【エッセイ】 或る人の紹介文 《風まかせ文芸部》
八助という非人が江戸時代にいた。
現在の医療刑務所にあたる溜に勤めていた。
ある日八助は、橋で落とし物の財布を見つけた。
中には数百万ほどの大金が入っていた。
落し主が困っているだろうと、八助はそこで半日ほど待った。
現れたのは三越の手代。金は商用のものだった。
八助は断ったが、手代はぜひお礼にと二割の金を手渡した。
八助は仕事仲間らを集め、一晩豪遊した。
皆が寝静まった後、彼は自らの首を吊った。
自分のような身分では、この先結婚も出世も叶わないだろう。今日より良い日は訪れない。思い残すことはない。
といった内容の辞世の句が残されていたという。
三越の主人が手代から財布の顛末を聞き、誠実な八助を雇い入れしようと使いの者を送ったのは、彼が亡くなった翌朝のことだった。
これは実話とされている話。
私はこのエピソードに触れるとき、全てではないにせよ、八助と現代が重なりを持っているように思えるが、それは気のせいだろうか。
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