれていいから。これはカワヲロの仕事ね」と言った。オレは「分かった。ありがとう」と言った。
ミズナは「さて、いつまでも引きづらず、頑張ろう」と言った。オレは「お、おう。でも、オレが負担になったら、いつでも別れていいから。ミズナの人生、まだまだ、これから」と言った。
ミズナは「分かった。その時は言うよ」と言った。オレは「それでOKだ」と言った。ミズナは「どうせなら、引っ越したいね。どこか、遠くに行って、そこで2人でひっそりと暮らしたい」と言った。
オレは「いいね。ネットで探してみるか」と言った。ミズナは「そうだね。今から調べようか」と言った。
オレとミズナは、ネットで探した。もう、これは移住だ。色々と調べると、咲ノ町(さくのちょう)を見つけた。
咲ノ町は、綺麗な海が見える町。観光地が沢山あり、年中、観光客が多い。中でも海水浴シーズンになると、かなり賑わう。栄えた町だ。
オレは「ここ、いいのでは?」と聞いた。ミズナは「確かに。一度、行ってみようか」と言った。オレは「そうだね」と言った。
咲ノ町は、高速鉄道で3時間。オレとミズナは、最後尾の2人席に座った。窓際にオレ、通路側にミズナだ。コンビニで買った、缶ビールで乾杯し3時間の旅に出た。
ミズナは「ドキドキするね」と言って笑った。オレは「え、そっか。オレは何とも思わないけど」と言って笑った。ミズナは「楽しい旅にしよう」と言った。オレは「そうだね」と言った。
ミズナは「色々と見よう」と言った。オレは「了解」と言った。
3時間後、咲ノ町に着いた。駅を出ると、オーシャンビュー。駅から徒歩5分でビーチ。とりあえずビーチのベンチに座り、先ほど寄った、スーパーで缶チューハイを買い、また乾杯した。
オレは「ここ、いいかも」と言った。ミズナは「私もそう思う」と言った。オレは「ここにするか」と言った。ミズナは「そうだね。ここにしよう。私、さっき行った、スーパーで働くよ。パートを募集しているみたいなので」と言った。
オレは「分かった。オレは小説家で頑張る。いつか、ミズナが働かなくて済むように稼ぐ」と言った。ミズナは「分かった。それでお願い」と言った。
オレは「さて、ホテルに行って、仕事をするか」と言った。ミズナは「私は履歴書を書いて、面接に行ってくる」と言った。
こうして、新たな人生が始まった。さて、どうなるか。期待と不安。ミズナと歩いて行く。
1年後。
オレは小説のネット販売で生計を立てている。咲ノ町で暮らしている。ミズナはスーパーで働いている。そして、オレらは結婚した。
お互いの両親と兄妹をだけの静かな結婚式。披露宴はせず、食事会をした。場所は咲ノ町の教会。特に新婚旅行をせず、また、日常の始まりだ。
今、ミズナは仕事が終わってから、オレと一緒に小説の執筆をしている。小説家の夫婦だ。
ちなみに、家事全般はオレがしている。在宅ワークなので当たり前だ。それで上手くいっている。順風満帆だ。まさか、2人とも退職して、咲ノ町に住むなんて。誰が想像しただろうか。これがたどり着いた道だ。
ある日、クコから電話がかかってきた。「カワヲロ、お疲れさま」と言った。オレは「お疲れ、どうした?」と聞いた。
クコは「今ってどうしている?かなり話していないので」と言った。オレは「会社を退職して、ミズナと結婚して、咲ノ町という所に住んでいるよ」と言った。
クコは「え、そうなんか。気軽に会えない場所?」と聞いた。オレは「そこから高速鉄道で3時間かな」と言った。クコは「なるほど。日帰りできる距離か」と言った。
オレは「そうだね。一度、来る?」と聞いた。クコは「そうだね。でも、リモートでどうやろ?」と聞いた。オレは「いいよ。そうしよう」と言った。
クコは「ではまた、予定を合わそう。モヤシも参加させるので」と言った。オレは「モヤシか。裏切り者の」と言って笑った。クコは「かなり反省しているよ。一度、会おうよ」と言った。オレは「分かった」と言った。
さて、いつ会うのか。それはまぁ、その後だった。
新しい道
