【詩のようなもの】 I wanted to see a giant 《3つのお題に空想のひらめきを第53回》


小学生ぐらいまではよく
祖父のラジオを聞いていた
当時のラジオってのは
お伽噺みたいなのも
けっこう流していたからね
虹を盗んだ猫が
そいつで惚れた
天女の羽衣を作って
結局フラれる話や
眠れない三日月が
照らした百年桜と
友情を持つ話とか
大きな都市部でも
まだほうぼうに空き地があった
宿題なんかそっちのけで
友達と遊び
夕暮れの空き地には
紙芝居や大道芸をしてくれる
長身で
クタクタのシャツを着た
兄ちゃんが
よく来ていた
私らは皆
風船を配る巨人なんて
呼んでいたよ
気さくで
にこっと笑った顔が
とても朗らかな人でね
誰かが
なんでいつも
よれよれのシャツ着てるん
と聞いたら
これは死んだ兄のお下がりだ
と言っていた
なんや兄ちゃん弟だったんかい
なんてからかったり
巨人の兄ちゃんにも聞かれたよ
君らは将来
何になりたいんと
小学生の男の子だから
だいたいは
プロ野球選手とかだったが
そのとき
私も聞いたんだ
兄ちゃんは
なんかなりたいとかあるんか
ってね
そしたら巨人は
ふっと空を見上げて
俺は
雨を待つ龍や
と言った
なんのこっちゃ
わからんかったけど
それからしばらくして
その兄ちゃんは
空き地に来なくなった
さらに何ヶ月か経って
ラジオからニュースが
流れたんよ
コンドウリュウジっていう
男が
詐欺容疑で捕まったって
私らと遊んでくれて
目いっぱい笑わせてくれた
兄ちゃんのことやった
なんだか
無性に悲しくて
悔しかったわな
そらそうやろって
子供ながらに
思ったわ
風や嵐の力を借りても
巨人が簡単に
龍なんかには
なれやしない
私は
火を吹く龍を見たいと
思ったことなど
一度もない
そんなんじゃなく
嵐の中を
歯食い縛って
それでも笑いながら
突き進んでく巨人を
見たかったんや
*こちらに参加させていただきました🙇♂️
お題:
風船を配る巨人 虹を盗んだ猫
眠れない三日月 百年桜
天女の羽衣 雨を待つ龍
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