親ガチャと精神医学:親の収入が低いと子はメンタルを病みやすい?~海外文献の紹介~
皆様、こんにちは!
鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
「親ガチャ」という言葉をよく聞きますが、その意味をご存知でしょうか?
親ガチャ(おやガチャ)とは、生まれながらの容姿や能力、家庭環境によって人生が大きく左右されるという考えに基づき、「生まれてくる子どもは親を選べない」ということを、スマホゲームのガチャに例えて表現した言葉だそうです。
要するに子どもがどの親の元に生まれるかは、ガチャのように運次第であり、従って人生の勝ち負けも生まれながら既に決まっている…、という宿命論(運命論)的意味を含むようです。
確かに人が成功するためには環境も大切ですが、貧困に生まれ育ちながらも豊臣秀吉や松下幸之助のように成功した偉人は歴史上数多く存在します。
それに「親はなくとも子は育つ」という慣用句があるように、子供が育つ過程において親の影響はそれほど重要ではない…、という考えも昔からあります。
「親ガチャなんて言葉は、うまくいっていないルサンチマンの言い訳だろう... …」
... …と、ドライな意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は精神疾患に関しては「親ガチャ」が単なるルサンチマンとは言い切れないようです。
今回紹介する文献は、「親の収入と子供の精神疾患の有病率に相関がある」という、非常にシビアな内容が示されています。
この論文を通して、皆様が「「親ガチャ」について理解を深める一助となれば幸いです。
↓最近のガチャガチャは精巧ですね!(本物みたい)
【研究紹介】
Parental income and mental disorders in children and adolescents: prospective register-based study. Kinge JM et al., Int J Epidemiology, 2021
<目的>
親の収入(所得)と小児精神障害の関連性を明らかにする。
<方法>
対象:ノルウェーにおける5~17歳の全児童(2008年から2016年のデータを解析)。ただし、所得が非常に低い(最低2%のグループ)、あるいはマイナスの親は、未登録の収入源から所得を得ているか、他の手段で費用をまかなっている可能性があるため研究対象から除外した。移民の子供に関しても対象から除外した。
データ:ノルウェー国家登録簿から取得した。これらのデータは親の収入と教育レベル、一次医療と専門医療における精神障害の診断に関する情報を含む。診断のための面接と医療利用に関するデータは税務記録から所得とリンクさせ、健康と生活状況に関する調査(SHLC)から得た。
解析:親の収入(所得)は両親の税引き後の所得の合計とし、ノルウェーの消費者物価指数を用いてインフレ調整を行なった。親の所得は1から100までのパーセンタイルにランク付けされた(一部の分析では、比較を容易にするため、所得レベルを四分位または十分位にグループ分けした)。
診断: 精神障害の診断は、Norwegian Control and Distribution of Health Reimbursement(KUHR)データベースおよびNational Patient Registry(NPR)のプライマリ・ヘルスケア、入院、専門外来の診療報酬データから得た。
統計:親の所得と子どもの精神障害の有病率との関連性を検討するため、精神障害の年間観察データと親の所得順位とのプールデータに基づき、親の所得パーセンタイルごとに子どもの精神障害のプール有病率[95%信頼区間(CI)]を算出した。親の所得を連続変数とするロジスティック回帰により、精神障害の各カテゴリー(2分法)のオッズ比(OR)を推定した。
<結果>
2008年から2016年までの5~17歳の子ども(移民・国際養子を除外した)969,206人を対象とした。
親の所得が高いほど、男女とも摂食障害をのぞくすべての精神障害の有病率が低かった(図1)。

注意欠陥多動性障害(ADHD)は、男児では親の所得による精神障害の絶対的な差の最大の要因であったが、女児では不安と抑うつが主な要因であった(図2AおよびB)。
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