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赤ちゃんの異常がわかっても、生まれる前から治療やケアがちゃんと学べたら 


妊娠中から、病気が見えるようになっている

長足の進歩を遂げている現代の胎児超音波検査(写真提供・林伸彦先生)

こんにちは。出産ジャーナリストの河合蘭です。
「超音波検査」は機械の性能が上がっていて、赤ちゃんの病気が発見される率がだいぶ高くなってきました。

海外の超音波と日本の超音波の違い

日本では「おなかだして下さーい」「はーい」という感じでササーッと始まる超音波検査ですが、海外では、「検査をしますか?検査を受けて、赤ちゃんの異常が見つかったら、どこまで知りたいですか?」などと医療者が聞くことが多いようです。
海外の超音波検査は、事前に「病気がかわかるかもしれない」と説明され、ちょっとドキドキして受ける出生前検査のひとつだからです。単に大きさを見るだけではなく、内臓、骨、血管などを見て、さまざまな先天性疾患を早期に発見することを目的としていてます。

「一般的な産科医の妊婦健診で簡単に見る、でも毎回見る」という日本の超音波スタイルは、国際的に見ると珍しいといえます。海外では、超音波検査は妊娠中数回だけ。そのかわり、訓練を受けた専門家の外来で、30分~1時間かけておこなわれています。

こうした国では胎児疾患が見つかる率も高いので、病気が見つかった後の支援体制も発達しています。本来、検査は、検査後のサポートと一体のもので、とても大切なこと。
日本の超音波でも、病気が見えてしまうケースはあるので、私は、こうした支援が全国に早く整ってほしいと以前から思ってきました。


病気が見つかったとき、「見つけっぱなし」にならないために

病気が見つかった妊婦さんが少しでも安心して過ごし、出生後の治療や子育ての準備ができる環境を実現しようと努力している専門家は日本にもいます。

私が先日たずねたのは、海外のような胎児検査を日本でも提供している千葉県・FMF胎児クリニック東京ベイ幕張です。ここでは「口唇口蓋裂」診断された赤ちゃんを妊娠中の妊婦さん・ご家族を対象のための、治療や子育てを学ぶワークショップが開催され、今回で4回目ということでした。

このクリニックで診断された妊婦さんも参加していましたが、首都圏のさまざまな施設で診断され、「SNSでこのセミナーを見つけた」というご家族も多く来ていたようです。

セミナーを主催したFMF胎児クリニック東京ベイ幕張院長の林先生

院長の林伸彦氏は、英国で胎児超音波検査を学び、胎児検査専門のクリニックを開設した産婦人科医の先生です。林先生は、検査だけではなく、「検査のあと」に並々ならぬ情熱を注いできました。クリニックを作る前から、「家族の未来を支える会」という、病気が見つかった妊婦さん・ご家族を支えるNPO法人を立ち上げたりしています。

産科医、助産師、形成外科医、言語聴覚士—専門家チームが妊婦さん家族を囲む

「口唇口蓋裂」は、くちびるや上あごなどに、左右がくっつかなかった部分ができることで、発生率は500~600人に1人と少ない率ではありません。手術で治すことができますが、それには歳月を要するケースもあります。顔に出るものでもあり、診断を受けたご家族はとても心配されるのではと思います。

この日のセミナーは、赤ちゃんに口唇口蓋裂があるとわかった5組のご夫婦が参加しました。
講師を務めたのは、千葉県こども病院形成外科の医師とリハビリテーション科の言語聴覚士、名古屋大学形成外科の医師、そして口唇口蓋裂の赤ちゃん向けの哺乳瓶を製造販売するメーカーの担当者でした。治療にはこうした専門職のほかに耳鼻科医、歯科医などもかかわるということで、本当にたくさんの領域にまたがる疾患だということがわかります。

形成外科医の森田皓貴先生が、どんな年齢で、どんな手術や検診を受けるかを解説しています。
形成外科医の石垣達也先生。治療は形成外科だけではなく耳鼻科や言語の専門家の力も必要で、多職種のチームプレーになることを説明。
言葉の訓練とは何をするのか説明する言語聴覚士の黒谷まゆみさん。子どもの訓練ができる言語聴覚士さんはまだ少ないそうです。
ピジョン株式会社の岸千尋さんは、口唇口蓋裂があってもうまく授乳できる方法を説明。母乳には、口唇口蓋裂があるとかかりやすい中耳炎を予防する効果があることも伝えられました。哺乳瓶は、母乳を直接飲めないケースで使われます。
同社のこの日に関するプレスリリースはこちらから

人に会えるってすばらしい

レクチャーのあとは、口唇口蓋裂がある赤ちゃんの頭部を模した模型を使って、専用の哺乳瓶や器具を試してみる実習時間になりました。

口唇口蓋裂用の乳首は通常より長く、上顎にあたるところが厚くなっています。


実習時間は、口唇口蓋裂の赤ちゃんを知り抜いている専門家たちと、たっぷりフリートークができる時間でもあります。医師たちは白衣ではなく、私服で参加していて、とてもフレンドリーな雰囲気でした。

口唇口蓋裂という言葉を聞かされた時、ご家族は、おそらくたくさん検索をして、この日までにすでに相当な知識をお持ちだったことでしょう。でも、今日ここに来て、これからわが子を、家族を応援してもらう職種と対面で出会い、親しく話をすることができた経験は、単なる知識や情報とはまったく違うものだったと思います。

ちなみに頭部の模型は、日本で作られているわけではなく、台湾で同様のプロジェクトを実践している医師から贈られたものだそうです。私も以前オンラインイベントにお迎えしたことがある先生です。
口唇口蓋裂にはさまざまな種類があるので、模型も口の中をよく見るといろいろでした。セミナーでは参加者それぞれの赤ちゃんに合ったものが準備されていました。

妊娠中にわかった人は、選択肢が広がる

口唇口蓋裂は、手術の方式や時期が病院によって少し違い、親が悩む場面もあるようです。でも妊娠中から複数の選択肢について聞いておくと、時間をかけて吟味することができるでしょう。

授乳にしても、生まれたら待ったなしで直面しますが、口唇口蓋裂がある子の授乳に詳しい助産師さんが産院にいるとは限りません。本当は母乳で育てられたのに、人工乳をすすめられてしまうかもしれません。

林先生と記念撮影。真ん中の額は、模型を贈ってくれた台湾のチャン先生からのメッセージで、このサポートの国を超えた広がりを感じます。

林先生は「妊娠中にわかって、ちゃんと学べた人は選択肢が広がる」と言います。

妊娠中に、赤ちゃんの病気を知りたいかどうかは、人によって違います。でも、知りたい人や、何かの理由で知ることになってしまった人は、日本にも、実はたくさんいます。

口唇口蓋裂も、確かに手術は出産してからですが、それまで夫婦ふたりぼっちで知らない病気のことを考えるとしたら、あまりにも大変な妊娠生活です。

その人たちが放置されないために、このセミナーは、今後も不定期に開催されるとのことです。

FMF胎児クリニックは47階。窓の外には広い空と海が広がり、ここは未来を思い描くにはぴったりの場所。


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