咲ノ町に移住して3年。毎日、楽しく過ごしている。オレはいま、小説のネット販売のかたわら、出版社とも仕事をしている。小説のネット販売と出版社との仕事で、かなり潤っていた。まさか、営業マンから小説家へ。誰が想像出来ただろうか。
ミズナはスーパーで働いている。オレは「無理して働く必要はないよ」と言っているが、気分転換になるらしい。今もスーパーで働いている。
美人で、仕事が出来る。いつしか、正社員になっていた。責任者でもあり、他の社員はもちろん、パート勤務の人に指導している。営業もそうだが、スーパーみたいな職場でも活躍。キャリアウーマンだ。
ある日。
ホルンから電話がかかってきた。「カワヲロ、お疲れさま」と言った。オレは「お疲れ。どうした?」と聞いた。ホルンはカフェのオーナーだ。今も経営出来ているか。恋人前提で付き合っていたが、今は当然、付き合っていない。
ホルンは「実は」と前置きをして「カフェ、閉店したよ」と言った。オレは「え、そうなのか」と言った。ライチはどうなる?」と聞いた。カフェの店員だ。
ホルンは「ライチは、モヤシの会社で働いているね」と言った。オレは「え、そうのなのか」と言った。ホルンは「小説のネット販売だけで行くよ」と言った。オレは「え、行けるの?」と聞いた。
ホルンは「何とか。頑張っているね」と言った。オレは「なるほど。出版社の担当を紹介しようか?オレは小説のネット販売と出版社と仕事をしているので」と言った。
ホルンは「え、ありがたい」と言った。オレは「でも地元の出版社なので、こっちに1度、来てもらう必要あるよ」と言った。
ホルンは「場所は?」と聞いた。オレは「咲ノ町だね。そこから高速鉄道で3時間だよ」と言った。ホルンは「分かった。絶対に行く」と言った。オレは「また、連絡する」と言い、電話を終えた。
オレは早速、出版社に連絡をした。担当はヤマユリである。
ヤマユリは、スラッとした細身の女性。丸顔の茶髪で、ショートカットの美人である。オレは「お世話になります」と言った。ヤマユリは「お世話になります。どうかされましたか?」と聞いた。
オレは「実は、1人、小説家を紹介したくて」と言った。ヤマユリは「そうですか。助かります。今、小説家さんを募集していますので」と言った。
オレは「女性です。小説のネット販売で生計を立てています」と言った。ヤマユリは「なるほど。実績ありですね」と言った。オレは「そうなります」と言った。
ヤマユリは「でしたら、1度、お会いしたいですね。弊社にお越し頂く事は出来ますか?」と聞いた。オレは「大丈夫です。本人に伝えます」と言った。ヤマユリは「ありがとうございます。でしたら、明日の15時でどうでしょうか?」と聞いた。
オレは「大丈夫です。何としても連れて行きます」と言った。ヤマユリは「ではお待ちしております」と言った。オレは「こちらこそ、お願いします」と言い、電話を終えた。
オレはホルンに電話した。オレは「ホルン、明日の15時からな。14時に着くように来てくれ」と言った。ホルンは「分かった。ありがとう」と言った。
オレは「遅れないでね。先方を怒らすので」と言った。ホルンは「もちろん。14時までに行くよ。カワヲロの家に、とりあえず行けばいいかな?」と聞いた。オレは「そうだね。一緒に行くので、オレの家に来て。住所、メールで送るので」と言った。
ホルンは「分かった。では、明日」と言い、電話を終えた。
はたして、今回の面談は、上手く行くか。それが疑問だが、答えは明日、分かる。
その日の夜。
ミズナが帰ってきた。オレは「お疲れ」と言った。ミズナは「疲れたよ。いつも家事、ありがとう」と言った。オレは「いやいや。在宅ワークなので当然さ」と言った。
ミズナは「明日は休みだし、のんびりとしよう」と言った。オレは「明日、出版社に行くよ。ホルンを紹介する」と言った。
ミズナは「ホルン?あ、カフェのオーナーか」と言った。オレは「そう。カフェを閉店して、小説の執筆で生きているらしい。なので、紹介する」と言った。ミズナは「そっか。私も行こうかな」と言った。
