知性の品格❷地球沸騰化時代の入り口で思う
普段は温厚な後輩が、この暑さで豹変した。
まるで映画「フォーリング・ダウン」のマイケル・ダグラスだ。
イラついていて、隙あらば誰にでも食ってかかる。
彼女でさえ凶暴化するのだから、これから毎年、夏の犯罪件数が増えていくかもしれない。
「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」とアントニオ・グテーレス国連事務総長が発言してから、今月27日で丸3年だ。
わが国では、今年から気象庁が「酷暑日(40℃〜)」なる言葉を正式採用した。
2007年に採用された「猛暑日(35℃〜)」から19年経ってのことだが、温暖化は複合的に加速するらしいので、あと19年と言わず、早めに次の段階(45℃〜)の名称を考えておくべきだろう。
人類の歴史が終わりを迎えるかもしれないというのに、私たちは悠長に「人生100年時代」の老後資金や、子や孫の教育資金に備えている。
そして、親から受け継いだ「当たり前」の生活を、より豊かで快適にすることを目指して、未来世代にツケを回している。
孫の時代には資源が枯渇してしまい、今現在、暑さにあえいでいる野生動物と同じ苦しみを味わうことになるかもしれない、と想像する人は少ない。
温暖化が進むと、地球の熱を分散させる海流が弱まったり止まったりして、夏は猛暑になるばかりか、台風の威力が増し、冬は極寒の世界となる。
もし子供や孫が可愛いというのなら、私たちは、どんな世界を遺そうとしているのかをもっと考えるべきだと思う。
AIは知能に過ぎず、人間は知性だと言う。
地球沸騰化時代への移行を避けられなかった今、その知性はどこへ行ったのだろうか。
遡れば半世紀以上も前のアポロ13号事件に行き着いた。
月へ向かう途中で酸素タンクが爆発し、様々な問題が発生したという。
中でも深刻だったのが、船内空気の二酸化炭素濃度が上昇し続け、地球へ帰還するまで搭乗員3名の命がもたないと予測されたこと。
最終的には、その3名と管制センターが知恵を絞って、船内にあったあり合わせの物でろ過装置を作り、無事に帰還を果たせたのだ。
まさに、土壇場の底力というべき、人間の潜在能力が証明された輝かしい実例だ。
ところが、アポロ13号が宇宙船地球号になり、数日間のカウントダウンが10年先(最初のティッピング・ポイント)、25年先(最悪のシナリオを引き起こす複合ティッピング・ポイント)に引き延ばされると、途端に緊張感が薄れてしまう。
危険にさらされるのが、3名から80億人全員に拡大したというのに!
なぜだろうか。
前述した、人間の悠長かつ利己的行動は、心理学的、社会的に説明がなされている。
しかしながら私は、根本的な原因は、私たちホモ・サピエンスという種が、食物連鎖の頂点に立った後も、弱肉強食の競争原理という古いシステムにしがみついてきたことの弊害だと思う。
人間は、仲間を月に送り、星間空間に到達するような探査機を作る知力を持っている。
にもかかわらず、個人も国家も、血なまぐさい生存競争で培われた原始的本能から抜け出せずにいるのだ。
せっかくの知力を、使うべき所で使えていないのは、とても悲しく残念なことだ。
エゴを越えて自らの力を制御できない未熟な文明は、温暖化のような惑星規模の問題には団結して対処できず、滅びる運命にある可能性が高い。
フェルミのパラドックス。宇宙では、実際に数え切れないほどの生命が進化し、自己制御できずに滅びていったのかもしれない。
人類は、彼らの後を追うのだろうかーー母星の他の種を道連れにして。
知能は、目先の目標を追求する際に、達成に不必要なことは考えない。より大きな枠組みで考えることをしない。競争を支える「効率主義」に反するからだ。
それに対して知性は、大きな枠組みの中で目標を設定する。エゴを克服して先々のことを考え、約束や締め切りをきちんと守る。これらは知性の品格であり、知能には決して真似できないことだと思う。
人間は知性だと言うのなら、そろそろ温暖化という差し迫った問題に対して、土壇場の底力を発揮すべき時だ。
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《編集後記》
このところ忙しくて、今日の公開は無理だと諦めかけてたのですが、昨夜徹夜して仕上げました。
励ましてくださった方々、有難うございました。

