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【詩のようなもの】  或る村の雪の夜  《3つのお題に空想のひらめきを第43回》



その日は夕刻から

雪が降り始めたそうだ

親類の家に用事があって

出かけていた若い母親が

赤子を抱えながら

家路を急いでいた

日暮れまでに

途中にある渓谷を

渡ろうとしたが

そこに辿り着いたときには

辺りは闇に

包まれていた

長い距離の

暗い山道を引き返すのは

自殺行為だ

雪の降る中

その場に留まっても

凍死する

渓谷を渡るしかないと

母親は意を決したが

母子は

流されてしまった

翌朝

雪化粧となった

川のほとりで

溺死した母親の遺体が

見つかった

さらにその翌日

村人が

川から流されてきた

不思議の箱を

発見した

頑丈な木でできた箱を開けると

中では赤ん坊が

すやすやと

眠っていたそうだ

以来

村では

その年の初雪が降る晩

地蔵の傍に

木の箱を

置くようになった

これが

かさじぞうと雪の夜

という伝承だ

古くから鎮座する

山の神さまと

小さな村だけに伝わっていた

今じゃ

資料館の片隅で埃をかぶった

郷土史ぐらいでしかわからない

ほとんど知る者のいなくなった

言い伝えの一つさ






*こちらに参加させていただきました🙇‍♂️
 お題:
 かさじぞうと雪の夜
 山の神さまと小さな村
 川から流されてきた不思議の箱
 トップのイラスト

元ネタMemo
抱返渓谷
秋田県にある名瀑、回顧の滝(みかえりのたき)を擁する渓谷。ある夜、母親が幼い子供を抱き抱えて渡ったという伝承がある。


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