宝塚歌劇を観劇してきた件
確かXのフォロワーが流してきたのを偶然見かけたのは半年くらい前の話であった。
「へー、月下の夜想曲宝塚でやるんだ」
悪魔城ドラキュラX・月下の夜想曲。
28年くらい前のPSゲームの超名作で、私はこのゲームを物凄く愛している。PS・SS・PSP・スマホと出る度に買っては悪魔城入り口地下でサハギンを狩りまくってレベル10まで上げながらジルコンを集めまくるという基本に忠実なプレイをしてから進めるタイプの人間だ。
私が中学生当時、「ゲームは暴力的な子供を育てる!」とバイオハザードバッシングに勤しんでいたマスメディアの記事をまんまと真に受けた両親に隠れてこっそりダークメタモルフォーゼを掛けてサハギンを狩りまくってからデス様のところに向かって回転率の低いショートソードを投げ捨て素手でベリガンとギャイボンをボコしていた人間であるとも言える。
その時は「まあ小島文美の絵柄って物凄く耽美な感じだし宝塚にすると合うよなー」くらいに思っていた。
この時点での私の認識:宝塚=羽。
あと男役と娘役の人がいてファンのお姉様方がすごい。色々な意味ですごい。



※私の手元にあるPS版は初回盤なのでミニサントラとアートワークスが同梱されている
そして数ヶ月後に妹(同様に月下の夜想曲はプレイ済み)が同じ情報を見つけてきており、先出しの予告動画を見せてきたのだ。
ゲーム内のある重要イベントを再現したシーンだったのだが……
「!?!?!?!?」
「これ見なきゃ絶対ダメなやつだ!!!!」
そこにはゲームから抜き出してきたかのような息遣いを感じる演者たちがまさしく「悪魔城ドラキュラ」の世界を再現していたのだ。
そして宝塚に関して知識のある友人を頼りに人生初宝塚歌劇の観劇へと挑むこととなる。
ダービーよりキツいです
まず兎にも角にもチケットを確保しなければならない。私は趣味の競馬観戦において、関東圏のGⅠレースは平日に行われることの多いホープフルステークスと倍率が悪魔的になる有馬記念以外は恐らく一通り現地で見ている。
なんなら天皇賞・春と菊花賞と宝塚記念は遠征してまで見ている。
GⅠレースの抽選は物凄く倍率が高いのだが、まあいつも抽選に漏れてもキャンセル席を買ったりなんだかんだで結構見たいレースは見られている。
チケットぴあの先行抽選を応募して外れたら一般販売に手を出して、それでもダメならキャンセル待ちステークスに参加すればなんとかなるでしょ、こちとらジャパンカップもダービーも現地勢ですぞガハハハ
……と思っていた時期もありました。
当然の如く先行抽選は外れ、続く一般販売もサーバーにアクセス出来るようになった頃には……
「ぜ、全席完売しとる……」
勿論そんな状態なのでキャンセル席も1日10回くらい確認しても全く取れない。
友人曰く「観劇チケットはGⅠレースの指定席より遥かに倍率が高いよ」
その身を持って思い知らされたのであるっ
だって、奇跡は一生懸命の報酬
そんな中今や日課と化したキャンセル席ポチポチをやっていたところ……

なんかとれた。ただし立ち見席。
立ち見って体力的にどうなんだろ、と暫し躊躇しながら友人に聞いてみると
「むしろ立ち見の方がいいまである」との事。
冷静に考えてみれば幕間までせいぜい2時間弱くらい立つ程度なら実は競馬で慣れっこである。GⅠレースの中でも大規模なものは観客を入れるために7R目くらいから椅子・敷物の撤去と立ち見が強制される事もあり、よくよく考えてみれば耳元で差せ!残せ!変なの来い!と騒ぐおっさんもいないし隣席とのスペースもあるのだからどうにかなるだろう。たぶん。
残念ながら一席しか取れなかったので妹を連れて行く事が叶わずおっさん一人で東京宝塚劇場に殴り込みである。
こ、こわい……お行儀よくしなかったら周囲のお姉様方に取り囲まれてボコボコにされるんじゃないだろうか。ふ、服も礼装着ていかないとダメ?ねえ!?と色々不安がっていたくらいである。そんな折、偶然にもいい機会があった。
見なよ……他の観客を
たまたま前週に中古カメラ市の開催を控えた松屋銀座に妹が「メダリスト展」を観に行きたい、とのことで一緒に向かったのだが



