日台児童の交流に見えた「言葉ではない文化の壁」
SYD桧原湖キャンプ参加報告
私たちの日本語教室では、毎年夏と冬の長期休暇に「キャンプ」と称して、日本人の先生と台湾の子どもたちが3泊4日あるいは4泊5日の旅に出ます。日本語学習や観光、日本文化の体験授業など、教室とは違う環境で学べる機会として人気のプログラムです。
これまで台湾では台南・台中・宜蘭・新竹・澎湖で実施し、来年2月には高雄でも開催予定です。日本では岩手・青森・福島を訪れ、来年も東北キャンプを企画しています。
初めて「日本人の子どもたちと一緒に」参加したキャンプ
今年の夏、私たちは初めて日本の子どもたちと合同で参加するキャンプに挑戦しました。
SYD(修養団)福島・桧原湖キャンプに、特別枠として台湾の子ども5名とキャンプリーダー(大学生ボランティア)2名が参加したのです。
しかしそのキャンプが終わってからの報告の中には、想像していなかった「文化の違いによる摩擦」、そして「言葉ではない壁」の存在がありました。
いったい、その「壁」とは何だったのでしょうか。
SYD-100年以上続く日本の社会教育団体
修養団(SYD)は1906年創立。青少年の健全育成を目的に、社会教育やボランティア研修を行う団体です。
夏・冬のキャンプは100名規模で行われることもあり、スタッフの中には子どもの頃に参加し、そのまま大人になっても関わり続けている人も多いいようです。
キャンプの引率は、SYDのスタッフに加えて、高校生・大学生のキャンプリーダーが中心となって行います。キャンプリーダーは、SYDの事前研修を受けたボランティアです。
今回は中国語が話せる人材が必要とのことで、留学を終えて帰国した当校のインターン生である、ななみ先生とももこ先生に参加してもらいました。
なお、台湾からの参加は、当校が初めてとなりました。
台湾の子どもたち5名と「キャンプ前日の温泉」
参加したのは、ひさと君・らくと君・あきなちゃん・りんちゃん・アンジェリーナちゃんの5名。キャンプ参加日の前日に桃園から仙台に到着し、飯坂温泉の民宿に泊まりました。全員で露天風呂に入り、リラックスした気持ちで翌日を迎えた……はずでした。
キャンプ当日、すでに「違い」は始まっていた
キャンプ会場に着いてすぐ、らくと君が私のそばに来て、小さな声で、
「こうじ先生……今朝の温泉宿に帰りたい」
と言いました。
楽しみよりも不安のほうが勝っていたようです。
アンジェリーナちゃんも、中国語でキャンプリーダーに質問攻め。普段からよく話すタイプですが、慣れない環境への緊張が見えていました。
一方で、ひさと君・あきなちゃん・りんちゃんは日本の子どもたちとすぐに遊び始め、自然に溶け込んでいました。
同じ台湾の子どもでも、反応はまったく違いました。
3日後、空気が変わっていた
キャンプ最終日、迎えに行くとスタッフの表情が初日と違いました。
疲れのせいもありますが、どうやらそれだけではない様子。
初日は台湾の子どもたち5名がバラバラのテントに割り振られていましたが、最終日には「チーム台湾」として1つのテントにまとまっていました。
その背景には――
● 言葉が通じない孤独(アンジェリーナちゃん)
英語も日本語も十分でないアンジェリーナちゃんのテントには、中国語が話せるリーダーがいませんでした。
他の子と意思疎通ができず、夜遅くまで泣いてしまったそうです。
● ルールや規律になじめない(らくと君)
集合・整列・役割分担……日本のキャンプでは当たり前の行動が、らくと君には理解しづらかったようです。日本人の子どもとケンカになったとも報告を受けました。
台湾と日本「日常の当たり前」の違いが、壁を生んでいた
この2名は、ともに私たちの台湾キャンプに過去2回参加しています。
私たちのキャンプでも「時間厳守・挨拶・整理整頓・協調性」を掲げていますが、SYDのキャンプでは、これらがより重視されていたことがうかがえます。
今回のキャンプを振り返り、以下の課題が明確になりました。
●台湾の子どもたちに多い傾向
・時間におおらかで集合時間を守れない
・ 挨拶を忘れてしまう
・大人が身の回りの世話をする文化のため、靴をそろえる・布団を畳む・片付けなどの後始末に慣れていない
・集団行動中でも「疲れた」「あれ食べたい」など個人の要望を主張しがち
● 日本の子どもたちの特長
・ 何も言われなくても整列したら静かになる
・「楽しむ時間」「聞く時間」の切り替えが早い
・役割やルールを自然に理解して動く
こうした「日常の小さな習慣」の差が積み重なり、
「言葉ではない文化の壁」として、子どもたちやスタッフの前に立ちはだかったのだと思います。
● 壁をどう越えるか――これからの課題
今回の経験から、私は強く感じました。
「事前準備」と「現場でのコミュニケーション」が、今まで以上に重要になると。
・子どもへの事前指導
・日本側スタッフやキャンプに参加する先生との情報共有
・文化差を踏まえた生徒へのコミニケーション
国際交流は楽しいだけでなく、
ときにこうした“違い”と向き合う学びの場にもなります。
ですが、その壁を乗り越えた先にある成長は大きく、
だからこそ私たちは来年も日本と台湾の子どもたちが出会える場をつくり続けたいと思っています。
名前:こうじ先生
国籍:日本
出身:東京
中国語レベル:初級者
在籍期間:2020年5月〜現在
担当業務:川崎太太日文倶楽部こども授業責任者
