踏切が上がるまで
仕事帰り、駅前の踏切で足止めされた。
何人もの人が踏切の前で立ち止まっている。
「お母さん、みて!」
隣に居た大きいランドセルの女の子が指を差した。
俺も思わずその先に目を向ける。
「綺麗な夕焼けだね」
母親が答えた。
夕焼けをちゃんと見たのなんて何年ぶりだろうか……。
ふと、気づくと後ろには部活用のジャージを着た中学生が7~8人でジャンケンをしていた。
どうやら明日の当番を決めるらしいが、
流石に人数が多くなかなか決まらない。
ただ、ジャンケンが続くだけなのに大笑いしている。
見ているこちらまで楽しくなりそうだ。
踏切の向こう側では、若いサラリーマンが缶ビールを片手に夕焼けを眺めていた。
不意に視界が遮られる。
青と白の列車が目の前を走り去って行った。
踏切が上がる。
前から大学生くらいのカップルがイチャつきながら歩いてきた。
まったく、
……羨ましい。
直ぐに警報機が鳴る。
慌てて渡る人、諦めて立ち止まる人。
いつもの風景のはずが何故かノスタルジックに感じた。
夕焼けが綺麗なせいか?
いや、違う。
みんなの顔が見えた。
ほんの数分、
スマホのない世界だったから。
