見出し画像

田山花袋『温泉めぐり』を片手に庄内地方へ

作家の田山花袋(たやま・かたい)が名著『温泉めぐり』で訪れた山形県の吹浦(ふくら)に行ってきた。日本海に面する庄内平野の北端。鳥海山のふもとにある小さな村落だ。

ホームから鳥海山がきれいに見えた

田山花袋は吹浦について「茅次瓦甍相接し、半ば漁村、半ば宿駅と言ったような感じ」と記している。茅葺きや瓦の屋根の家々が集まっていたわけだ。少し歩いてみると今もそれなりに家は多い。

鳥海山大物忌神社という、とても古い神社もある。お参りした。

神社から眺めた吹浦の家並み。ちなみにこの神社の本社は鳥海山の山頂(2236m)にある

近くの海岸にある「十六羅漢岩」にも行ってみた。
海岸の岩肌にたくさんの磨崖仏が刻まれている。

田山花袋もここを訪れて「頗る奇である」と書いている。たしかに奇景だ。幕末から明治初めにかけて彫られたものなので、今から150年ほど前になる。『温泉めぐり』が出版されたのは今から約100年前の大正時代。田山花袋は「彫刻した年代はそんなに古くない」と書いている。彫ってから50年程度だったわけだから、もっとくっきりしていたのだろう。その後、波と風雨と吹雪でかなり削られたはずだ。

近くには松尾芭蕉『おくのほそ道』の句碑があった。松尾芭蕉も吹浦を歩いている。

あつみ山や 吹浦かけて 夕すずみ

今回は庄内平野を南下して湯野浜温泉に宿泊した。海岸沿いの温泉街だ。田山花袋は熱海、伊東よりも海山の景色が良いとベタ褒めしている。『温泉めぐり』を読むと田山花袋が大分の別府温泉をものすごく気に入っているのがわかるのだが、湯野浜温泉は「単に風景の点から言えば、別府よりもすぐれているかも知れなかった」と書いている。

温泉街の裏山にある湯野浜温泉神社に上ると、ちょうど桜が散っていた。海沿いの高台にある神社って気持ちいい。以前はここに小学校があったそうだ。

夜は雷雨がすごかった。宿の部屋から稲妻が見えた。

『温泉めぐり』は全国各地の温泉をかなり網羅している。またこの本を片手に、どこか訪れてみたい。気になる温泉には付箋を付けている。
(当文中の引用もこの岩波文庫からです)



いいなと思ったら応援しよう!