#1 オタク女子の異世界日記〜だからBLはやめられない〜
#1 オタク女子の異世界日記
〘オタク女子の異世界日記〜だからBLはやめられない〙これまでのお話はコチラからどうぞ(*´ω`*)
とある金曜日の夜11時40分。
六畳ワンルームの狭い部屋には、
BL漫画とアニメグッズが所狭しと積み上がっていた。
三十二歳の絶賛独身、坂井めぐみは、
パソコン画面を見ながら絶叫していた。
「いや待って待って!? この受け、ここで泣く!?
神回すぎて草生えるぅー!!」
画面の中で銀髪騎士が黒髪魔術師を抱きしめている。
⋯⋯⋯⋯尊い。
圧倒的に尊い。
「はぁ……やっぱり世界を救うのはBLなんだよなぁ……」
眼鏡を押し上げながら、めぐみはしみじみ呟いた。
彼女はごく普通の会社員、坂井めぐみ。見た目は普通、中身はオタク、(なるべくオタクに見えないよう、一応スタイルは意識している)。彼氏なし。休日はアニメショップ巡りと同人誌探し。会社ではそれなりに仕事をこなし、あまり目立つような事はしない。そんな「普通のオタク女子」それが坂井めぐみという人間だ。
そんな彼女には“推し”がいた。
⋯⋯⋯そう彼女はBL大好き女子なのだ!!
それだけで人生は何とか耐えられていた。
二次元に恋している自分が好きなめぐみであった。
ふと、スマホが震えた。母からのメッセージだった。
『最近どう?そろそろ結婚考えたら?』
「はい無理ゲーで草ぁぁー」
───即答。オタクの恋愛は難しいのだ。
(相手との相性もあるので⋯⋯⋯という事にする)
「三次元恋愛とか、私には荷が重いんだわ……」
そう呟きながら、推しカプのイラストを見つめる。
「はぁ……よくある異世界転生して、イケメン騎士団とか眺めながら暮らしたい……」
その願望が、翌日、
本当に叶うとは思ってもいなかった────
土曜日の朝。
めぐみは秋葉原へ向かっていた。
推しサークルの新刊発売日。寝不足だろうが疲れていようが、このイベントだけは外せない。
スマホを見ながら歩いていたその瞬間だった。
「えっ待って!? 推しカプ合同誌!?」
キキィィィィィッ!!
耳をつんざくブレーキ音。
視界を埋める眩しい光。
「へ?」
次の瞬間、身体が宙を舞った。そして空が見えた。
「うわぁぁぁ!? まさかコレってぇぇぇ!!
異世界転生テンプレきたぁぁぁ!?」
全身を襲う激痛の中で、彼女の意識は途切れた。
────そして。
次に目を開けた時、そこに広がっていたのは、病院の白い天井ではなかった。
「……ん?」
青空だった。
見渡す限りの草原。
風の匂い。鳥の鳴き声。
「え……病院じゃない?痛くも・・・ない?」
ゆっくり身体を起こした瞬間、めぐみは固まった。
「……は?」
胸が揺れた。
「え?」
視線を落とす。
「おぅぅ!? 胸!! ボンッ!!」
腰はかなり細い。脚は長い。髪はサラサラ。
「なんじゃこりゃぁぁぁ!!」
思わず叫んでいた。
「待って!? 私、人生でこんな美ボディだったこと一回もないんだが!? 神のキャラクリ補正エグ!!」
服装も変わっていた。革装備に短剣。まるでゲームの初心者冒険者そのものだ。
「完全に異世界じゃん……」
すると突然、頭の中に機械的な声が響いた。
《レベル1》
《スキル:オタク知識》
《スキル:腐女子の直感》
「───いやスキル名ぇぇ!!」
めぐみは空に向かって叫ぶ。
「神様ぜったい遊んでるだろ!リセットだリセット!」
だがツッコミを入れる暇もなかった。
草むらがガサガサと揺れたかと思うと、
緑色の小鬼が飛び出してきたのだ。
「ギギギィィ!!」
「うわゴブリン!! 本物!? CGじゃない!?」
ゴブリンは棍棒を振り回しながら突進してくる。
「いやいやいや死ぬ死ぬ!!」
だが恐怖の中でも、オタクとして積み上げてきたゲーム知識が頭をよぎった。
「こういう雑魚モンスターって、だいたい動き単純なんよ!!オタクをなめんなぁ〜!」
横へ転がる。
ゴブリンの棍棒が空振りした。
「隙デカい!!私でもやれる!」
気付けば身体が勝手に動いていた。
短剣が閃き、ゴブリンを切り裂く。
「ギャッ!?」
ゴブリンが倒れると同時に再び頭の中に声が響いた。
《レベルアップしました》
「うわぁ!? マジでゲームシステム!?」
《レベル2》
「うっわー⋯⋯⋯⋯。草生えるわ。」
その後も、めぐみは森を進みながらスライムや小型モンスターを倒していった。
レベルが上がるたびに身体能力も上がっていく。陰キャ事務員だった頃には考えられない動きができた。
「うおぉぉ!! 私つよい!!いけるんじゃない?」
調子に乗った直後、森の奥から低い唸り声が響いた。
巨大な狼型モンスターが木をなぎ倒しながら現れる。
「いや待って!? え?え?
