お題は・手帳『そこに置かれて』#風まかせ文芸部 #風まかせな物語
*お題「手帳」に、参加させて頂きます。
よろしくお願い致します。<(_ _)>~☆
*久々の帰郷
仕事に不満があった訳じゃないが、人間関係に問題が生じて
15年勤めていた会社を辞めた。
次の就職先をすぐに決める気にもならなくて、気まぐれに故郷に
飛んだ。15年ぶり・・・・家庭的な事情で実家には縁がなかったので、
単に生まれ育った郷愁で。
ホテルにしばらく滞在して、記憶に遺る景色に会いたいと思った。
☆☆☆☆
過疎化された街から離れて、記憶を辿って山道を歩いていた。
子供の頃から遊び場にしていた山で、あちこちに農家もあって
中学や高校の夏休みとかにアルバイトをしていたこともある・・・・
見覚えのあった農地の景色は、見る影もなく荒れ果てていた。
お世話になった農家のお爺さんが存命なのかはわからないが
とっくに離農していたのだろう・・・・
高校生の頃に間引きやムロ作りでアルバイトしていた畑に来た。
雑草が生い茂っていてその名残もない。それでも片隅に見覚えのある
小屋が遺されていて、出入りしていた懐かしさで・・・雑草を搔き分けて
向かった。壊れかかった戸が少しだけ開いていた。
無理やりにこじ開けて中に入った。
埃を被って使われないままで放置された農機具や薬品の缶が雑然と・・・
過ぎた時間に漂流していた。
小物が置かれている棚に・・・見覚えのある手帳が置かれていた?!
手に取ると、確かに自分が高校生の頃に使っていたものだった。
どこかに落としたまま忘れていたが、お爺さんが見つけて・・・
持ち主が来るまでと、取っておいてくれたのだろうか?
中をめくると、当時の様々なメモ書きがあった。
文字ごとに・・・小さな記憶が躍った。
絶対に航空自衛隊に入る!
・・・そのメモ書きに目が止まった。
俺がその頃に本気で思っていたいた夢の証・・・だった。
高校の近くには自衛隊の基地があったこともあって、派遣された
航空自衛隊員からの勧誘の説明を教室で訊いたことがあった。
その時に、小さい頃から空が好きで・・・もし夢が叶うなら飛行機を
操縦したいと思っていたので、心が動いて決めたことだった。
だが、実際には裸眼での視力が足りず受験する資格がない事を知り、
断念する流れのままに、その後の空への道を考えなかったのだから
・・・自分の決心した思いも、その程度のものだったのだと思う。
☆☆☆
山を下りる時に、自衛隊の航空機の音が聴こえた・・・・
見上げた空に・・・・
高校生だった頃の夢が、名残を惜しむように
白い一本の軌跡を描いていた・・・・・・
《了》

*このお話はフィクションです。
