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2026年月刊『映画後進県山梨』5月号(新作映画紹介)

小林タリトンです。場末で配信者をやっています。

私は年4〜50本新作映画を見ているので、今年は簡単な感想くらい残していきたいと筆を取りました。誰かの参考になったら幸いです。

オチが大切な作品(ミステリーなど)以外、多少のネタバレはご了承ください。
なお評価につきましては以下の感覚でつけています

5月はこの4本です。
※本記事はAmazonアソシエイトプログラムに参加しています


5月に見たもの

プラダを着た悪魔 ☆4

プラダを着た悪魔2を見るにあたって配信で視聴。
旧作は普段あとがきコーナーで一言感想を言う程度にしているが、今回は続き物ということでこちらに記す。

ファッションに興味がない社会派ライター志望のアンディが、「ここで1年働けばどこでも大成する」と言われるファッション雑誌『ランウェイ』編集長ミランダの秘書に雇ってもらう話。

ミリしらだったので、ダサい(※アン・ハサウェイの時点でそこまでダサくないのだが)アンディが厳しいミランダの元でビシバシ指導してもらって無双できるようになる話かと思ったら、ミランダはほぼ放任で勝手にアンディが優秀になっていく話で意外に思った。
“形から入る”を体現した映画で、男性ディレクターのナイジェルがアンディの衣服を見繕ってから仕事ぶりも、「自身の見られ方」の意識も変わっていく。メキメキと頭角を表していくアンディにワクワクすると共に、普段オシャレを放棄している自分ももう少しオシャレをしようかな?という向上心も刺激される。
ただ私はキャラクター性が一貫している人物が好きなので、愚直真面目なアンディが彼氏に振られた後すぐに次の男と寝たのにはモヤッとしてしまった。その後すぐにその男もミランダの敵とみて捨てていたので、バランスが取れているといえばそうなのだが……。
ともかく『プラダを着た悪魔』という作品は女性人気が高い作品だが、“女性の働き方”を主軸にしつつポップにまとめあげた本作はこの人気も納得だった。
でも男性のナイジェルが一番良いキャラクターをしていた。


プラダを着た悪魔2 ☆3

うーーーーーーん
本当に20年経ったのか?と疑うほど登場人物たちの美貌が変わらない。その点は良かったが、中身においては蛇足の2という印象だった。

1のラストで社会派雑誌へと転職したアンディが失職、苦境の危機に立つ『ランウェイ』にライターとして再度雇われる話。

全体的にこの不景気の世の中を象徴するようなしみったれた話をされたのもそうだが、やはり一番ガッカリしたのはやはりコンプラに配慮し長いものに巻かれ(ついでにやや痴呆も入り?)牙を抜かれた元女傑ミランダの落ちぶれ方だった。20年前と比べデジタル化が進み雑誌業界の苦境を鑑みれば当たり前と言えば当たり前なのだが、その変化を人間らしさと取るか残念と取るかといえば、私はやや後者寄り。「ミランダなら何か名案を持ってるんじゃないの!?」とアンディに共感させる作りなのだろうが、1で感じたエネルギッシュさと反対方向のベクトルのため、求めてるものと違うと感じる人は私意外にもまま居るだろう。
1は女性の働き方という主軸をファッションと絡めることでシナジーを生んでいたと思うが、2のテーマは結局なんだったのかよく分からない。「変化する現代社会への対応」になるのだろうか?ランウェイの縮小と言う問題の解決も、大ヒット記事を飛ばして上層部を認めさせるとかではなく会社を(主人公の繋いだ縁とはいえ)知り合いの資産家に買い取ってもらうという力技。登場人物たちがそれでいいならいいか……といった不完全燃焼な気持ちになってしまった。

なお上映前からアジア人差別だと騒がれていた件に関しては、アジア人差別というか愛無くコテコテステレオアジア人させてるなと思った。(愛あるコテコテアジア人は『ブレット・トレイン』とかそういう作品のアジア人とする)