オレは「分かった。では3人で行こうか」と言った。ミズナは「ついでに私も売り込もう」と言って笑った。オレは「あ、確かにね。ミズナも紹介しよう」と言った。ミズナは「ありがとう」と言った。
当日。
14時前にホルンが来た。ホルンは「ここはいい町だね。海が近いし」と言った。オレは「そう。海が好きなら、この場所、あり」と言った。
ミズナは「いらっしゃい」と言った。ホルンは「お邪魔します」と言った。ホルンは「今日はお願いします」と言った。オレは「まぁ、緊張するな。何とかなるさ」と言った。ミズナは「私も紹介してもらうので、何だか、緊張するね」と言って笑った。
オレは「まぁ、2人ともリラックスで」と言った。2人は「分かったよ」と言った。
14時20分頃。オレの家を出た。出版社は歩いて20分。少し早いが、余裕を持って出発した。
ミズナは「どうかな。上手くいくかな」と言った。ホルンは「本当に。上手くいくかな」と言った。オレは「まぁ、普段通りでいいよ。怒られに行く訳じゃないし」と言った。
2人は「そうだね」と言った。
14時40分頃、出版社に着いた。
応接室に案内された。10畳くらいの広さで、中央に大きなデスクがある。それを囲うように5脚のチェア。それに腰掛けて待っていた。
15時前、ヤマユリが来た。今日も美人である。
ヤマユリは「今日はありがとうございます。奥様もご一緒ですか」と言った。オレは「実は、嫁さんもどうかなと思いまして」と言った。
ヤマユリは「そうですか。それはありがとうございます」と言った。オレは「こちらがホルンです。電話で言った人です」と言った。
ヤマユリは「ヤマユリです。お願いします」と言い、名刺を出した。2人は受け取った。
ヤマユリは「早速ですが、テストを受けて下さい。それで判断します」と言った。ホルンは「え、テストですか?」と聞いた。
ヤマユリは「はい。テストを受けて頂きたいです」と言った。オレは「私の時と一緒ですね」と言った。こうなる事は分かっていたが、あえて2人に伝えていなかった。
ミズナは「分かりました。テストを受けます」と言った。ホルンは「私もお願いします」と言った。ヤマユリは「自由テーマで構いません。3万字程度でお願いします」と言った。
2人は「分かりました」と言った。ヤマユリは「期待しています。頑張って下さい」と言った。ミズナは「頑張ります」と言った。ホルンも「頑張ります」と言った。
ヤマユリは「期限は1週間です。提出は、メールの添付ファイルでお願いします」と言った。2人は「分かりました」と言った。
30分の面談のあと、オレらは家に帰った。オレは「明日から頑張るとして、今日は決起集会な」と言った。ミズナは「分かった。では明日から頑張ろう」と言った。ホルンは「私は帰るよ。家でガッツリと仕事をするね」と言った。
オレは「わ、分かった。でも、1週間、ここで仕事をするといいよ」と言った。ホルンは「え、いいの?」と聞いた。ミズナは「私、1週間、仕事を休むので、一緒に頑張ろう」と言った。
オレは「なので、今日は決起集会。酒でも呑もう」と言った。ホルンは「分かった。では、1週間、お世話になります」と言った。
3人生活。はたして、どうなるのか。
翌日から、2人は一生懸命、仕事をしていた。オレは見守りながら、仕事をしていた。オレも締め切りがある。遊んでいる場合じゃない。
昼夜問わず、ひたすら2人はし仕事をしていた。必死の形相だ。話しかけるのを躊躇する、集中力。オレは静かに仕事をしていた。
そんな日を過ごして1週間。2人は小説を提出した。はたして、どうなるか。2人とも合格なら良いのだが。
3日後。
ヤマユリから電話がかかってきた。ヤマユリは「カワヲロさん、お世話になります」と言った。オレは「お世話になります」と言った。ヤマユリは「お二人は今、そこにおられますか?」と聞いた。オレは「います。代わります?」と聞いた。
ヤマユリは「スピーカーにしてもらえますか?お二人とお話をさせて頂きます」と言った。オレは「分かりました」と言い、スピーカーに切り替えた。
