知らなきゃよかった
「なんで世界が違うのに、優しくしてくれたの…」
どうせ叶わないのに、悲しくなるだけなのに。
シンデレラは、手元に残ったガラスの靴を見ては、
「はぁ…」
とため息をつくばかり。
彼女の力ではその世界に再び足を踏み入れることはできません。
「なんで、人生交わってしまったの。」
彼女は毎日目覚めてから夜眠りにつくまでずっとあの夜の舞踏会のことばかり考えていました。
みんながそれぞれの好みに合わせた綺麗なドレスを着て、それはそれは夢のような空間でした。
そんな中でも王子様が自分を選んでくれたこと。
こんな世界があるんだと、教えてくれたこと。
シンデレラには、愛される、という経験がもうここしばらくの間なかったから。
その、心の温かくなる感覚が酷く焼きついてしまったのです。
それはもはや、呪いでした。
あれはとっても素敵な思い出だった、
それで日々を頑張る活力にできればいいのに。
「なんであの世界の人間に私はなれなかったの?」
「なんであの続きはないの?」
「私の人生はどうしてこうだったの…?」
今までは、自分はこんな人生なんだって、受け入れて生きていたのに。
慎ましやかに生きて、ただただ身近な幸せを噛み締めて、生きていればそれでよかったのに。
他の人とさえ比べなきゃ、それでも十分、幸せだと思えていた。
そうじゃない人生を知ってしまってから、彼女は自分の人生を受け入れられなくなっていきました。
物語と違って、現実は王子様が自分を求めてもう一度会いにきてくれたりなんてしないから。
それが酷く耐え切れなかった。
「この人生が一度でも交わってしまったことに何か意味はあったの?私の絶望を、増すためだけの出来事だったんだわ…」
その日から彼女はやはり自分の日常を受け入れられなくなっていきました、
自分の夢だったあの日々が、日常の人もいるのに、自分の人生に意味なんてない、と、思い始めたからです。
日に日に生きる気力も無くなっていきました、
日常に楽しいことなんてないので、ただただ、寝て、夢の世界に逃げる日々。
でも現実は甘くない。
なかなか辛さから解放される日々は訪れません。
そして、現実から逃れる生活をし続け、ついに食事さえも喉を通らなくなったある日、彼女は夢を見ました。
「探したよ、世界が違くても、君との思い出がずっと忘れられなかったんだ。」
「僕にとっては、毎日が舞踏会だけど、あんなに心に残る日はなかったよ。」
「これからもずっと一緒にいて欲しい。」
ー彼女は、夢の世界に閉じ込められることを選びました。
夢の中のが、ずっと楽しくて、優しかったから。
***
あまりに違う世界のことをやみくもに知ってしまうと、人はもう元には戻れなくなってしまう。
なんでこんな、あまりにも違う世界の人間の人生が交わってしまうことがあるのか。
その世界に努力してもどう頑張っても私は行けなかったのか。
そんな輝いてる人もいる中で、自分の人生って意味ってあるの?
日々頑張って生きていても、地面を這いつくばることが精一杯で、外敵に襲われたらただその運命に身を任せるしかない。
青虫みたい。
せっせと一生懸命移動していたところを見ていたら、
無慈悲にも鳥に連れて行かれた時のことが、忘れられない。
人生って何?
青虫は青虫なりに頑張って生きてる、
でも、犠牲になる確率が明らかに高い、それでいて抵抗する術がない、
そういう運命なのか、さがなのか。
犠牲がいて成り立つ、それがこの世の中。
運で決まっているものなのか、前世で何かした代償なのか、ここでの試練の頑張り次第でどこかの世で認めてもらえるのか。
どうでもよかった、そんなの。
自分の人生が、受け入れられなくなる瞬間は何度だってあると思うし、努力不足と言われたらそうなんだけど、
自分なりに生きても、生き方がわからない人だっているわけで
多分どうにもならないことってあるわけで
人徳者が不慮の事故とか病気とかで亡くなることもあるわけで
なんかもう、いいよ。
ぜんぶ…
毎日、頑張って生きても、希望とか期待とか、もうなかった。
ただただ、恐怖しかなかった。
自分のおしまい の ページが 、
