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#36【絶世の美女④長男の宿命】彼女を連れて行きたい‥|HSP×AC|うつ病

HSPの人生


封じ込めたい過去の全てを、
Iさんに話した。


そんなことまで話さなければ、
彼女ですら、
本当の意味では
信用が出来なかった。


これだけ、
人を信用出来ないのは、
HSPだから?
アダルトチルドレンだから?
よくわからない。
 

彼女は僕の過去を、
全て受け入れてくれた。


そして、その日、
僕と彼女は結ばれた。


ただ、最後まで
「付き合って下さい」
と言った覚えはない。


その後の恋愛でも、
言えたことがない。


おそらく自信がないんだろう、
自分自身に。


自己肯定感が低いんだろう、
昔も今も。


HSPの典型的な特徴。



結ばれた日から、
彼女とは、
以前にも増して、
会うようになった。

世間的に見れば、
普通の男女が、
お付き合いを
している状態。


ただし、バイト先の人には
絶対に内緒で。


これには、僕自身の
意向が大きい。


バイト先の人に発覚する、
ということは、
必ず、詮索してくる人がいる、
ということ。


僕はそれを、
軽く受け流せる自信がなかった。


絶世の美女と付き合っている
という喜びより、
バレたらどうしよう
と言う、潜在的な恐れ。


この思いの方が、
圧倒的に大きかった。


ただの大学生のバイトが、
現地の女に手を付けた、
と思われるのも嫌だった。


こんな風に、
いつも人の目を気にしている。
これもHSPの気質。


だから、彼女にも
「くれぐれも内緒で」
と、頼んでいた。


彼女は僕の内面を理解し、
了承してくれた。


しかし、彼女の本当の思いは、
どうだったのだろう?


周囲の目など気にせず、
僕と手を繋ぎ、
街を歩きたかったんじゃ
ないだろうか?


職場の人達にも、堂々と
「付き合ってます!」
って言いたかったんじゃ
ないだろうか?


今となっては、
彼女の思いはわからない。


ただ、僕らは、
人目を憚りながら
会っていたことだけは
間違いない。


だらしない男だ。



自分の内面の恐れから、
彼女の本当の気持ちを
優先出来なかったこと。


今から思えば、
彼女に対して、
あまりに配慮のない
対応をしていたとしか、
思えない。




僕が大学に通うことを
諦めたのは、大学3年の夏。


その、しばらく後から
Iさんと付き合い始め、
本来なら、卒業していたはずの
時期(大学4年の終わり)まで付き合っている。


期間にすれば、およそ1年半。


そのあいだの生活は、
基本的には何も変わっていない。


バイト、麻雀、パチンコ。


変わったと言えば、
時々、彼女と出かけるように
なったことぐらい。


付き合い始めて
1年が経った頃、
本来ならば、大学4年の秋。


同級生の就職活動は、
既に終わっているような時期。


自分自身の、
この先を決める
必要が出てきた。


大学には行っていない。
今後も行く予定はない。
当然、卒業の見込みはない。

つまり、この地に留まる
理由がなくなっていた。


大学に通うために来た土地。
しかし、卒業も出来ないのに、
これ以上、ここに
留まる理由がない。


横には、絶世の美女がいる。
しかし、彼女はこの土地の人。



彼女「この先どうするの?」
僕  「分からない」


本当にわからなかった。


とりあえず、
親には本当のことを
話さなければならない。


卒業の見込みがないことを。

1年以上は、
学校に通っていないことを。

学校にもいかず
単位もロクに
取っていないなんて、
言いたくはない。


それでも言わなければならない。


意を決して、電話をした。


父は、最後まで、
僕の話を黙って聞いていた。
そして、声を荒げる
こともなく言った。

「戻ってこい」


まるで、中退することを、
予想していたような返事だった。


大学は辞める。
気力も失せているので、
致し方ない。


ただし、実家には
帰りたくない。

好きじゃないから。


HSPの僕は、
迷路に迷いこんだ。



大学を辞める以上は、
働く必要がある。
働く場所を決める必要がある。


本音は、彼女と都会へ行き、
そこで、仕事を見つけたかった。


しかし、それを伝えても、
彼女は自らの意思を
ハッキリとは示さなかった。


やはり、彼女はこの土地の人。
この土地を愛している人。


そして、

僕は田舎の長男だった。


この、育つ過程の中で、
潜在的に植え付けられた思いが、
今後も僕の人生を苦しめる。


好きでもない町に実家がある。


僕は、そこの長男であり、
家を継ぐことを、
嘱望されている。


彼女とは、一緒にいたい。
いたいが、
あの田舎町に、
彼女を連れていく気には
なれない。


あの田舎に彼女を連れていく、
と言うことは、
当然、結婚を前提とする。


当時、まだ23歳の僕には、
結婚など、
とうてい考えられない。


実家に戻るとすれば、1人で。
都会へ行くとすれば、2人で。


2択だった。


そして、僕が決めたこと。
それは、あの、好きでもない
田舎へ戻ることだった。

1人で。

 次回へ続く

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