なんと松屋銀座から宝塚劇場は徒歩で10分前後。さらには妹が向かいのキャトルレーヴ(宝塚グッズ販売店)の入っているビル(日比谷シャンテ)も覗きたいとのことでついでに偵察が出来たわけだ。


そして客層を観察していると……
あっ結構おっさんいる。
あと意外と普通の格好をしている
(だからラフでもいいと言ったろうがby友人)
こ、これならちゃんと小綺麗な格好していけばドレスコード的には生命の危険は直ちになさそうである。

事前にグッズも買っておく。観劇バッグと脚本、あとはゲーム内BGMに歌唱を付けたCDが売られていたのでどうせ見たら欲しくなるので購入しておくことに。ただ「失われた彩画」はめちゃくちゃ名曲なのだがこの曲が流れるステージは大体雑魚キャラがウザくアマラリックスナイパーやブラックパンサーの顔を思い出してついつい拳を握りしめてしまう。
そしてブロマイドコーナーで電流が走った。
「り、リヒターが短髪と長髪両方ある!?!?!?」
これ、ゲームをプレイした人だと分かるのだが、この演目の原作となる「月下の夜想曲」は前作「血の輪廻」の続編となり、前作主人公のリヒターがドラキュラ伯爵を倒すシーンからゲームがスタートする。

ところが、キャラクターデザインが血の輪廻から変更されている都合上、あくまで「月下の夜想曲」版のリヒターの顔グラが使われている。
実際は、こう。


なんと、原作ゲームでもキャラデザの都合上オミットされていた過去のリヒターを宝塚歌劇団、わざわざ掘り起こして再現してくれているのだ。
このブロマイドに気づいた瞬間、私は残りの1日をずっと「宝塚すげえハチマキリヒター再現してる」botとして過ごしていた。
斯くして高鳴る期待に……

9000円くらいだして買ったPENTAXの双眼鏡、ボンタンアメに大福2つ。この日をワクワクして待っていたのだ。そして当日。
感激の観劇

そして当日。

チケットを見せてロビーに入ると「失われた彩画」のボーカル入りが流れており、禁書保管庫のキュウ狩りで対父上必殺兵器ヴェルマンウェを求めた血と汗の滲む日々を思い出して拳を握りしめる。