ヤマユリは「結論から申し上げます。ミズナさんは合格、ホルンさんは不合格になります」と言った。オレは「そうですか。ホルンはダメですか?」と聞いた。ヤマユリは「申し訳ありません。ホルンさんは不合格です」と言った。
ホルンは「分かりました。この度は、ありがとうございました。私は失礼します」と言った。ホルンは荷物をまとめて出て行った。
ヤマユリは「ミズナさん、会社を退職する事は可能ですか?」と聞いた。ミズナは「大丈夫です」と言った。ヤマユリは「では、連載小説の担当をして頂きます」と言った。
ミズナは「喜んで。お願いします」と言った。ヤマユリは「詳細をメールでお送りします。期限は毎週、金曜日になります」と言った。
ミズナは「分かりました。対応します」と言った。ヤマユリは「それでは失礼します」と言い、電話を終えた。
オレは「ミズナ、良かったな」と言った。ミズナは「ありがとう。でもホルンが・・・」と言った。オレは「今から追いかけるか」と言った。ミズナは「そうだね。まだ、そんなに離れていないと思うし」と言った。
オレらはホルンを追いかけた。ホルンはビーチのベンチに座っていた。オレは「ホルン」と言った。ホルンは「え、どうした?」と聞いた。ミズナは「残念やったね」と言った。
ホルンは「でも自分の実力が分かったよ。それで十分」と言った。オレは「小説のネット販売で成功しているから、自信を持って」と言った。ホルンは「ありがとう。実は、小説のネット販売で生計を立てているのは嘘。小遣い稼ぎ程度。これを機に、もう、小説家は辞める」と言った。
オレは「なるほど。次、どうするの?」と聞いた。ホルンは「カフェの仕事を探すよ」と言った。オレは「なるほど。経験を活かせる訳か」と言った。
ホルンは「うん。もう、小説家は辞める」と言った。オレは「お疲れやった。オレの家で呑まないか?」と聞いた。ホルンは「いや、家に帰るよ。呑みたい気分でないので」と言った。
オレは「分かった。では、ここで」と言い、オレらは家に帰った。
ミズナは「なんか、複雑な思いかな」と言った。オレは「まぁ、仕方ないよ。ミズナ、これから忙しくなるぞ」と言った。ミズナは「そうだね。頑張るよ」と言った。オレは「一緒に頑張ろう」と言った。
ミズナは「うん」と言った。
ミズナは仕事を辞め、本格的に小説家になった。小説家のカップル。はたして、どうなるか。
ある時。
オレは「さて、自分の仕事部屋を探すかな」と言った。ミズナは「え、ここでいいのでは?」と聞いた。オレは「いや、どうも気が散る。近所で賃貸マンションを借りて、そこで仕事をするよ」と言った。
ミズナは「分かった。ぶっちゃけ、私も1人の方が落ち着く」と言って笑った。オレは「分かった。では、オレは賃貸マンションを借りる」と言った。
ミズナは「夜は帰ってきてね」と言った。オレは「もちろん。そのつもり」と言った。
オレは賃貸マンションを借りた。高台にある、賃貸マンション。海を見下ろせる。絶景だ。最初は、夜になると家に帰っていたが、めんどくさくなって、このマンションにいる。
ミズナと毎日、電話をしていたが、ここ最近は、話していない。オレは「一旦、帰ってみるか」と言った。もっとも、誰も聞いていない。自分に向けた、言葉だ。
家に帰ると、すごい事になっていた。ゴミが散乱、洗濯物が山積み。ダイニングテーブルの上は、食べ終えたカップラーメン、それと缶ビール。すごい。
ミズナは「あ、おかえり。散らかっているやろ」と言って笑った。オレは「少し、掃除をする。ミズナは仕事をしておいて」と言った。ミズナは「ありがとう」と言った。
1時間程度で終え、清潔空間へとなった。オレは「仕事、忙しい?」と聞いた。ミズナは「かなり忙しい。身の回りの世話が出来ないくらい。小説家は大変だ」と言った。
オレは「分かった。では、また、ここに戻ってくる。オレが身の回りの世話をする」と言った。ミズナは「え、カワヲロも仕事をしないと」と言った。