元々ファッションに興味がなかったアンディと対比させたかったのだろうがついぞ彼女は(多少垢抜けはすれど)(現代中国の美的感覚のベクトルで)美しくなることも無かったし、そもそもそんな彼女を(半ば嫌がらせの目的で)アンディのアシスタントに押し付けるという構図自体は差別的だったと思う。
活躍してたから気にならないと言っている層も居たが、彼女の主な活躍と言えば盗聴という姑息なやり方で、1のアンディとベクトルが違う時点で話にならない。そもそもそれ以降出番もほぼ無く、出てこないから気にならないだけだろうと思う。今回の中国人キャラクターは男性太っちょ秘書・黒人女性秘書と併せて出しただけのノルマというか、ステレオアジア人を出す時点でコンプラポーズでしか無かったと思われる。
少なくとも差別かどうかはさておき、例えルッキズムと言われようと、元々アン・ハサウェイを芋女として起用した『プラダを着た悪魔』に、わざわざ彼女のような俳優を起用した時点でチグハグだと言わざるを得ない。とりあえず私はあまり良い気持ちはしなかった。
インターネットでは思ったよりこの点について肯定的な意見のほうが目についたのだが、否定的になりそうな人は本当にボイコット(不買運動)しているのだろうなと思う。もしくはこれを差別と言うとこいつはルッキズムだと言われそうで避けてるとか。とまで書いて思ったのだが、そもそも日本人の多くは例え日本のブスいじりされるような女性芸人がこの役に起用されていても何も感じない国民性な気もする。。。私がブス扱いセンサーに過敏なだけかも。。。
面白くなかったとまではいかないが、正当な続編というより1が好きな人のファンディスクくらいの立ち位置の作品だった。
ナイジェルは相変わらずいなせで良かった。


名無し ☆1.5

5月時点での今年ワースト映画。

「触れた物が透明になり、触れた生き物が死ぬ右手」を持つ孤児院出身の“山田太郎”が無差別殺人を繰り返す様子と、なぜそこまで落ちてしまったかを描く話。

主演佐藤二朗しか情報を入れず、原作があることを知らずに観賞。86分という時間に収まっていたのでさぞやギュッと魅力が詰まった作品かと思ったら、存外スカスカでシンプルにつまらなかった。私はただの露悪的な作品が嫌いなのだが、まさにそんな感じのグロテスク系お涙頂戴物語。はーあつまらんかったな、と思いながらスタッフロールを眺めている中、ひときわ輝く『脚本 佐藤二朗』『原作 佐藤二朗』。あれを見た瞬間が一番怖かった。

つまりこの作品は原作・脚本・主演が佐藤二朗なのだが、観終わった今となってはそれがもうキツくてしょうがない。番組のインタビューで「この作品でとことん絶望を描きたかった」と言っていたらしいが、まあなんというか「ぼくがかんがえるさいあくのぜつぼう」って感じだった。
強迫性障害を抱える自身を重ねて描いたのだろうが、それが主軸にあるのをひしひしと感じる。おかげで全部の主語が“I”というか、客観的な絶望を描くのではなく「ぼくがどれだけ苦しいか」を描いているよう。の割に幼馴染の花子(一緒に暮らしていた孤児の女)は美人(MEGUMI)に成長するし、それにベロベロにキスされるあたりに邪な欲望を感じる。そしてそれを自分で主演するんだからどうしようもない。
これを書くにあたって原作漫画を3話分だけ読んだのだが、そもそも原作の山田太郎はレンタル彼女となんの変哲もない雑談することができるくらい(&禁止されてる個室デートに連れ込めるくらい)見かけは健常な青年として見えるのだ。

それをあの自閉症的な人物に改変している時点で「こういう気持ち悪い人間、僕が一番上手いでしょう?」「見て見て、こういう演技が僕求められているんでしょう?」とニチャニチャ口に糸が引いたような笑顔でオナニーを見せられてるようにしか思えなくなってしまった。
子役の演技はよかっただけに、つまりは気持ち悪い人間の演技をやれる自身のプロデュースとして山田太郎の子供時代は再生産できているのに、大人時代はそれを放棄して佐藤二朗が自分のやれるフィールドでやっただけなのがとても傲慢だと思う。正直がっかりだ。
一応断っておくが佐藤二朗の過去の演技自体は嫌いではない。福田雄一にやらされているのは最悪だが、『変な家』くらいの佐藤二朗は嫌いじゃないし、『あんのこと』『爆弾』の佐藤二朗は怪演だったと思う。今回も「はーあ、佐藤二朗がまた可哀想な使われ方しとるわ」と思っていたのだ。スタッフロールを見るまでは。自分じゃねえか。

