見出し画像

カンヌライオンズ2026の予習。ONE SHOW、D&ADの受賞作から傾向を先取り(前編)

世界最大級のクリエイティブ祭典カンヌライオンズ。2026年の開催(6月22日~26日)を前に、“今年きそう”と個人的に思うエントリー候補をご紹介します。

※セレクトのベースは、“カンヌ前哨戦”とされることが多い「ONE SHOW」(アメリカ)「D&AD」(イギリス)のメイン受賞作から。最近少し傾向変わってきて、以前ほどダイレクトに反映されませんが参考にはなります。

※選び始めるとキリがなく、多すぎても消化できないーーというわけで、ここでは超厳選して15 WORKS程度にしぼって前・後編に分けてお届けします。個人的な好みや関心も若干反映されてます。

※文末に告知有り。私のキャリアの節目となる来年のカンヌ取材歴20年を前に、例年の受賞速報を実況オンライン配信化します。無料説明会も開催(6月8日18:00~)します。ご興味ある方はお目通しください。

フィルム系部門

Anthropic:A Time And A Place


「AIに広告がやって来つつある。Claudeには来ません」。CM祭典でもあるスーパーボウル2026で放たれたメッセージ(60秒×4シリーズ)。

名指しはしないものの、競合他社に対して「裏切り」(BETRAYAL)「違反」(VIOLATION)「背信」(TREACHERY)「欺瞞」(DECEPTION)と挑発する。

AI役を演じてる人たちの芝居が“ぽくて”いいですね(瞬きもしない)。カンヌではどう評価されるか? 監督はJeff Low。去年、Telstra・Better Networkのシリーズでフィルムクラフト部門GPほか受賞しています。

日本語字幕入りをアップしてくれてる人がいたのでリンクはそちらを。

フィルム&AI系部門

Google : ANCESTRA

人とAIが共創した短編映画(約8分)。昨年のトライベッカ映画祭でプレミア公開された。今年から新導入される「AIクラフト」(サブカテゴリー)の文脈で高く評価されるのでは?

あらすじ→出産を控えたある女性。生まれてくる子供の心臓に穴があることが判明する。緊急分娩のさなか彼女は自身の体内をイメージし、太古にいたる生命(祖先)の記憶をたどり、やがて宇宙的なパワーと同期、我が子の命を救う。

撮影が困難な体内シーンや新生児の描写などにAIを活用(Veo)。ほかGeminiはじめGoogle DeepMindによる様々な技術を用いているという。

フィルム&屋外広告系部門

The Ordinary:The Periodic Fable

スキンケアブランド「The Ordinary」によるキャンペーン(フィルムと屋外広告など)。元素周期表(Periodic Table)を想起させる図像をキービジュアルに用いている。しかし、その“周期表”には「毛穴レス」(Po)「シワ改善」(W)「永遠の若さ」(Y)といった美容産業のパワーワードが記されている。

映像ではその周期表(疑似科学)を無自覚に信奉し、美容神話のワードを呪文のように唱えながら、氷ローラーなど科学的根拠の希薄なセルフケアに耽る学生たちの姿が描かれる。

「The Truth Should Be Ordinary(真実は当たり前のものであるべき(※Ordinaryは「一般的な」とブランド名のWミーニング→真実を知っているのはThe Ordinaryだけ)」のブランドメッセージを伝えている。タイトルの“Fable”は寓話の意。

PR、インフルエンサー、ブランド体験系部門

(&サブカテゴリー:ユーモア)

Columbia Sportswear:Expedition Impossible

コロンビアのスポーツウェアは「極限の状況にも耐えられる」を謳う。その極限を「地球の最果て」と解釈し、地球平面論者(フラットアーサー)の界隈に、CEOみずからが挑戦状を叩きつけた。

「地球の端まで行ってその写真を送ってくれたら、うちの会社丸ごと進呈します」

上記3施策同様、ONE SHOW、D&ADで大量受賞。新聞からOOH、SNSまで比較的低予算で使い倒したところも評価のポイントらしい。カンヌでは、PR部門、ブランドエクスぺリンスアクティベーション部門、ソーシャルクリエイター部門などで?


フィルムクラフト系部門

HORNBACH:No Project Without Drama

こちらはドイツのホームセンターチェーン「HORNBACH(ホーンバック)」のキャンペーン。水漏れの修理から浴室の改修にいたるプロセスを壮大な“オペラ”として描き、何かと手間暇かかるDIYの苦しみと歓びを表現しています。

映像制作も手作り(リアルセットとライブパフォーマンス)にこだわってる。こうしたアンチAI的な(アナログな)アプローチで脚光を浴びるエントリーも増えそうです。HORNBACHは一昨年、「The Square Meter」というキャンペーンでフィルムクラフトのGPを受賞しています。

エンタテインメント部門系①

Rosalía - Berghain

ここからはエンタテインメント系の部門(音楽・ゲーム・スポーツ)で評価されそうな事例をいくつか。最初はミュージックビデオです。

こちらはフラメンコにルーツを持つスペインのアーティスト、Rosalíaのミュージックビデオ。監督のNicolás Méndezは、この前に紹介したHORNBACH「No Project Without Drama」を演出したLope Serranoと同じ、クリエイティブスタジオ「CANADA」の所属ディレクターであり、ともに共同設立者。


Instacart : For Papa!

食品の即日配達サービス「Instacart(インスタカート)」によるスーパーボウルオンエアCM(長尺版もあり)。同社のアプリに新導入されるPreference Pickerをアピール。インスタカート一の売れ筋商品であるバナナのサイズや熟れ具合などを細かく指定して注文できる機能です。

80年代風ディスコ・ポップデュオを演じるのは、俳優のベン・スティーラーと歌手のベンソン・ブーン。よく熟れたベテランとフレッシュな若手ということですかね?

監督はスパイク・ジョーンズ。1980年代のビンテージカメラで撮影、画面比率もアナログ放送時代の「4:3」となっています。

Cerveza Victoria ― A TI, ¿QUIÉN TE ESPERA?

現状、そこまで目立った受賞実績ではないのですが、アニメーションもの、ということと南米のワークもひとつということで。あと、カンヌで近年重視されるカルチャーコンテクスト(文化的文脈)という視点で見ても興味深い。老舗であるこのビールブランドが地域の中で、どんな存在なのか? が言わずと伝わってきます。

アニメ自体は、メキシコの伝統行事「死者の日」をモチーフにしているそうです。4分半の短編アニメ、すべて手描きとのこと。タイトルは「あなたの帰りを待っている人はだれですか?」という意味。アステカ神話の冥界「Mictlán(ミクトラン)」の世界観をもとに、死後も続く人間とペットの絆を描いている。


今日はこんなところで。次回はデザイン・プロダクト系、ビジネストランスフォーメーション系、ゲーム系、GOOD or SDGs系部門などを中心に、あと7事例ほど。

【お知らせ】

やります! Cannes Lions 2026 現地からオンライン実況レポート

カンヌの“リアルタイム”をオンライン実況でシェアする試みです。どんな内容になるのか? 無料説明会(オンライン)も開催しますのでよかったら↓

説明会:6月8日(月)18:00~18:30(zoom。カメラオフ、聞くだけ参加で構いません)


いいなと思ったら応援しよう!