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【ショートショート】 そこはさすがに正直な気持ちを伝えたほうがよいのでは?と思われるシチュエーション 《せりふ三題噺》


海を望む丘の上の公園。幼さと艶やかさを併せ持つ広場の藤棚が見頃だ。
ベンチに待ち合わせをした、中学で同じクラスの藤下マコが腰掛けている。
「藤下さん、お待たせ」
「あっ、荒城くん。ごめんね、急に呼び出して」
「いや、全然。俺も藤棚見に来ようかなって思ってたし」
「うん、綺麗だね」
藤下さんと並んでベンチに座る。
穏やかな陽気。光が波と戯れている。しばし無言で藤棚を見上げるが、内心は思考が駆け巡る。
クラスでもあか抜けてかわいい藤下さんが基本オタク気質な俺に何の用だろう? 告白? えっ、まさか告白!? いや、そんな典型的なドラマみたいなことがあるはず…。
「あ、あのね、荒城くん…」
「え? あ、何?」
「ちょっと聞いてほしいことがあるの」
「う、うん」
「ここだけの話だよ」
エッ!? ウッソ!? ウッソ!? マジで!? マジでキタコレ!?
「うん。わかった」
「私…実はね」
ハイ! ハイ、実は!? 実は何でしょう!? 
そういえば藤の花言葉は【恋に酔う】だ。
えっ!? じゃあ夏になったら白いワンピースとサンダルに日焼け止めを塗った藤下さんと街ブラデートとか!? いや、ちょっと! ねぇ、ちょっと!
んなワンダーな瞬間が俺の人生に訪れます!?
ありがとう藤!! ありがとう世界!!
「私、ジョー・ペシのことが好きなの」

…ん?

「ジョ、ジョー・ペシ…?」
頬を赤くした藤下さんがこくりと頷く。
「ジョー・ペシって、あのホームアローンでマコーレー・カルキン坊やにこてんぱんにされてた背低いほうのおっちゃん泥棒の?」
「…うん」
「グッドフェローズでは相手を素手でボコ殴りにしまくってデ・ニーロも手を焼いていた?」
「そう。私ね、荒々しいけど自分なりの哲学を持っている、危険だけど潔い生き方をしている人が好きなの」
「あ〜…ふ〜ん…そう、なんだ。えっ、それで何で俺に?」
「荒城くんて、見た目わりとゴツいけどわけのわからない哲学っていうか、そういうのもあるじゃない。ほら、この間、1997年NBAプレーオフのイースタン・カンファレンス準決勝ヒートとニックスの対戦で、ニックス3勝1敗で迎えた第5戦ヒートのPJブラウンがニックスのチャーリー・ウォードを投げ飛ばして大乱闘になったとき、NBAではベンチにいる選手が乱闘に加わってはいけないというルールがあるけど、ニックスからは多数の選手が飛び出してきてしまい出場停止処分を喰らって、残る2戦を飛車角落ちみたいな状態で戦わねばならず、結局ヒートが3連勝の大逆転で決勝に駒を進めたというケースがあって、こういうときに選手の力だけでなくチーム全体のインテリジェンスやケミストリーも問われるって、延べ1時間ぐらいに渡って熱っぽく語っていたでしょう?」
「あ…うん」
「私、そのとき思ったの。荒城くんならもしかしたらジョー・ペシに近いのかなって。それでね…」
おずおずとした手つきで藤下さんが横に置いた鞄からガスバーナーを取り出す。
「これで頭を炙ったら、よりジョー・ペシっぽくなるのかな、って。あ、大丈夫。ちゃんと氷も用意してあるから。だから…荒城くんの頭、炙ってみてもいいかな?」

…えぇ〜~~!?
いや、これホームアローンの中でも一二を争うキツイやつやん!! ジョー・ペシ、めっちゃ頭頂部炙られて叫びながら雪にダイブしとったやん!! で、しかも藤下さん持ってるのってマイクロトーチじゃなくて最高2000℃のスパイラル集中炎の火力が自慢のパワートーチガスバーナーのほうやん!! んで、それ持って天使のように微笑んでるやん!!
どうする!? この機を逃せばオタクな俺が藤下さんみたいな女の子とお近づきになるチャンスは二度とないだろう。だがその代償として頭皮が、いや果たして頭皮だけで済むのか!? ていうか、この状況だったら本物のジョー・ペシもドン引きするんじゃないか!?
あぁ、藤がきれいだ。
藤の花言葉は【恋に酔う】そして…。

「…お、お手柔らかにお願いします」


藤の花言葉
優しさ、歓迎、決して離れない、恋に酔う、忠実












*こちらに参加させていただきました🙇‍♂️
 お題
せりふ:ここだけの話だよ
 三題:サンダル、日焼け止め、藤棚

 念のためにですが、ガスバーナーは人に向けない
 ようにしましょう😅



↓久々にこの曲を聞いてジョー・ペシを思い出しま
 した。実はブリーダーズカップというアメリカの
 競馬ビッグレースを制した馬の馬主でもあります
 右がジョー・ペシ



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