【モキュメンタリー】 leading 144 《3つのお題に空想のひらめきを第31回》
橿原警察署交通捜査課・宮田慎吾警部補
「事故発生は4月10日午後4時47分でした。信号を無視した乗用車が交差点を横断中の少年を跳ね、少年は即死。10歳でした。被害者の氏名は、村山修太君です」
児童養護施設友葉園・小宮山竜治施設長
「村山修太君のご家庭には複雑な事情があり、ネグレクトなどを経験した彼は6歳のころから当施設で過ごしていました。物静かで数学の本をよく読み、成績も非常に優秀でした。
事故の少し前、こんなことを言っていたんです。
『空にしまい忘れたもの、隠しきれなかったもの、こぼれ落ちたものには色とメロディーがあるんだよね。空だって無限じゃないから』と」
宮田警部補
「村山君の遺留品の中に一冊のノートがありました。変哲のないキャンパスノートです。中には数式や記号がたくさん書かれていて、最後のページにこのような記述がありました」
144分の1 魔法が遅れて届く日
神話 思っていたより、やさしい世界
奈良大学数理学科・井上忠道助教授
「村山君の事故のことを聞いたときは大変ショックでした。橿原にとても優秀な数学少年がいるというのは話題になっていて、生前私はあるイベントの際に面識があったので。
村山君のノートを見せてもらいました。これらの断片から想像されるのは、インドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンです。ラマヌジャンは、無限には色がありメロディーがあると言っていたそうです」
1から全ての自然数を無限大まで足していくと
マイナス12分の1になる
井上助教授
「144の手がかりになりそうなのが、ラマヌジャンのこの言葉です。マイナス12分の1は同じものを掛けると144分の1になります。ただこれは、かつての西洋数学界の権威ですらも、当初は理解が難しいものでした。ラマヌジャン本人も説明を求められた際、女神ナマギーリが私の舌に公式を書いてくれた、としか話さなかったのです」
京都神学研究所・柳田一彌センター長
「アガペーとは無限の愛です。キリスト教において、12という数字は神の選び、神の民、完全さ、統治を象徴します。マイナス12分の1を一人の個人が持つ愛と考えると、非常に興味深いですね。
たった一人の神の民とその完全さはマイナス12分の1に過ぎない。しかし、個人では足すことしかできなくとも、自分の愛と掛け合わせられるもう一つのマイナス12分の1があれば、あるいはいれば、出会えれば、それはプラスに転じる。144の周期や間隔が1つずつ良いほうに回り出す生、言うなれば物事を転換させるような魔法が遅れて届く日、を指すかも知れません。
ご存じのとおり、干支は12年。144ヶ月で一回りです。また、日本神話に登場する八咫烏は神武天皇を熊野から橿原まで案内した導きの神ですが、その身長は144cmだったと言われています」
宮田警部補
「私には専門的なことはわかりませんが、警察官としては思っていたよりやさしい世界と書いた村山君の心理が気になります。
実の親から虐待を受け、小学校に上がると同時に施設で暮らすことになった彼が見る空や世界には、どんな色がありどんなメロディーが流れていたのか。自分の人生はマイナスから良い方向に回っていると感じていたのか。神がいるとするなら、きっともうそれは神と村山君本人にしかわからないでしょう。
まだ10歳でした。とても残念です」
旧約聖書 詩篇144 抜粋
主よ、人は何ものなので、あなたはこれをかえりみ、人の子は何ものなので、これを御心に、とめられるのですか。
Memo:
シュリニヴァーサ・ラマヌジャン 1887〜1920
証明なしの直感的な方法でタウ関数など数千の公式を発見し、現代数論の基礎を築く。
ナマギーリ
ヒンドゥー教の富と幸運の女神ラクシュミーの別名とされる。
*こちらに参加させていただきました🙇♂️
お題:
空にしまい忘れたもの
魔法が遅れて届く日
思っていたより、やさしい世界
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