オレは「仕事より、嫁さんが大事な。オレは大丈夫。これから、毎日、帰るので、仕事だけしてくれたらいいから。頑張れ」と言った。
ミズナは「ありがとう。助かる」と言った。オレは「もし、限界なら小説家を辞めていいよ。オレの収入だけで、十分、暮らせるので」と言った。
ミズナは「ありがとう。もう少し頑張りたい」と言った。オレは「おう、頑張れ」と言った。
それから毎日、19時になったら家に帰ってきた。晩御飯の用意をしたり掃除や洗濯。オレは主夫みたいになっている。買い物もするし、仕事に専念してもらうようにした。
オレはオレで、忙しい。が、オレは軌道に乗っているので、それほど、切羽詰まっていない。これで、上手く回る。これでいい。
ある日。
ヤマユリから電話がかかってきた。「カワヲロさん、お世話になります」と言った。オレは「お世話になります」と言った。
ヤマユリは「大変、申し上げにくいのですが」と前置きをして「来月の契約更新の件ですが、満了で契約の更新はしません。申し訳ありません」と言った。オレは「なるほど。分かりました。私もその方が嬉しいです」と言った。
ヤマユリは「え、何かありましたか?」と聞いた。オレは「ありましたね。ただ、その理由を言う理由はありません。家庭の問題ですので」と言った。
ヤマユリは「そうですね。では来月までお願いします」と言った。オレは「分かりました。では、来月までお願いします」と言った。
15分の電話の後、ミズナに言うか悩んだ。しかし、余計な心配をさせたくないので、何も言わなかった。オレには小説のネット販売がある。これで十分だ。もう、出版社と仕事はしない・・・のか。
しばらくして。
ミズナは「カワヲロって、出版社と仕事をしていないって?」と聞いた。オレは「バレたか」と言って笑った。ミズナは「ヤマユリさんから聞いた。教えてほしかったね」と言った。オレは「ゴメン。ミズナが気にするかなって」と言った。
ミズナは「夫婦なのだから、隠し事はなしね」と言った。オレは「わ、分かった。ゴメン」と言った。ミズナは「これからは小説のネット販売専門家な?」と聞いた。オレは「そうなるね。地道にやるさ」と言った。
ミズナは「私の収入で食べていけるので、主夫でもいいよ。楽しく暮らしてほしい」と言った。オレは「分かった。主夫をしつつ、小説のネット販売を頑張るよ」と言った。
ミズナは「事務所代わりに使っている、カワヲロのマンションは解約な。また、一緒に仕事をしよう」と言った。オレは「わ、分かった。解約する」と言った。
また、2人で仕事。まぁ、それもいいだろう。収入は、ミズナの方が高い。指示に従うのである。
しばらくして。
オレらは今、元通り、1日中、一緒にいる。最初はやはり、集中出来なかったが、もう、慣れた。そもそも、小説のネット販売は締め切りがない。気が楽だ。
ミズナは必死で仕事をしている。ミズナは何をしても、才能があるようだ。すばらしい。オレは営業センスはあるが小説家の才能はまぁ、ミズナに比べてない。努力型だ。天才に追いつく事は出来ない。
オレは「さて、そろそろかな」と言った。ミズナは「え、どうした?」と聞いた。オレは「地元の会社で営業マンをしようかな。それがいいかなって。小説家は向いていないよ。営業マンの方が向いているかなって」と言った。
ミズナは「私は今のままでいいけど、カワヲロが望むなら、応援するよ」と言った。オレは「分かった。では、営業マンに戻る」と言った。
ミズナは「頑張ってね。応援しているよ」と言った。オレは「ありがとう」と言った。ミズナは「いつでも辞めていいからね」と言った。
オレは「分かった。とりあえず、働いてみる」と言った。
そしてオレは、小説家を辞めて、地元の会社で営業マンになった。営業は慣れている。前と同じ、ルート営業。ひたすらノルマをクリアしていき、新規開拓もした。
毎日、充実。もう、小説の執筆の事は忘れていた。
これでいい。
