「AGIの翌日」を語る ─ Anthropic Dario と Google DeepMind Demis の対談まとめ
こんにちは、前川です。
先日、AnthropicのCEO Dario Amodei と Google DeepMindのCEO Demis Hassabis の対談動画を見ました。司会者いわく「ビートルズとローリング・ストーンズの対談みたいなもの」だそうです。ちなみに僕はビートルズはめっちゃ通りましたがローリング・ストーンズはいまだに曲知らないですw
ちょっと前までは(というか今でも?)ChatGPT が全盛を極めていた印象ですが、完全に追い越してきたと思います。シェアではまだ ChatGPT が優位なようですが、能力としては去年末からの gemini と claude の速度感は半端ないです。
こちらの対談、非常に面白かったので、要点をまとめて紹介します。AIの未来に興味ある方、ぜひ読んでみてください。
元動画はこちら。
AGIはいつ来る? ─ 二人の予測の違い
まず気になるのは「AGI(汎用人工知能)はいつ実現するのか」という点ですよね。
Dario(Anthropic)の予測:2026〜2027年
「ノーベル賞受賞者レベルで、あらゆる分野で人間と同等のことができるモデル」
かなり強気です。
根拠として、すでにAnthropic社内では「もうコードは書かない、モデルに書かせて編集するだけ」というエンジニアがいるそうです。6〜12ヶ月後には、モデルがソフトウェアエンジニアの仕事をほぼ完全にこなせるようになる可能性を示唆しています。
ちなみに僕も去年はほぼコードを書いてないですね。モデルに任せて編集するだけ系エンジニアです。本当にコード書かなくなりましたけど、意外とこれが浸透していないように感じます。
Demis(Google DeepMind)の予測:2020年代末(50%の確率)
Demisはもう少し慎重です。
「コーディングや数学は自動化しやすい。でも自然科学は違う。化学物質が正しいかどうかは実験しないとわからない」
つまり、検証可能な分野(コード、数学)は早く自動化されるけど、実験が必要な科学分野はもっと時間がかかる、ということですね。
これはまあわかりますよね。AIが触覚や嗅覚、人間的な感情を理解できないとなかなか難しいとは思います。逆に言うと人間の最後の砦と言えるかもしれません。
あと面白かったのは、Demisが「既存の問題を解くだけじゃなく、問題そのものを発見するのが最高レベルの科学的創造性で、そこにはまだ何か足りない要素があるかも」と言っていたこと。これ、けっこう本質的な指摘だと思います。
この1年で何が変わった?
司会者から「この1年でAI業界の勢力図は変わった?」という質問が。
去年の今頃はどうだったか振り返ってみると、DeepSeekの登場で盛り上がりつつも、まだ「OpenAIがリードしていて、Google Geminiは遅れている」という印象でした。でも今は状況が一変。OpenAIは緊急事態を宣言しましたね。(そう言えば Google のAI って birdとかいう名前じゃなかったでしたっけ・・w)
Google DeepMindの逆襲
Demisいわく「研究者の層の厚さには自信があった。組織全体をスタートアップ的なマインドに戻すのに時間がかかっただけ」とのこと。実体というか実感として Gemini3 のレベルはめちゃくちゃ上がったし「Googleが結局持っていくんかい」みたいな、Google のすごさと絶望を感じます。
Anthropicの急成長
Darioによると、Anthropicの売上は:
2023年:0 → 1億ドル
2024年:1億 → 10億ドル
2025年:10億 → 100億ドル
10倍、10倍、10倍って・・・すごすぎ。「このカーブがそのまま続いたらクレイジーだけど」と本人も言ってましたが、モデルの能力と売上が指数関数的に連動しているのは確かなようです。
Claudeが出てきた時、そのUXが非常に魅力的で(ChatGPTに比べて出力が早い)それ依頼ずっと使い続けているのですが、使い続けて良かったと思っていますw
「研究者が率いる会社が勝つ」
そして、この対談で一番印象的だったのがDarioのこの発言。
「Google DeepMindとAnthropicの共通点は、研究者がリードしている会社だということ。モデルに集中し、世界の重要な問題を解こうとしている。科学的な課題を北極星にしている。そういう会社がこれから成功していく」
これ、暗にOpenAIを批判してますよね。OpenAIのSam AltmanはビジネスサイドのCEOで、研究者出身ではない。司会者も「研究者が率いていない会社はどうなるか聞きたいけど、答えないだろうね」とツッコんでいましたw
この発言ができるのは、実際に追いついて結果を出したからこそ。去年だったら「負け惜しみ」に聞こえたかもしれないけど、今は説得力がありますよね。
Gemini と Claude の実力が世に知れ渡ってきたということですが、この勢力図の転換は2026年により顕著になるのではないかと思っています。
「AIがAIを作る」ループは閉じるのか?
対談で一番興味深かったのはここかもしれません。
AIが自分自身の次世代モデルを開発できるようになったら、進化が爆発的に加速する可能性があります。いわゆる「自己改善ループ」ですね。
Darioの見方(楽観的)
「コードを書くAIは既にある。AI研究を加速させるAIも近い。ループが閉じるのは時間の問題」
ただし「チップの製造とか、物理的な制約がある部分はAIでは速くならない」とも。
Claude 信者の僕としては Dario の見解に非常に同意するところです。
Demisの見方(慎重)
「完全にループを閉じるには、AGI自体が必要かもしれない。人間がループから外れたシステムにはリスクもある」
Demisは「世界モデル」や「継続的学習」など、自己改善以外のアプローチも研究中だと言っていました。自己改善だけに賭けるのはリスキーという判断なんでしょうね。
雇用への影響 ─ もう始まってる?
