【詩のようなもの】 ありふれたポスト 《3つのお題に空想のひらめきを第44回》


星くずが降る駅のホームに
夜を集める古いポストか
今では
そんな都市伝説みたいに
言われているんだね
残念ながら実際は
それほど幻想的でも
ミステリアスなものでもない
このポストというのは
よく知られる
赤く目立つものではなく
朽ちかけた木箱のような
ものだった
戦時中
憲兵らが
連絡用に使っていたんだ
配電なんかに
見せかけてね
伝達がある場合
ライトをあてると光る
特殊な塗料を
箱の端に塗っておき
人気のない夜に
回収する
その後で
塗料を拭き取る
終戦時のどさくさで
おそらく
その塗料が
残っていたんだろうね
戦後
ポストのすぐ裏の敷地は
貨物列車専用の駅となり
夜
カクテルライトに照らされ
塗料に気づいた者が
大戦の遺物である
ポストの存在を知った
それから
戦争や事故などで
大切な人を亡くした
誰か
また誰かが
手紙を入れるようになった
家族と聞いた
風鈴の音と夏の記憶
恋い焦がれる人を見ていた
チャイムがなるまでの時間
並んで歩きながら押した
赤い自転車と坂道の約束
ごく普通の
他愛のない
また明日ねといった
いつしか
なくなってしまったが
どこにも届けられない
ポストに集った多くは
親や
子供や
恋人や
友に
もう一度だけ会えるなら
そんな
風鈴の音を掴もうとする
葬列のような
そのような
手紙だっただろう
この私も
含めて
伝説でも
なんでもないさ
色が目立たず
どうしても
届けたい人に
届かないという
それだけの
ごくありふれた
ポストのことだよ
*こちらに参加させていただきました🙇♂️
お題:
星くずが降る駅のホーム
夜を集める古いポスト
もう一度だけ会えるなら
赤い自転車と坂道の約束
チャイムがなるまでの時間
風鈴の音と夏の記憶
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