最後方立ち見席からの見え方。手すりもあるので予想ほど疲れなかった。ここから10×25倍の双眼鏡で覗くと一番奥でもキャストさんの顔が視界いっぱいドアップで抜ける。反面視野が広くないので複数の登場人物が踊るようなシーンには向かない。
恐らく5倍前後で広視界型の双眼鏡を用意して使い分けるのが吉……あれ?他の演目見る前提になってない?
肝心のお話なのですが……
や ら れ た 。
宝塚歌劇舐めてた。
ええっと
・開演時のBGMがゲームのスタート/ロード画面のBGM
・ゲーム内に出てきた台詞殆ど全て(蔵書庫のジジイ以外全部)ほぼ完全使用
・サキュバス戦イベントは恐らく一言一句違わずゲームそのまま
・「月下の夜想曲」では影も形もなく、カミーラ化して殺されたのかな?と思っていた(血の輪廻では進め方によってヴァンパイアにされてしまう)リヒターの婚約者・アネットの登板。ハチマキリヒター同様掘り起こしてきた。
・まさかの月下の夜想曲未使用曲(血の輪廻で流れる)「Vampire Killer」「Bloody Tears」の投入。イントロで「!?!?!?!?」ってなった
・使い魔の半妖精を召喚して30秒間放置すると歌い出すオマケ要素「夜曲」をごく普通の顔でボーカル歌唱
・……するのはまだしもアルカードが動いて曲が中断される時の半妖精のリアクション再現(マジです)
・回復アイテム「ピーナッツ」を食べる仕草をするアルカード
ヤベェ……ヤバすぎる……
「悪魔城ドラキュラ月下の夜想曲の細かすぎて伝わらない名シーン」が片っ端から再現されている。
すごい!!と感動したのはまず先述のリヒター役の聖乃あすかさん。凄すぎる。ハチマキリヒターとロン毛リヒターの演じ分けもさることながら、小島文美のゲーム設定画がそのまま肉体を持って動いている。
またドラキュラ伯爵役の輝月ゆうまさん。何が凄いかって原作ゲームではドラキュラ伯爵役はみんなだいすき若本規夫が演じているのだが、その台詞回しを明確に意識して演じている。これ原作に相当触れていないと出来ない。
「原作と違った魅力」という路線で行くならマリア・ラーネッド役の星空美咲さん。ゲーム同様「血の輪廻 FINALSTAGE」から始まるこの演目なのだが、マリアが兵器じゃない
……未プレイ組に分かるよう説明すると、年齢設定が異なりゲームでの冒頭のシーンはマリアはまだ幼い少女(12歳)なのだが、この演目では現在と変わらない大人の外見になっていた。
「???」と思ったが見進めていくうちにどうも年齢設定(原作では17歳)がおそらく23〜25歳くらいに変更されているように思える。引き算的に。
そしてゲームのマリアはシゴデキお姉さん、っという感じのキャラクターなのだが、このマリアは年齢は上がっているんだけどもものっっっっすごく、かわいい。
めちゃくちゃ乙女なところがあるのだ。90年代のアニメのヒロインにこういうのいた。そして好きだった、という感じである。
例えて言うなら「サクラ大戦の世界で真宮寺さくらがマリア・ラーネッドを演じるとおそらくこういうキャラクターになる」という感じだ。(含声優ネタ)
さくらがマリアってややこしいけど。多分アルカードはマリアが演じるだろうし。すみれさん?サキュバスに決まってるだろ。
先程、「ゲームの台詞は殆ど全部出た」と記述したが実は要所要所以外の流れとしてのストーリーはほぼオリジナルのものである。
舞台もトランシルバニアからフランスに変更されているが、これは非常に合点がいくものだった。
と、言うのも元々悪魔城は「人々の欲望や負の感情が高まると復活が早まる」という設定があり、原作月下の夜想曲の舞台は1797年。フランス革命とそれに伴う動乱の真っ只中だ。
フランス革命とその後の混乱に伴う死や負の感情で伯爵が蘇りましたよ、というのは寧ろ理屈に叶っている上に宝塚の得意なフランス革命期にガッツリジョイント。
脚本の人は天才かな?
全体的にゲームのグッドエンドにラジオドラマ(!?)の要素をプラスして恋愛要素を多角的にしてみた、という塩梅なのだが、私はこの演目のエンディングは大好きである。
そりゃ有角幻也この後300年近く人間守るわ、というか。
総評
宝塚すげーな!!
この演目の後のショー(Revueって書いてあったのだがあれはショーやで、と友人に突っ込まれた)も楽しんだのだが、「女性が演じていること」なんかすっかり頭の中からスッとんで、デヴィッド・ボウイみたいな色気あるお兄さんが昭和歌謡オマージュっぽい曲(ダンシングヒーローと恋のダイヤルと誰よりも君を愛すはあったよね?)でカッチョよく踊る!
のを楽しませて貰った。
羽、階級によって大きさ違うんだね。
隣で観覧していたお姉様に声を掛けられ少々話したのだが、
「前に隣で見られていたゲームファンの人が「ハチマキリヒターにやられた」ってずっと言ってたんですがどういうことですか?」
そ れ な ! ! ! !
短い時間で出来るだけキモくならないように「血の輪廻」と「月下の夜想曲」の関係とこの演目は前者の要素も組み込んで行間を埋めるという恐ろしいことをしている、と伝えておいた。早口で。
暁月の円舞曲と蒼月の十字架も宜しく!!!!
kaz
