ロックンロールなキス
娘の親友一家が今度日本に旅行に行くという。
旅行の話も兼ねて、その友達の両親を家に招待した。
娘の親友の方は、泊りも含めて頻繁に行き来しているので、よく知っているのだが、彼女の両親とは今まで少し立ち話をした程度。
カジックとモニカ。
初めてのお茶会で、二人はこんな話を披露してくれた。
彼らが昔から好きなバンドが、久しぶりにライブをやるという。
「これは行かなければ」
二人は飛行機に乗って会場へ向かった。
それほど大きなライブではないので、
終演後には出演者も同じバーで飲んでいるような、そんな距離感のイベントだったらしい。
人でごった返すライブ後のバーで、ばったりバンドのギタリストに出くわしたらしい。
「まぁ、あなた、アダムじゃない、キャー、一緒に写真撮って!」
「もちろんだよ」
モニカは携帯をカジックに渡した。
カジックがカメラを構える。
するとファインダーの向こうでモニカとギタリストがいきなりブチュウ。
「おいおい」
カジックは若干慌てた。
ここからは、モニカの話。
そうなのよ。
さぁ、写真を撮るわよ、っていう時になってね。
ギタリストがキスしようとしてくるから、
私も、まぁいいか、ってキスしたら、
何と彼は舌を突っ込んでくるじゃないの。
さすがに、「えぇ、これはどうなの!?」
とも思ったのだけど。でもね。
「えい、ロックンロールよ!」
て、受けちゃったのよね。
でも、この話はこれで終わらなかったのよ。
その後もバーで飲んでいてね。
そこで知り合った人達に、私が例の写真を見せながら自慢していたら、一人が言うのよ。
「え、これギタリストじゃないよ」
何を言ってるのよ。
あごひげもあるし、サングラスもしてるし、帽子だって同じじゃない。
そう言い返したら、「じゃあ、この写真を見て」
と一枚の写真を見せられた。
そこには、本物のギタリストと、私がキスした男が並んで写っていた。
そっくりだった。
「つまり何? 」
「私は、そっくりさんとキスしたってこと?」
「そういうことだね」
しかも、そのそっくりさんはファンの間ではちょっと有名らしい。毎回コンサートに現れては、いろいろな人と写真を撮りながらキスしているのだとか。
見知らぬそっくりさんに熱烈なキスを献上してしまった。
そんな写真を見せながら、
ガハハと笑い飛ばしている二人。
日本旅行の話は少ししかできなかったけれど、
君たちとは仲良くやっていけそうな気がする。