チュートリアルで出るサイズじゃない!!」
全長三メートルはある。
「せっかく美少女になったのに
こんな最後で草ァァァーーー!!」
牙から火花が散っていた。
「⋯⋯⋯⋯死んだァァァ!!」
狼が飛びかかった。
───その瞬間だった。
「雷撃魔法《ボルト》!!」
バチィィィン!!
雷が炸裂し、巨大狼が吹き飛ぶ。
煙の向こうから現れたのは、一人の男だった。
───黒髪。
メガネ。
黒いローブ。
どこか疲れた顔をした青年。(イケメン)
「大丈夫か?」
低い声だった。
めぐみは呆然と彼を見つめる。
「……イ⋯⋯⋯イケメン……?」
男は眉をひそめた。
「お前、その反応……日本人だろ」
「えっ」
「あと、“草生える”って言ってたし。」
「バレたァァァ!!」
男は思わず吹き出した。
「やっぱりか。俺も転生者だよ」
「えっ???ほんとに??」
男の名前は相沢悠斗と言った。
二十八歳。元プログラマー。
そして実は彼も重度のオタクだった。
「ラノベとかゲーム好きでさ」
「同志じゃん!!」
「転生した瞬間、“あ、これ異世界系だ”って察した」
「分かるー!!」
二人は一気に意気投合した。
「ちなみに好きなジャンルは?」
「BLです」
「⋯⋯即答!?」
「受けが泣く展開は世界を救う」
「深ぇな……」
悠斗は苦笑した。
めぐみはまったく気付いていなかったが、彼は少しだけ彼女を可愛いと思っていた。楽しそうに語る姿が妙に眩しく見えたのだ。
しかし、当の本人はそんな事には一切気付かない。
めぐみには恋人が居た経験がないからだ。
「この世界、騎士団とかあるかなぁ……。
イケメン同士いっぱい居そう……」
「⋯⋯⋯聞いてる?」
「あ、ごめん。脳内で騎士×魔術師妄想してた」
「通常運転だった・・・ちょっと引くわ」
───その日の夜。
二人は焚き火を囲んでいた。
森の奥から獣の遠吠えが聞こえる。
「異世界って、夜はちゃんと怖いんだよね……」
悠斗がぽつりと呟く。
めぐみはスープをすすりながら火を見つめた。
「でも、なんか生きてる感じする」
「は?」
「現実だと、私ずっと空気だったからさ。でもここだと、ちゃんと主人公っぽい」
悠斗は少しだけ目を細めた。
「……うん。そうかもな。」
────その時だった。
「ほう。おぬしら転生者か」
低い声が響く。
二人が同時に振り向くと⋯⋯⋯⋯
───そこには一匹の黒猫がいた。
月明かりに照らされた黒い毛並み。
金色の瞳。
妙に偉そうな顔。
「なんだ猫か」
「かわいい!モフモフ!」
めぐみが近寄った瞬間、黒猫は口を開いた。
「我が名は九郎」
「うわぁぁ!中二くせぇぇぇ!!」
めぐみの即ツッコミだった。
九郎はピクリと耳を動かす。
「なんだその反応は」
「いや絶対、自分で考えたカッコいい名前じゃん!!」
「違う」
「絶対そう」
悠斗が吹き出す。
「じゃあクロちゃんって呼ぶわ」
「やめろ」
「クロちゃん!」
「やめろと言っている」
「草生えるわぁー!!」
九郎は深いため息をついた。
「貴様、本当に転生者か?」
「生粋のジャパニーズオタク女子です!」
「終わってるな」
「褒め言葉です」
「褒めておらん」
九郎は、そのまま焚き火のそばに座った。
「はぁ、、、嫌だのぅ・・・」
「なんか言った?」
「ゲームマスターからお前らを暫く世話してくれとの指示を受けたんだよ。これには逆らえぬ」
「やっぱコレゲームなんだ・・・」
「しばらく我が同行してやる。感謝するがよい」
「ぷぎぃー!クロちゃんツンデレっぽい!カワユス!」
「仲間加入イベントってやつかコレ」
「あぁーうるさい。もう明日くらいに離脱したい。」
───こうして。
オタク女子・めぐみ。(BL好き)
転生オタク男子・悠斗(こっちもオタク)
そして喋る黒猫・九郎(愛称クロちゃん)
三人の奇妙な異世界旅が始まったのである。
〜第1話おわり〜
需要があれば続きます・・・(´・ω・`)
解説
BL女子のツッコミとかが好きで、主人公にしました。
相手は普通の男子。オタク設定ですけど。
そこにマスコットの黒猫を加えて楽しい旅が描けたらいいなーと思ってストーリー考えました。需要があれば続きを書いて行きたいと思います。良かったらイイネとフォローをお願いします。
皆さまが少しでもハッピーになれますように。
おまけ
めぐみ設定画