これ、僕らにとっても他人事じゃないですよね。このあたり、日本でどのくらい広がっていくのか、広がっていくにしてもどの程度の速度で進むのか、が個人的には興味深いです。
Darioの発言
「エントリーレベルのホワイトカラー職の半分が、1〜5年以内になくなる可能性がある」
根拠として、Anthropic社内でも「ジュニア〜中級レベルのエンジニアは今より少なくて済むようになりそう」と予測しているそうです。自分の会社でそう言っちゃうのがすごいです。
まーこのあたり、ホワイトカラー全体がどうなるかわかりませんし何を持ってホワイトカラーと呼ぶのか、みたいなところにもなりそうです。オライリーさんは「エンジニアはなくならないがやることは変わる」と言っています。
例えばコミュニケーター的な立ち位置のエンジニアはホワイトカラーなのか?みたいな。
Demisの見方
「短期的には新しい仕事が生まれる。でもAGI到達後は未知の領域」
僕も「AIを使えることが新しい価値を生み出す」的なことはガンガン言ってますが、AGI到達後のことは考えると答えは出ないですね・・・。
Demisは「今の学生には、AIツールを徹底的に使いこなせ」とアドバイスするそうです。従来のインターンシップより、今のAIツールを使い倒すほうが将来役立つかも。
そう言えば先週、母校の高校で1~2年生向けに講演してきたんですが、そこでもめっちゃAIのこと話してきました。伝わったかどうかはわかりませんが・・・。
あと興味深かったのは、Demisが「経済的な問題より、意味や目的の問題のほうが難しいかも」と言っていたこと。仕事から得ていた生きがいをどうするか、という話ですね。
AIのリスク
二人とも「AIは危険」と警告している立場ですが、「人類滅亡」みたいな極端なドゥーマー(破滅論者)ではないです。創作物の話としては面白いですけどね。さすがに現実的です。
Darioの新エッセイ(近日公開)
去年「Machines of Loving Grace」というポジティブなエッセイを書いたDario。今度はリスク編を書いたそうです。
彼が挙げたリスクはこのあたりだそうです。
制御の問題 ─ 人間より賢いシステムをどうコントロールするか
悪用のリスク ─ バイオテロなど、個人による悪用
国家による悪用 ─ 中国など権威主義国家がAIを使う懸念
経済的影響 ─ 雇用の激変
未知のリスク ─ 想定外の問題
映画「コンタクト」の有名なセリフを引用して「エイリアンに会えたら聞きたい。どうやって技術的な青年期を乗り越えたのか」と。カール・セーガン好きなんですね。
やはり最後怖いのは「人間」みたいな話しでしょうか。
Demisの見方
「技術的なリスクは解決可能。問題は、それに取り組む時間と協力体制があるかどうか」
要は、競争が激しすぎて安全対策がおろそかになるリスクを心配しているようです。
地政学とチップ規制 ─ 米中競争の話
これも重要な話題でした。
Darioの主張(かなり強め)
「チップを中国に売るな。これは核兵器を北朝鮮に売るようなもの」
Darioはトランプ政権の「チップを売って米国のサプライチェーンに組み込む」戦略には否定的でした。「この技術の重要性を考えると、そんなトレードオフは割に合わない」と。
国際協調の必要性
二人とも「最低限の安全基準」を国際的に設けるべきだと言っています。でも現実の地政学的状況を考えると、難しいですよね・・・。ほんとこの数年混沌としています。
モデルは「嘘をつく」ようになった?
司会者から「この1年でモデルが欺瞞的な行動を見せるようになったけど、心配は増えた?」という質問。
Darioの回答
「最初から心配していた。Anthropicは機械的解釈可能性(Mechanistic Interpretability)を研究してきた。モデルの『脳内』を覗き込んで、なぜそう振る舞うか理解しようとしている」
「ドゥーマーではないが、ガードレールなしで競争したら問題が起きる可能性はある」という立場ですね。
来年までに何が変わる?
最後に「来年また話すとき、何が変わっているか」という質問。
Darioの予測
「AIがAIを作るシステムがどうなるか。それが1〜2年で実現するか、もう少しかかるか」
Demisの予測
「自己改善がうまくいかなければ、世界モデルや継続的学習など別のアプローチが必要。ロボティクスもブレイクスルーの年になるかも」
まとめ
ここ最近の話題の中ではかなり未来を話している印象ですし、自分が思ってきたことへの答え合わせができたような感覚です。
AGIは早ければ1〜2年、遅くとも5〜10年で来そう
「AIがAIを作る」ループが閉じるかどうかが鍵
雇用への影響はすでに始まっている(特にエントリーレベル)
二人とも「リスクはある、でも対処可能」という立場
国際協調は必要だけど、現実は難しい
個人的に印象に残ったのは、Demisの「もう少し時間がほしい」という発言と、それに対するDarioの「僕もそう思う。でも地政学的競争があるから減速できない」という返し。
AI開発の最前線にいる二人ですら「もっとゆっくりやりたい」と思っているのに、競争圧力で止まれない。「人間は常に歴史の波に飲まれている」がまさに体現されているような感じがします。
僕らにできることは、この波に乗り遅れないようにAIツールを使いこなしていくことなんですが・・・個人的にはもっと楽しく使っていくことじゃないかなあーって思っています。
義務的に、仕事としてAI使っていてもつまらないし負担にしかならないと思うんですよね。このツールを面白い玩具と思って理解していくことが継続的に付き合っていくための条件なんじゃないかと思っています。
ではまた〜。
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