結局、最大のミスは漫画を映画化したことだと思う。
右手で触れたものが消えるという超常的な設定を実写化する時点でリアリティが無いのに、それを裏付ける登場人物たちのバックグラウンドが大味過ぎる。自分と世界とのつながりと言える妻と子供を失って絶望して無差別殺人を行うという根幹のストーリーがあるにも関わらず、「もう限界」といって消える妻はなぜあそこまで太郎に付いてきていたのか、そこから離れるのにどのくらい限界だったかも一切描かれていない。自分を保護した児童養護施設で殺戮を行うも、その動機も不明。当時の扱いに不満があるならわざわざ当時の教員を視認したうえで見逃しているのもよく分からない。太郎を追う刑事(佐々木蔵之介)も、「実は太郎を保護した刑事の子供でした〜」を(意外性もないのに)引っ張りすぎて、太郎の幼年期を知るというアドバンテージを全く活かせていない。警察がとにかくご都合主義的に無能。これらのせいでヒューマンドラマにもサスペンスにもミステリーにもスプラッターにも振り切れてない独りよがりで中途半端な作品になってしまった。

佐藤二朗、あんた本当に脚本向いてないよ。


グランド・イリュージョン/ダイヤモンド・ミッション ☆4

『名無し』のせいでもう一本見る気が無くなっていたけど、自分のケツを蹴り飛ばして見た映画。無理して見て良かった。

手品の技術を応用して怪盗行為を行う集団フォー・ホースメンの続編。新たに加わった3人組と一緒に悪徳企業の巨大ダイヤモンドを狙う話。

『スライ・クーパー』『ルパン三世』に始まり怪盗モノはワクワクするのに、それに手品が掛け合わされたらもうハーモニーっつーんですか?味の調和っつーんですか?例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット!ウッチャンに対するナンちゃん!高森朝雄の原作に対するちばてつやのあしたのジョー!である。
私は今作が続き物(3作目)だと知らずに鑑賞したのだが、特に問題なく鑑賞できたし頭を空っぽにして楽しめる良い映画だったと思う。

フォー・ホースメン再集結、というストーリーのため、今月の私にとってのプラダを着た悪魔というか、既存ファンとしては賛否が分かれただろうなという印象はある。
また個人的に納得いってないのは死亡退場したキャラクターの扱いである。本作のオチは、一連のシナリオを某人物がほぼ全部仕組んでいたことだったわけだが、一人ホースメンの仲間ポジの人物が死んでいるのに誰も言及しないのだ。あまりに何も言わないのでてっきりCパートで実は生きてましたと出てくると思ったのにそれも無し。普通にお仲間は「お前の杜撰な計画のせいでアイツが死んだんだぞ」と怒ってもいいだろうに、正式なホースメンじゃないからいいのか?とそこだけモヤモヤしてしまった。

レビューを見る限り、前作の方がアクションに頼らずトリックが緻密らしい。是非今後遡って見たいと思う。

6月に見る予定の映画

ということで4本の紹介でした。4月に引き続き5月もなんかあんまり見たい!と思う新作もありませんでした。ソングサングブルーは気になったけどスルーしちゃった。

5月に見る予定だったけど間に合わなかったものも含め、6月は以下を見れたらいいなと思います。あくまでも予定というか、私の住む山梨ではまともな映画館が県にたったの2館(!)しか無く、やらない映画がとても多いので大分希望的観測となっています。

(◆山梨で上映確定 ◇不明 △やらない)
◆MICHEL
◆マジカル・シークレット・ツアー
◆NEW GROUP
◇君は映画
◇4月の余白
◇ディッシュアップ

今月の余談は特になし
月1くらいで旧作を見れるようになってきたが、もう少し頻度を増やしたいものだ

これを書いたやつ:小林タリトン

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