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最終回:アートの魂って何だろう?      ーAI絵画とゴッホの間にある「重力」という壁 ④ 夜のカフェテラス

第4回 重力がつらいときには、空を見ろーーゴッホ先生は教えてくれた。

重力のアート

唐突だが、重力ポリスから愛をこめて、クイズの出題だ。
Q: 無重力空間で火を灯した時、どんな炎が現れますか?

では答え。丸い(球状の)青い炎。

無重力での炎(右)でどうやってキャンプファイヤー・・

無重力空間では重い、軽いは無い。私も綾瀬はるかも体重計に乗れば同じ0になる。そして、空気が温められても軽くなることはなく、対流が起きない。だから酸素はゆっくり拡散するだけ。炎は丸くなる。

炎がゆらゆらと上に伸びるのは、そこに重力があるからだ。

星もまた、重力のアートである。
重力がちりを集めて星になり、星はその身を削って光を放ち続け、最期には爆発して、またちりに還る。
気が遠くなるような長いサイクルだが、その途方もない時間のどこかに、たまたま私たちが腰を下ろす「夜のカフェテラス」がある。 宇宙の青に飲み込まれないための、ほんのひとときの停車駅だ。

星への旅

ゴッホは星空を眺めるのが特別に好きだった。

「星を眺めると、いつも地図の上の黒い点(町や村)を眺める時のように夢見心地になる。なぜ、天の光り輝く点は、フランスの地図の上の黒い点のように僕らにとって近づきがたいものなのだろう、と自問するんだ。」

「タラスコンやルーアンへ行くのに列車に乗るように、
僕らは星へ行くために『死』を借りるのだ。」
(テオへの手紙638 1888年)

ゴッホは星々を、宇宙を走る列車が停車する駅のように感じていたようだ。
彼は当時の最先端の天文知識をたくさん知っていて、星空を描く時には、秩序に従わせて星を配置した。ただし、彼は彼が感じたように描く。冷たい宇宙の中にあって、重力を持ち、あたたかい光を放っている存在を、彼は親しみをこめて、大きく、輝かしく描いたのではないだろうか。

フィンセント・ファン・ゴッホ<夜のカフェテラス>1888

ゴッホは<夜のカフェテラス>を青と黄色、反対色を対比させて構成している。
青は冷たく無限に広がっていく宇宙(虚無)。
黄色は、重力が生み出した生命のある世界。
小さく頼りない人間の居場所を、アーケードの黄色がシールドになって、守っている。

さらば重力ポリス

それは、予想外の内示だった。告げられた出向先は、とある小さな町の研修所だ。ここに送り込まれる研修生は、いわゆるパワハラ上司。その言動の過剰な重力を軽くする訓練が研修所の仕事になる。この出向は短く言えば、左遷だ。私は震える手で出向先の書かれた紙を握りしめた。なんなんだ、この半沢直樹展開は!
仄聞するところでは、今春にも稼働させるべく、「無重力推進課」の立ち上げが進行しているらしい。無重力とは比喩で、最新のテクノロジーを駆使して、個人にかかるもろもろの圧力や、社会で生じる摩擦を軽くしていくプロジェクトを意味している。今の世論が求めているのは、ストレスのない、つるっとした世界のようだ。
私のような人間は、いつだって、世の中の流れに取り残されるのが相場だ。

だが、重力ポリスの後輩たちには忘れないでほしい。重力を知らないAIの作り出す、重力のないアートが当たり前になり、私たちのものの見え方や感性を塗り替えてしまう日が来るかもしれない。そんな時に、人々に思い出させてほしいのだ。ゴッホが苦闘しながら、生きた証しを一筆、一筆、キャンパスに塗り重ねていったことを。宇宙の虚無に飲み込まれそうになりながらも、人間の居場所を守るために創作したことを。
将来、私たちは宇宙で暮らすようになるかもしれない。それでも、地球の重力を懐かしく思い出した時、私たちには帰る場所が必要なのだ。
I'll be  back !!









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