ちょっとひと息つきたいあなたへ『のんのんびより』
「どっか美味しいラーメン屋知らない?」
おそらく北海道に住む人間なら、呪文のように聞かされる言葉だ。
私はこの手の質問に答えるのがあまり好きではない。
同じ「ラーメン」という料理であっても、その味は店によって大きく異なる。
それゆえ個人の好みも大きく違い、絶対などあり得ないのだ。
そんな人に自分のお気に入りのラーメン屋を紹介してみても
「なかなか美味しかったよ~」
そう、せいぜい「なかなか」なのだ。
それがわかっているから、迷わず私はカップラーメンにもなっているような有名店を無難に紹介する。
結局のところ、彼らが求めているのはラーメンの味より、大抵北海道の有名店でラーメンを食べたという経験なのだ。
さて前置きが長くなってしまったが、基本的に私は好きなアニメについても人に勧めることはしない。
理由はラーメンと大体同じだ。
しかし、このアニメだけはどうしても紹介したい。
なぜならこのアニメは、心の風邪をひいた私を救ってくれたから。
多忙な日々に追われ癒しが欲しい人、気分が落ち込み何もする気が起きない人、ただぼーっとしたい人、特にそんな方々にぜひ観てほしい。
アニメ『のんのんびより』
紹介させてください。
『のんのんびより』とは
『のんのんびより』原作は、KADOKAWAの『月刊コミックアライブ』にて2009年11月号から2021年4月号まで連載されていた、作者あっとによる日本の漫画作品である。
アニメ作品は、2013年10月から12月まで放送された『のんのんびより』、2015年7月から9月まで放送された2期目作品の『のんのんびより りぴーと』、そして2021年1月から3月まで放送された3期目『のんのんびより のんすとっぷ』の3作品がある。
今回この記事で特におすすめしたいのは、アニメで放映された3作品である。
この物語は全校生徒5人という分校に通う生徒たちの、田舎で生活する日々を描いた一話完結型のコメディ作品だ。
「自分の暮らしている場所は田舎なのかもしれない」という疑問を持ちながらその土地に暮らす少女、そこへ東京から転入生が来るところから物語は始まる。
分校に通う生徒たち、そして彼らを取り巻く地域の人々やあふれる自然、それらの交流をゆったりとユーモラスに描いている。
『のんのんびより』の魅力
全年齢が安心して観られる
普段あまりアニメーション作品を観ない方からすると、ぱっとその絵柄を見ていわゆる「萌え」作品と想像するかもしれない。しかしそれは断じて違う。
私が伝えたいこの作品の大きな魅力の一つは、性的な描写がほぼないことである。
悪いこととは言わないが、可愛らしい女性キャラクターがいるようなアニメ作品には大体入浴や水着、下着をチラ見せするようなシーンが含まれ、視聴者へ性的なものを想起させるような描写がされがちである。
しかし『のんのんびより』では愛らしい女性キャラクターたちが主人公であるにも関わらず、そういった描写が一切ないことで、舞台となっている田舎の自然やそこで生まれるエピソードとの親和性がより高くなっている。
誰にでも安心して勧められる理由もここにある。
映像と音楽の美しさ
また、このアニメ作品の大きな魅力の一つとして、映像と音楽の美しさがある。
舞台となる田舎の森や山の緑、未舗装路の土の質感、川のせせらぎ、虫のざわめき、それらが見事に重なり、まるで自分がそこにいるかのような錯覚を覚えるほどだ。
BGMも作中の雰囲気を決して壊すことのない、静かで心地のよい選曲がなされており、目を閉じていても美しい自然が想い起こされる。
登場キャラクターの個性
分校に通う5人の生徒をはじめ、親や兄弟、地域に暮らす動物までそれぞれが独自の強い個性を持っており、かと言って煩くない絶妙なバランスで描かれている。
個性と個性が不快にぶつかり合うこともなく、心地よく融和しているところが魅力の一つとなっている。
贅沢な「間」
この作品で描かれる「間」は独特である。
会話と会話、風景、あらゆるシーンで贅沢に「間」を設けている。
その「間」が観る人の想像を掻き立て、あるいは気持ちを落ち着かせ、舞台となる田舎の空気をさらに濃くする。
畳みかけるように会話を応酬させるような作品とは全く異なり、やわらかく落ち着いた時がそこには流れる。

『のんのんびより』をおすすめしたい理由
『のんのんびより』の魅力については先ほど説明した通りだが、この作品は特に今何かでつらいと感じている人にこそおすすめしたい。
日々の忙しさで疲れてしまい何かをする気力の無くなっている人、うつ状態の人、嫌なことがあって現実から目を背けたい人。
私自身、過去にうつ病を発症したことがあるが、そんな時に出会ったのがこのアニメだった。外に出ず、本を読む気力もなく、趣味のゲームも出来ず、ただ横になりながら動画を流し見しているような時期だった。
そんな時たまたまこのアニメを観て、気付けば笑っている自分がいた。
観ながら寝ている時もあった。それは決して退屈だからではなく、その作品が醸し出す心地よさによるものだった。
1話観終わるたびに、少し心が温かくなり、どこか優しい気分になっていた。
落ち込んでいる時、気力が無い時、何も力を入れずに観られるアニメ。
こういったアニメはありそうでなかなか無いものだ。
力を入れずに心にほんのりと心地よい熱を残してくれる作品、それがこの作品をおすすめしたい一番の理由である。
今現在元気な人にももちろんおすすめだ。
元気な時には純粋なほのぼのコメディアニメとして十分楽しめるだろう。
最後に
予定していたよりも長文記事になってしまったが、語りたいことはまだまだある。
『のんのんびより』は普段アニメを観ない人、ちょっと癒しが欲しい人、くすりとしたい人、沢山の方々におすすめしたいアニメだ。
2026年2月17日現在『のんのんびより』は、「hulu」「U-NEXT」などの動画配信サービスで観られるようだ。
とても素敵な作品なので、興味があればぜひ観てほしい。
KAWAI
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