【ショートショート】そんな副業してんの?と思ったけど反論ができなかったという話
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私が以前訪問のヘルパーをしていたとき、ちょっと先輩で、わりかしポヤ〜っとした感じの壮年男性ヘルパーがいた。
当時勤めていた事業所は、所在地から隣接した市町村も対応エリアとしていたため、移動は基本的に車だった。
築40年以上の、延べ30棟に及ぶ団地に、ほぼ毎日うかがう利用者さん宅があった。
この利用者さんのお宅を、ポヤ〜っとしたTBさんが訪れたある日のこと。別の利用者さん宅にいた私に、事業所から電話がかかってきた。TBさんが団地で事故ったらしく、わりと近い場所にいる私に様子を見に行ってほしい、という内容だった。
支援後、団地に行ってみると、管理組合から許可を得て停めさせてもらっている駐車場にTBさんがおり、彼の車は駐車場を入って一番手前左にあった。バックで入れ、その区画の脇にあった木に後部をぶつけたらしい。右のテールランプが割れ、周辺が凹んでいた。
図にするとこのようになる。

疑問に思ったのは、この駐車場はだいたいいつもガラガラで好きなところに車を停められたはずなのに、なぜTBさんがわざわざ木の傍の区画に駐車しようとしたのかということだった。
私は疑問を口にしてみた。
「木の精霊が守ってくれるから」
というTBさんの返答だった。
…。
よし、いいだろう。
ブラックジャックにも木が守ってくれたというエピソードあったし、団地の一角の木にそういったものが宿るということもあるかも知れない。
「でも、車思いっきりぶつかってますし、木のほうはビクともしてませんよ」
「それは俺の不注意だから」
「えぇ…まぁ、そうですね」
不注意をたしなめるにしても、やること派手じゃないですかね、ここの精霊。ワンポイントアクセにも程がある気がするんですけど。そんなヤンチャすぎる精霊がこの団地を守っているのだろうか。
「ちなみにその精霊見たことあるんですか?」
「うん」
マジか。サラッと言ったわ、この人。
「どんな見た目なんですか?」
「ティンカーベルにそっくり」
「ティンカーベル居んの!? マジで!? この長閑なド郊外の古い団地に!? 言われて見れば東京ディズニーランドと同い年ぐらいの団地だとは思いますけど、こんなとこで副業かなんかやってるんですか、ティンカーベル!? それって、ネバーランド的にOKというか、ディズニー側からちゃんと許可出てるんですか? ていうか居るなら私も会ってみたいんですけど」
「いやー、純粋な心のときじゃないとなかなか見れないよ」
瞬間的に、おいアンタよこの野郎!と思ってしまった。
あなたAV大好き人で、デッキと洗濯機同時に壊れたとき何の迷いもなくデッキの買い替え選んだ方ですよね!?
という喉元を一部出かかった言葉を必死で戻した。
それも純ってことじゃない?という言葉が返ってくると予想したからだ。
私は反論を諦め、事業所に戻った。
釈然としない気持ちで、Part of your worldを聴きながら家に帰った。
それ以降、この先輩のことを心の中でTBと呼ぶようになった。
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