平日は頑張り、休日は家で呑む。ミズナは横で頑張っている。ミズナは「営業マンは気楽でいいな」と言って笑った。オレは「ミズナもまた、営業の仕事をしたら?」と聞いた。
ミズナは「え、それは・・・。小説家の方がいいね」と言った。オレは「だったら、小説の執筆を頑張れ。オレは今から、寝るので」と言った。ミズナは「いいな。私も休もうかな」と言った。
オレらは今、土日になると酒を呑んで宴会をした。ミズナは土日、休む事にした。これでいいだろう。
そんな日を過ごして1年。またオレは、営業部長になった。「鬼の部長」と部下は揶揄している。オレはノルマをクリアしている者には新規開拓、クリアしていない者は、鼓舞した。
時に叱る時もあるし、怒る時もある。いつしか「部長はパワハラをしている」と問題になり、今日、オレがどうなるか決まる。
重役の会議で、オレは見事、解雇となった。オレは無職になった。「さて、どうするか」と思った。オレは「とりあえず、高琉疾市に戻るか」と思った。
元々、住んでいた街だ。何年かぶりに帰る事にした。オレはモヤシに電話した。オレは「モヤシ、お疲れ」と言った。モヤシは「カワヲロ、ご無沙汰。その節はゴメン」と言った。オレは「まぁ、それはいいよ。今日は何時に仕事が終わる?」と聞いた。
オレは「19時くらいかな。どうした?」と聞いた。オレは「実は、高琉疾市に来ている。酒でも呑まないか?」と聞いた。モヤシは「いいね。そうしよう」と言った。
オレは「あの居酒屋で待っておく」と言った。モヤシは「分かった。絶対に行く」と言った。オレは「待っているぞ」と言った。
19時前。居酒屋に着いた。会社員時代に、よく利用していた、場所だ。オレは座敷に通され、ビールを呑みながら、モヤシを待った。
19時過ぎ、モヤシが来た。モヤシは「お疲れさま」と言った。オレは「お疲れ。今日はありがとう」と言った。モヤシは「元気ないね」と言った。オレは「まぁ、失業中なので」と言った。
モヤシは「小説の執筆は?」と聞いた。オレは「まぁ、それも辞めたね」と言った。モヤシは「なるほど。また、ウチに来る?求人を出しているよ。平社員だけど」と言った。
オレは「そうだね。お言葉に甘えようかな。いつから?」と聞いた。モヤシは「来週の月曜日からでどうかな?」と聞いた。オレは「分かった。また、お世話になる」と言った。モヤシは「また、一緒に働けるのか」と言った。
オレは「そうなるね。ただ、オレは出世を望まない。本気を出すと、また部長になってしまうので」と言って笑った。
モヤシは「分かった。ではノルマをクリアしたら、好きにしていいよ。また、小説の執筆をしてもいいし」と言った。オレは「分かった。では、そうする」と言った。
モヤシは「楽しみだね」と言った。オレは「また一緒に働こう」と言った。モヤシは「喜んで」と言った。
オレはまた、モヤシの会社で働く。これがオレの運命か。もう、小説の執筆はしない・・・のか。それはまぁ、ゆっくりと考えよう。
咲ノ町に戻ってきた。ミズナに報告する。
ミズナは「おかえり」と言った。オレは「ただいま。少し、話がある」と言った。ミズナは「え、どうした?」と聞いた。オレは「モヤシの会社で働く。ミズナはどうする?」と聞いた。
ミズナは「私は、この町から出ないよ」と言った。オレは「分かった。では"単身赴任"かな」と言った。ミズナは「私ら、離婚しよう。いい機会だよ」と言った。
オレは「離婚か・・・。まぁ、いいが」と言った。ミズナは「なので、出て行ってね」と言った。オレは「分かった。出て行く」と言った。
引っ越しの前日に、ミズナは「お別れ会をしよう」と言った。オレは「いや、もう赤の他人。小説の執筆、頑張って。書店で見かけたら買うので」と言った。ミズナは「分かった。元気でね。応援しているよ」と言った。
オレは「いや、応援はいらない。では」と言い、オレは家をでた。少し、寂しい気持ちもあるが、オレはまた、営業マンで頑張る。
もう、後戻りはしない。それでいいはずだ。生涯独身。誰とも連まない。一匹狼だ。
そんな事を思いながら、オレは窓に映る夕日を見ていた。
