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🎸 Guitar名曲てんこもりVol.2 No.7 Fernando Sor ― Andante Largo Op.5 No.5


🎸 Guitar名曲てんこもり

Fernando Sor ― Andante Largo Op.5 No.5

――優雅な曲には、古典の香りがする

ギタリスト・エリカと Fernando Sor の対話


はじめに|名曲てんこもりという「やさしそうで油断できない曲集」

エリカ
このブログは、クラシックギターを学ぶ人なら一度は目にしたことがある、
有名な楽譜集 「Guitar名曲てんこもり」 に収録されている曲を、順番に取り上げていく連載です。

タイトルだけを見ると、
親切で、楽しくて、
「これ一冊あれば安心」という雰囲気がありますよね。

ソル
だが実際は、
なかなか厳しい選曲だ。

エリカ
そうなんです。
初心者が「知ってる曲だ」と安心して開くと、
中級者は途中で立ち止まり、
上級者は黙って姿勢を正す。
そんな曲が、何気なく並んでいる。

ソル
名曲とは、
派手さではなく、品格を試すものだからね。

エリカ
この連載の目的は、
指番号や運指の説明ではありません。
譜面を読む前に、その曲の性格や香りを感じてもらうこと
それだけで、ギターを構えたときの音が変わるからです。


今日の一曲|Andante Largo Op.5 No.5

エリカ
さて、今日の「名曲てんこもり」からの一曲は、
ページを開いた瞬間、空気が静まるこの作品。
Andante Largo Op.5 No.5 です。

ソル
ほう。
ずいぶん落ち着いたところを選んだね。

エリカ
はい。
派手な技巧はありません。
でも、弾き始めると、
なぜか背筋を伸ばしたくなる。

ソル
それは、
この曲が古典の姿勢で書かれているからだ。


Andante Largoという「歩き方」

エリカ
この “Andante Largo” というテンポ表示、
いつも不思議に思うんです。
遅いけど、止まってはいけない。

ソル
Andante は「歩く速さ」。
Largo は「広がり」。
つまりこれは、
ゆったり歩きながら、呼吸を大きく保つ音楽だ。

エリカ
急ぐと品がなくなって、
遅くしすぎると、だらける。

ソル
その通り。
だからこの曲は、
演奏者の内面の速度がそのまま音になる。


優雅さとは何か

エリカ
先生、この曲を弾いていると、
「きれいに弾こう」と思った瞬間に、
逆に野暮になる気がします。

ソル
それは鋭い。
優雅さとは、装飾ではない。

エリカ
え、じゃあ何ですか?

ソル
音と音のあいだに、
無理がないことだ。
姿勢がよく、
呼吸が自然で、
音が必要以上に主張しない。

エリカ
なるほど……。
「何もしないこと」を、
ちゃんとやる音楽ですね。

ソル
古典とは、
引き算の美学だからね。


なぜ誤魔化しがきかないのか

エリカ
この曲、
雑に弾くと一瞬で分かりますよね。

ソル
そうだ。
Andante Largo は、
誤魔化しを拒否する速度で書いてある。

エリカ
速い曲だと、
勢いで押し切れることもありますけど。

ソル
この曲では無理だ。
一音一音が、
「それで本当にいいのか」と問いかけてくる。

エリカ
怖いけど、
気持ちいいです。


古典の香りがする理由

エリカ
この曲、
どこか「クラシックの香り」がします。

ソル
それは、
感情を直接描かないからだ。

エリカ
悲しい、嬉しい、
そういう分かりやすさがない。

ソル
だが、
感情が消えているわけではない
きちんと整えられ、
品よく置かれている。

エリカ
香水みたいですね。
近づかないと分からない。

ソル
古典とは、
近づいた人にだけ語りかける音楽だ。


演奏するときに大切なこと

エリカ
この曲を弾くとき、
一番大切なのは何でしょう。

ソル
自分をよく見せようとしないこと。

エリカ
……耳が痛いです。

ソル
音楽を前に出しなさい。
演奏者は、
丁寧な案内役であればいい。

エリカ
主役は、曲そのもの。

ソル
そうだ。
古典では、
演奏者が前に出すぎた瞬間、
すべてが崩れる。


おわりに|名曲てんこもりの中で、この曲が教えてくれること

エリカ
「Guitar名曲てんこもり」って、
明るい曲も、楽しい曲も、
技巧的な曲もたくさん入っています。
その中に、この Andante Largo がある意味、
だんだん分かってきました。

ソル
これは、
ギターを弾く人が
音楽との距離感を確かめるための曲だ。

エリカ
近づきすぎてもダメ。
離れすぎてもダメ。

ソル
その絶妙な距離を、
音で保てるかどうか。

エリカ
優雅な曲って、
実は一番難しいですね。

ソル
だからこそ、
古典の香りがするのだよ。


次回も 「Guitar名曲てんこもり」収録曲 を、
一曲ずつ、音楽の性格と香りが分かる形で紹介していきます。
譜面の前に、曲のたたずまいを知る。
それが、この連載のテーマです。

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