なりわいの話。一冊目。
「なりわい」という言葉が、好きです。
仕事と書くと事務的だし、天職と書くと少し大げさだし。生業でもいいけれど、どこか古めかしい。なりわい、くらいの温度がちょうどいい。誰かが毎日それをやって、それで生きている。ただそれだけのことに、ずっと興味がありました。
その興味のまま、短編集を書きました。Kindle Unlimitedで読める『最後のライブまで』という一冊です。
これまでの「日本のどこか短編集」では、町そのものを主役にしてきました。今回は少しだけ軸を変えて、誰かの仕事――なりわいそのものを主役にしています。「ある人のなりわい短編集」としての、一冊目です。
収録しているのは、四つの物語。
「最後のライブまで」
七年間鳴かず飛ばずの地下アイドルの話です。生活費を稼ぐために家政婦のアルバイトを掛け持ちしたことで、舞台の上の名前と、名札の下の名前を、同時に生きることになっていきます。
「大黒柱になる予定は、なかった」
父の跡を継いだ女性医師の話。夫が倒れたことで、家計も経営も自分の肩に乗ってくる。継ぐということは、思っていたよりずっと地味で、そして静かな営みでした。
「ともいと」
かけはぎは、見えたら負けなの。――着物の傷を見えなくする「かけはぎ」職人の祖母と、その指先に憧れ続けてきた孫の話。
「今日もパトロール、愛でられ業務につき」
光が丘公園をパトロールする、はたらきもの。
――愛でられることも、立派ななりわいのひとつだと、アタシは思っています――。
ステージの上の仕事も、白衣の仕事も、針を持つ仕事も、驚いて固まる仕事も。
誰かのなりわいというのは、傍から見るよりずっと不格好で、たぶんずっと愛おしい。
そんな四つの話を、一冊にまとめました。
Kindle Unlimitedで読めます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0H73FZ5RQ/
